診断書なしで欠勤が続く社員、休職判断の3ステップ

診断書なしで欠勤が続く社員、休職判断の3ステップ 労務管理
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「もう3週間、ちゃんと出社できていない。でも本人から診断書は届いていないし、病院にも行っていないらしい。このまま欠勤扱いにし続けていいのか、それとも休職にすべきなのか——」そう頭を抱えている経営者・人事担当者は少なくありません。診断書がない状態での休職対応は、「何を根拠に動けばいいか」が見えにくく、対応が後手に回りがちです。この記事では、診断書なしで欠勤が続く社員への休職判断を、法的根拠を踏まえながら3つのステップで整理します。

診断書がなくても休職は命じられる

結論から言えば、診断書は休職命令の「唯一の要件」ではありません。就業規則に根拠規定があり、就労困難な状態が客観的に認められれば、診断書がない段階でも会社は一定の対応を取ることができます。

「診断書がないと動けない」は誤解

多くの経営者・人事担当者が「診断書が届くまでは何もできない」と思いがちですが、これは法的には正確ではありません。労働契約法第5条は、使用者に対して労働者の生命・身体・健康を守るための「安全配慮義務」を課しています。つまり、明らかに精神的・身体的な不調のサインがある社員をそのまま働かせ続けることは、診断書の有無にかかわらず、この義務違反につながるリスクがあります。「診断書がないから何もできない」という判断自体が、会社にとってのリスクになりえるのです。

休職命令に必要な「就業規則の根拠」

一方で、診断書なしで欠勤が続く場合に休職命令を有効に行使するためには、就業規則にその根拠規定があることが原則です。たとえば「精神的・身体的不調により業務に支障をきたしていると会社が判断した場合、医師の診断書の提出を求め、または休職を命じることができる」といった条文があれば、診断書なしの段階でも「診断書の提出命令」や「受診命令」を業務命令として行使できます。規定がない場合は後述の対応が必要です。

就業規則がない・休職規定が不十分な場合

中小企業では、休職に関する規定が存在しないか、あっても「私傷病により長期療養が必要な場合」といった曖昧な記載にとどまるケースが多くあります。この場合、今すぐ規定を整備することが先決ですが、急を要する場面では「本人の同意を得て休業させる」という形での対応が実務的な選択肢になります。ただし、後日トラブルを防ぐためにも、対応の記録を残し、できるだけ早期に規定整備を行うことが重要です。

不調のサインを記録で押さえる

診断書なしで欠勤が続く社員への対応では、「いつから、どのような状態が続いているか」を客観的な記録として残すことが出発点です。記録がなければ、後から「業務上の問題だった」「いじめが原因だ」などの主張が出た際に対応できなくなります。

記録すべき具体的な内容

日々の勤怠記録(出勤・遅刻・早退・欠勤の日時)はもちろん、上司や同僚が気づいた言動の変化——たとえば「ミスが急増した」「会議中に涙ぐむことがあった」「メールの返信が遅くなった」——なども、日時・状況を添えてメモとして残しておきましょう。こうした記録は、のちに休職命令の正当性を示す証拠にもなります。また、本人への連絡履歴(電話・メール・書面)も残しておくことが重要です。

面談は「詰問」にならないよう注意する

不調のサインを把握した段階で、上司や経営者が本人と面談を行うことが推奨されます。ただし、この場面で「なぜ休んでいるのか」「いつ復帰できるのか」と問い詰めると、本人がさらに追い詰められる恐れがあります。面談は「心配している」という姿勢で行い、「最近体調はいかがですか」「無理していませんか」という形で本人が話しやすい雰囲気をつくることが大切です。面談の日時・内容・本人の発言も記録しておきましょう。

受診勧奨の進め方と会社が取れる手段

本人が「大丈夫」と言い張って病院に行かない場合でも、会社は段階的に受診を促すことができます。診断書がない状況でも、適切な手順を踏むことで対応は可能です。ただし「強制的に病院へ連れて行く」ことは認められず、丁寧な手順が求められます。

受診勧奨は義務ではなく「働きかけ」から始める

まず行うべきは、受診を命令するのではなく「勧める」ことです。「一度、専門の先生に相談してみてはどうでしょうか」と伝え、近隣の精神科・心療内科の情報や、かかりつけ医への相談という選択肢も提示すると、本人が動きやすくなります。この段階では記録を残しつつ、本人の意思を尊重した形で進めることが重要です。

就業規則があれば「受診命令」も可能

勧奨しても本人が受診しない場合、就業規則に受診命令の根拠がある企業では、「会社指定医または主治医の診断書を提出すること」を文書で通知し、業務命令として受診を求めることができます。裁判例でも、就業規則の根拠がある場合の受診命令は有効とされるものがあります。なお、「受診を拒否し続けた場合は就労を認めない」という取り扱いは、就業規則に明記されていることが前提となります。強制力の行使には慎重な判断が必要であり、社会保険労務士や弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

連絡が取れない場合の対応範囲

欠勤が続いて連絡がつかない場合は、電話・メールに加えて書面(郵便)で状況確認と出社指示を送ることが基本です。内容証明郵便は、「いつ、何を通知したか」の証拠になるため、対応が長引きそうな場合は検討してください。自宅訪問は、よほどの緊急性がある場合(安否確認が強く懸念されるなど)を除き慎重に行う必要があります。緊急連絡先(家族)への連絡は、本人があらかじめ同意している緊急連絡先に限り、安否確認の範囲で行うのが原則です。

診断書なしで欠勤が続く場合の休職判断 3つのステップ

診断書なしで欠勤が続く社員への対応は、以下の3つのステップで進めると整理しやすくなります。会社の規模や就業規則の整備状況によって取れる手段は異なりますが、基本的な流れは共通しています。

