フリーランス新法で業務委託契約の途中解除はどう変わる?

フリーランス新法で業務委託契約の途中解除はどう変わる? コンプライアンス
Photo by RDNE Stock project on Pexels

「プロジェクトの方針が変わったので、来月から契約を打ち切りたい」——そう思ったとき、2024年11月1日に施行されたフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が壁になるかもしれません。業務委託契約の途中解除や報酬の減額について、これまで当たり前に行ってきた慣行が「違法」と判断されるリスクが生まれています。「うちは中小企業だから関係ない」という思い込みも危険です。この記事では、発注側として知っておくべき義務・禁止事項と、実務対応のポイントを整理します。

フリーランス新法は中小企業にも適用される

フリーランス新法は規模を問わず、従業員を1人でも雇用している事業者すべてに適用されます。20〜50名規模の会社も例外ではありません。

「大企業向けの話」は大きな誤解

フリーランス新法には資本金・従業員数による規模要件が一切ありません。発注側(「特定業務委託事業者」)の要件は「従業員を使用している個人または法人」であること、それだけです。つまり、アルバイトや正社員を1人でも雇用している会社は、すべて義務の対象になります。「うちは小さな会社だから」という判断は通用しないと考えてください。

受注側の「特定受託事業者」とは誰か

新法が保護する「特定受託事業者」とは、従業員を使用しない個人または法人です。個人事業主のフリーランサーが典型例ですが、法人成りしていても従業員を雇っていなければ該当します。一方、副業でフリーランス活動をしている会社員(本業の雇用関係はある)は、フリーランスとしての活動に関しては特定受託事業者に該当する場合があります。判断に迷う場合は、委託先が「雇用契約を締結した従業員を持っているかどうか」を確認するのが最初のステップです。

自社が対象かを確認する判断フロー

まず、自社が従業員を1人以上雇用しているか確認します。次に、業務委託の相手方(フリーランス)が雇用契約を結んだ従業員を持っていないかを確認します。どちらも該当するなら、新法の義務・禁止事項が発動します。判断が難しいケースとして、週20時間未満の短期アルバイトしか使っていない個人事業主が挙げられますが、除外要件の細則は内閣府令で定められているため、グレーゾーンは専門家への確認が安全です。

業務委託契約の途中解除に関する新ルール

継続的な業務委託契約(6か月超のもの)を中途解除する場合、発注側は解除の30日前までに予告しなければなりません。この義務を知らずに即時解除すると、報酬相当額の支払いが求められるリスクがあります。

30日前予告義務の具体的な意味

「継続的業務委託」に分類される契約を途中解除するとき、発注者は解除予定日の30日前までにフリーランス側へ通知しなければなりません。この予告なしに即時解除を行った場合、解除自体が法律上「無効」になるわけではありませんが、予告期間に相当する報酬相当額の支払い義務が生じうるとされています。たとえば、月額20万円の契約を予告なしで翌日解除した場合、最大で20万円程度の損害賠償リスクが発生する可能性があります。

予告なし解除が認められる例外

フリーランス側に債務不履行(著しい品質不良・納期の重大な遅延・契約違反行為など)があった場合は、30日前予告なしの解除が可能とされています。ただし、その事実を立証する責任は発注者側にあります。「なんとなくパフォーマンスが悪い」という主観的な評価だけでは不十分です。業務委託契約書に成果物の品質基準や納期条件を明確に定め、問題が発生した際はメールや書面でのやりとりを証拠として残しておくことが不可欠です。

解除理由の開示義務も忘れずに

フリーランス新法では、フリーランス側から解除理由の開示を求められた場合、発注者は理由を明示する義務を負います。「会社の方針変更のため」「予算の都合のため」など、正直な理由を書面またはメールで伝える必要があります。曖昧な対応や理由の不開示は行政指導・勧告の対象となりうるため、解除に際しては理由を整理した上でコミュニケーションを取ることが実務上の原則となります。

報酬減額・受領拒否など禁止される行為

フリーランス新法は、発注後に発注者の都合で行う報酬減額や受領拒否など複数の行為を禁止しています。日常的な発注変更との境界を正しく理解することが重要です。

禁止行為の全体像

禁止行為の類型 具体例
受領拒否 完成した成果物を正当な理由なく受け取らない
報酬の減額 発注者側の予算削減・担当者変更を理由に報酬を一方的に下げる
返品 受け取り後に正当な理由なく成果物を返す
不当な低価格設定 市場価格を大きく下回る報酬を一方的に設定する
不当な経済的利益提供要請 協賛金や手伝いなどを強制する
給付内容の変更・やり直し 発注者都合で仕様を大幅に変更し、追加費用を払わずやり直しを命じる
秘密保持義務等の不当な強制 不当に不利な条件を強制する

「禁止」と「許容」の境界線はどこか

発注後に報酬を変更すること自体が一律に違法なのではありません。ポイントは「双方の合意があるかどうか」です。成果物の品質や内容が当初の合意と明らかに異なる場合の報酬調整は、双方が合意した上で書面やメールで記録を残せば許容される余地があります。一方、発注者の予算削減や担当者の個人的な判断を理由に、フリーランス側に一方的な値下げを飲ませる行為は、禁止行為に該当するリスクが高いと判断してください。

