休職中に退職を申し出された時の手続きの進め方

休職中に退職を申し出された時の手続きの進め方 休職・復職対応
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休職中の従業員から突然「退職したい」と連絡が来た——そんな経験をした経営者・人事担当者から「何をどう進めればいいか全くわかなかった」という声をよく聞きます。通常の退職手続きでさえ慣れていないのに、出社できない・面談もできないという状況が重なり、焦りだけが募ることもあるでしょう。この記事では、休職中の退職申し出への対応を、法的リスクを避けながら実務的に進めるための流れを丁寧に解説します。

退職の申し出を受けたとき、まず落ち着いて確認すること

即受理せず、意思を確認する時間を設ける

休職中、特にメンタルヘルス不調が原因の休職中に退職申し出があった場合、すぐに「わかりました」と受理するのは避けましょう。気持ちが不安定な時期の判断は、後日「あのときは正常な判断ができなかった」として意思表示の無効(民法における錯誤・強迫)を主張されるリスクがあります。

実務上のリスクヘッジとして、「大切なことなので、1〜2週間ゆっくり考えてみてください」と穏やかに伝えることが有効です。この一言があるだけで、後日のトラブルを防ぐ大きな緩衝材になります。

口頭・メール・LINEだけで受理しない

退職の意思確認は、必ず書面(退職届)で行うことが鉄則です。「電話で退職したいと言っていた」「LINEで送ってきた」というだけでは、後から「そんなつもりで言ったわけではなかった」と撤回された場合に対応できません。

退職届には「退職年月日」「退職理由(一身上の都合)」「自署・捺印」の3点が含まれていることを確認してください。出社できない場合は郵送で送ってもらうよう依頼し、返信用封筒を同封した案内レターを会社から先に郵送すると、手続きがスムーズに進みます。

退職勧奨と自己都合退職は明確に区別する

「もう復職は難しいかもしれないね」「辞めることも選択肢のひとつだよ」といった言葉を会社側から伝えていた場合、それが退職勧奨と見なされるリスクがあります。退職勧奨・解雇・自己都合退職は法的に全く異なるものです。本人からの自発的な申し出であることを記録に残しておくことが、会社を守るためにも重要です。

休職中の退職手続きの進め方と書類のやり取り

手続きの流れを事前に整理する

休職中の退職手続きは、通常の退職と基本的な流れは同じです。まず退職届の受領から始まり、次に退職日の確定・社会保険の資格喪失手続き・離職票の作成・各種書類の郵送という順番で進めます。

ただし、出社できない状況であるため、書類のやり取りはすべて郵送が基本となります。健康保険証の返却、退職届の受領、源泉徴収票・離職票・雇用保険被保険者証などの送付もすべて郵送で行います。受け取りを確認するため、簡易書留や追跡可能な方法を使うことをおすすめします。

退職日の設定は慎重に

退職日は、社会保険料の負担や傷病手当金の受給継続に大きく影響します。例えば、月末退職にすると翌月分の健康保険料が不要になり、本人の負担を減らせます。一方、月の途中で退職すると、在籍した日数分の保険料が発生するケースもあります。

退職日を確定する前に、後述する傷病手当金や社会保険料の精算について本人と確認しておくと、後からの「聞いていなかった」というトラブルを防ぐことができます。

離職票の退職理由の書き方(給付に直結する重要項目)

退職理由のコード選択が給付に直結する

離職票(正式には「雇用保険被保険者離職証明書」)の退職理由欄は、本人がハローワークで失業給付を受ける際の受給資格・受給開始時期に直接影響します。担当者が正確に理解しておくべき重要な箇所です。

よく迷うのが、「一般的な自己都合退職(コード2B)」にするか「正当な理由のある自己都合退職(コード2C)」にするかです。傷病や体力不足によって就業継続が不可能な場合は「2C」に該当します。「2C」に該当すると、通常の自己都合退職に課せられる3ヶ月の給付制限がなくなり、本人がより早く失業給付を受け取れるようになります。

「具体的事情記載欄」に事実を丁寧に書く

離職証明書の「具体的事情記載欄(事業主記入欄)」には、退職に至った経緯を事実に基づいて記載します。例えば「〇年〇月より精神疾患のため休職中。主治医の診断により、就業継続が困難と判断し、本人申し出により退職」といった形で具体的に記載することで、ハローワークが「2C」と判断しやすくなります。

記載が曖昧だとハローワークから確認が入ることがあり、手続きが長引く原因になります。事実を正確に、かつ丁寧に記載することが、会社にとっても本人にとっても最善の対応です。

退職理由の記載を誤るとどうなるか

退職理由を誤って記載した場合、本人からクレームが来るだけでなく、ハローワークの調査が入り、修正を求められることがあります。悪意のない記載ミスであっても、本人が不利益を被ったと感じれば関係が悪化します。不明点はハローワークに事前確認する、あるいは社会保険労務士に相談するのが確実です。