不調の把握と記録・面談

まず最初に行うのは、いつから・どのような状態かを記録し、本人と面談を行うことです。欠勤・遅刻・早退の状況、上司が気づいた言動の変化、本人との面談内容(日時・発言)を書面で残します。この記録が、その後のすべての対応の土台になります。

受診勧奨・受診命令と診断書の取得

次に、段階的に受診を促します。まず「勧奨」から始め、本人が応じない場合は就業規則の根拠をもとに「受診命令(文書)」へと移行します。診断書が取得できた場合は、その内容をもとに休職の要否・期間を判断します。診断書が出なかった場合でも、明らかに就労困難な状態が継続しているのであれば、就業規則の規定に従って休職命令を検討します。

休職命令の発令と処遇の整理

最後に、休職命令を正式に発令し、処遇(給与・社会保険・傷病手当金)を整理します。一般的な実務の流れは下表のとおりです。

段階 状態 給与の取り扱い
有給休暇消化 欠勤が始まり、有給休暇が残っている 有給休暇分の賃金を支払う
傷病欠勤 有給休暇がなくなった後も欠勤が続く 欠勤控除(無給)が原則
休職命令 就業規則の休職要件を満たした時点 無給(傷病手当金の申請を案内)

傷病手当金(健康保険から支給される給付)は、連続3日間の待機期間を含む4日目以降の欠勤から申請できます。本人への案内も会社側の丁寧なサポートの一環として行いましょう。

就業規則の整備と社内への情報共有

診断書なしの欠勤が続く状況でも適切に対応するためには、就業規則の整備と、社内への適切な情報共有の両方が必要です。どちらが欠けても、現場が混乱したり、対応に一貫性がなくなったりします。

最低限整備すべき休職規定の内容

就業規則に盛り込むべき休職規定の要素は、大きく4点です。「休職の要件(何日欠勤が続いたら、または医師の診断があれば)」「休職期間の上限(勤続年数に応じた設定が一般的)」「休職中の処遇(給与・社会保険料の負担)」「復職の条件(主治医・会社指定医の判断)」です。これらが明記されていれば、本人・会社双方にとって判断基準が明確になります。規定がまだ整備されていない場合は、専門家に相談しながら早期に対応することをお勧めします。

同僚・チームへの情報共有の範囲

小規模な組織では、一人の長期欠勤がチーム全体の負荷に直結します。同僚への説明は「体調不良でしばらく休んでいます」という範囲にとどめ、病名や診断内容を開示するのは原則として本人の同意がある場合に限ります。業務の分担変更については、できる限り早めに手を打ち、残るメンバーへの負担が集中しないよう配慮することが、組織全体のメンタルヘルスを守ることにもつながります。

まとめ

診断書がない状態で欠勤が続く社員への対応は、「記録と面談による状況把握」「段階的な受診勧奨・受診命令」「就業規則に基づく休職命令と処遇の整理」という3つのステップで進めることが基本です。診断書は休職の唯一の要件ではなく、就業規則の根拠と客観的な記録があれば、会社は適切に動くことができます。一方で、就業規則が整備されていない場合や、本人との連絡が長期間取れない場合は、対応を誤ると後日の労務トラブルに発展するリスクもあります。

ウェルセンス株式会社では、こうした「診断書がない状態での休職対応」「受診勧奨の進め方」「就業規則の休職規定の整備」について、中小企業の経営者・人事担当者からのご相談を承っています。「うちのケースではどう動けばいいか」という個別の状況についても、実務的な視点でお話しします。まずは気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 診断書なしでも休職命令を出すことはできますか?

A. 就業規則に「精神的・身体的不調により業務に支障をきたしていると会社が判断した場合に休職を命じることができる」旨の規定があれば、診断書がなくても休職命令を出せる場合があります。ただし、客観的な記録と段階的な手順を踏むことが不可欠です。就業規則に規定がない場合は、本人の同意を得て休業させることが現実的な対応になります。

Q. 本人が「大丈夫」と言って病院に行こうとしません。強制できますか?

A. 物理的に強制して病院へ連れて行くことはできません。ただし、就業規則に根拠がある場合は「受診命令」として業務命令の形をとることが可能です。まずは「心配している」という姿勢で受診を勧め、応じない場合は就業規則に基づき文書で受診命令を通知するという段階的な対応が現実的です。

Q. 欠勤中の給与はどう処理すればいいですか?

A. 一般的には、まず有給休暇を消化し、有給が尽きた後は欠勤控除(無給)となります。その後、就業規則の休職要件を満たした時点で休職命令を発令し、休職期間中は無給とするのが一般的です。なお、健康保険の傷病手当金(連続欠勤4日目以降から申請可能)の存在を本人に案内することも大切なサポートになります。

Q. 就業規則に休職規定がありません。今すぐ対応するにはどうすればいいですか?

A. 緊急の場面では、本人と話し合い、双方合意のうえで「休業合意書」を取り交わす形で休業させることが現実的な対応です。ただし、この方法には限界があるため、並行して就業規則の休職規定を整備することを強くお勧めします。社会保険労務士などの専門家に依頼すれば、自社の規模・業態に合った規定を比較的短期間で整えることができます。

Q. 欠勤している社員の状況を、チームのメンバーにどこまで伝えていいですか?

A. 病名・診断内容・受診状況などのプライバシーに関わる情報は、本人の同意なく他の社員へ開示することは避けるべきです。チームへの説明は「体調不良でしばらく休んでいます」という範囲にとどめ、業務分担の調整については別途対応するのが適切です。情報の取り扱いを誤ると、本人との信頼関係や職場環境の悪化につながります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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