報酬支払期日のルールも新設された

新法では、成果物の受領日から60日以内に報酬の支払期日を設定することが義務付けられました。これはすべての業務委託に適用されます。「月末締め翌々月末払い」のような慣行を続けている場合、60日ルールに違反していないかを確認する必要があります。たとえば、4月30日に成果物を受け取った場合、支払期日は6月29日(60日以内)に設定しなければなりません。既存の取引条件を一度見直してみることをお勧めします。

契約内容の確認だけで判断が難しい場合は、外部の専門家に一度相談することで、後々のトラブル防止につながります。

既存の契約書・発注慣行を見直すチェックポイント

ひな形や使い回しの業務委託契約書は、フリーランス新法に対応していない可能性が高いです。最低限確認すべき項目を押さえておきましょう。

契約書に記載すべき必須事項

フリーランス新法では、発注時に書面または電磁的方法(メール・電子契約等)で以下の事項を明示する義務があります。報酬額、支払期日、業務の内容、給付を受領する期日・場所、これらが明示されていない契約書は新法違反のリスクがあります。古いひな形をそのまま使い続けている場合は、この4項目が明確に記載されているかを確認することから始めてください。

日常の発注フローで注意すること

口頭や口約束で「ちょっとこれもお願い」と追加業務を依頼しているケースは要注意です。追加発注も書面または電磁的方法による明示義務の対象になりえます。Slackやチャットツールでの発注が多い会社は、少なくとも報酬額・支払期日・業務内容を明示したメッセージを残す運用に切り替えることで、コンプライアンスリスクを下げることができます。

ハラスメント対策・育児介護への配慮義務も確認を

多くの発注担当者が見落としているのが、ハラスメント対策措置義務と育児介護等への配慮義務です。6か月超の継続的業務委託においては、フリーランスからのハラスメント相談を受け付ける体制の整備が義務付けられています。また、フリーランスから育児・介護を理由とした業務条件の変更申出があった場合、配慮する義務も定められています。「社員向けの制度があるから大丈夫」ではなく、フリーランス向けの対応窓口や運用ルールを別途検討する必要があります。

まとめ

フリーランス新法は、20〜50名規模の中小企業も含めてすべての発注事業者に適用されます。業務委託契約の途中解除には30日前予告義務、報酬支払には60日以内の期日設定義務、そして報酬減額・受領拒否など複数の禁止行為への対応が求められます。既存の契約書の見直し、日常の発注フローの変更、ハラスメント対策や育児介護への配慮体制の整備まで、対応範囲は広く、専任の法務・人事担当者がいない企業ほど「気づかないうちに違反していた」というリスクが高まります。

契約書の内容をチェックしたい、フリーランスとの取引ルール全体を整理したい——そうした人事・労務の判断が難しい場面では、ウェルセンス株式会社へのスポット相談が選択肢になります。「まずは現状を診断してほしい」というご相談から、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 従業員が1人しかいない小規模な会社でも、フリーランス新法の義務を負いますか?

A. はい、義務を負います。フリーランス新法には、発注側の規模に関する要件がありません。従業員を1人でも雇用していれば「特定業務委託事業者」に該当し、書面明示義務・報酬支払期日規制・禁止行為の制限などがすべて適用されます。

Q. 30日前予告をせずに業務委託契約を解除した場合、契約はどうなりますか?

A. 解除自体が法律上「無効」になるわけではありませんが、予告期間に相当する報酬相当額の支払い義務が生じる可能性があります。また、行政指導・勧告の対象にもなりえます。フリーランス側との紛争リスクを避けるためにも、解除を検討する段階で早めに予告通知を準備することをお勧めします。

Q. 成果物の品質が悪かったので報酬を減額したいのですが、違法になりますか?

A. 双方の合意があり、その合意内容を書面やメールで記録しているのであれば、許容される余地があります。ただし、発注者が一方的に「品質が悪いから減額する」と決定する行為は禁止行為(報酬の減額)に該当するリスクがあります。品質基準を契約書に明記しておくこと、問題発生時はやりとりを書面で残すことが重要です。

Q. 法人成りしているフリーランス(一人社長)は新法の保護対象になりますか?

A. 法人格があっても、雇用契約を結んだ従業員がいなければ「特定受託事業者」に該当し、新法の保護対象になります。「株式会社だから個人事業主とは違う」という判断は誤りです。一人社長・マイクロ法人も含めて適用対象かどうかは「従業員の有無」で判断します。

Q. 既存の業務委託契約書をどこから見直せばよいですか?

A. まず「報酬額・支払期日・業務内容・給付の受領期日と場所」の4項目が明記されているかを確認します。次に支払期日が受領日から60日以内に設定されているかをチェックします。継続的業務委託(6か月超)については、中途解除の予告規定・禁止行為に関する条項・解除理由の開示に関する取り決めも見直しが必要です。判断に迷う場合は、外部の専門家に契約書レビューを依頼することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。

メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。

詳しく見る →

タイトルとURLをコピーしました