未払い賃金・社会保険料の精算の流れ

精算が必要な項目を一覧で把握する

休職中の退職では、通常の退職より精算が複雑になります。確認すべき主な項目は以下のとおりです。

  • 給与の日割り精算:退職月の賃金を稼働日数・在籍日数に応じて計算します。休職中は無給または一部支給の場合が多いため、実際の支払額を確認します。
  • 健康保険料の追加徴収:休職中に給与から天引きできなかった健康保険料(本人負担分)が残っている場合、退職時に一括精算が必要です。退職者本人の同意を書面で取った上で相殺処理を行います。
  • 有給休暇の残日数:退職日までの期間に有給休暇残がある場合、本人が請求すれば原則として取得させる義務があります(労働基準法第39条)。退職日を後ろにずらして有給消化する形も可能です。
  • 退職金:退職金規程がある場合は、休職期間の扱い(勤続年数に算入するかどうか)を規程に従って計算します。

賃金支払いの期限を守る

退職した従業員から請求があった場合、会社は退職日から7日以内に未払い賃金を支払わなければなりません(労働基準法第23条)。この期限を守れない場合、労働基準監督署への申告につながるリスクがあります。精算が複雑な場合でも、退職日が決まった時点から逆算して計算作業を進めておくことが重要です。

傷病手当金と退職後の社会保険について伝えるべきこと

退職後も傷病手当金を受け取れる可能性がある

休職中に健康保険の傷病手当金を受給していた従業員が退職した場合、一定の条件を満たせば退職後も傷病手当金を継続して受給できます。主な条件は、退職日までに継続して1年以上の健康保険の被保険者期間があること、退職時に傷病手当金を受給中(または受給できる状態)であることです。

会社にこの情報を提供する法的義務はありませんが、案内しなかったことで「知っていれば違う選択ができた」と本人が感じれば、トラブルの種になります。退職手続きの案内レターに一言添えるだけで、会社への信頼感を保つことができます。

健康保険の切り替え選択肢を案内する

退職後の健康保険については、本人が選択できる主な方法が2つあります。ひとつは在職中の健康保険を最長2年間継続できる「任意継続」、もうひとつは「国民健康保険」への加入です。保険料の比較は個人の状況によって異なるため、会社としては選択肢を案内するにとどめ、詳細は各窓口(協会けんぽや市区町村)に問い合わせるよう伝えるのが適切です。

なお、傷病手当金の継続受給を希望する場合は、任意継続の手続きを退職日翌日から20日以内に行う必要があります。期限が短いため、退職手続きの案内の中で必ず触れておきましょう。

失業給付と傷病手当金は同時受給できない

退職後に失業給付(雇用保険の基本手当)と傷病手当金を同時に受給することは原則としてできません。失業給付は「働ける状態にあるが仕事が見つからない人」を対象としており、療養中の方はすぐに就労できないためです。療養が続く間は傷病手当金を受給し、回復して求職活動ができるようになった時点でハローワークに受給期間延長の手続きを行うよう伝えることが、本人の利益につながります。

まとめ

休職中の退職申し出は、通常の退職と比べて確認すべき事項が多く、対応を誤ると法的トラブルや本人との関係悪化につながるリスクがあります。ポイントを整理すると、退職の意思確認は書面で行い即受理を避けること離職票の退職理由は事実に基づき丁寧に記載すること未払い賃金は退職日から7日以内に精算すること傷病手当金の継続受給や健康保険の切り替えについて案内すること、の4点が重要です。

とはいえ、専任人事のいない職場でこれらすべてを正確に対応するのは、決して簡単なことではありません。「この対応で本当に大丈夫か」「何か見落としがないか」と不安を感じる場面は必ず出てきます。ウェルセンス株式会社では、こうした休職・退職にまつわる実務対応のご相談をお受けしています。書類の確認から従業員への伝え方まで、一緒に整理していきますので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 休職中の従業員からLINEで「退職したい」と連絡が来ました。そのまま受理しても大丈夫ですか?

A. LINEやメールだけでの受理はリスクがあります。特にメンタルヘルス不調が原因の休職中は、後日「あのときは正常な判断ができなかった」として意思撤回を主張されることがあります。必ず書面(退職届)を郵送で受け取るようにしてください。受け取る前に「1〜2週間冷静に考えてください」と伝えるひと手間も、後のトラブル防止に有効です。

Q. 離職票の退職理由は「自己都合」と書けばいいですか?

A. 傷病による休職中の退職は、「正当な理由のある自己都合退職(コード2C)」に該当する可能性があります。このコードに該当すると、通常の自己都合退職に課せられる3ヶ月の給付制限がなくなり、本人がより早く失業給付を受け取れます。離職証明書の具体的事情記載欄に経緯を丁寧に記載し、不明な点はハローワークに事前確認することをおすすめします。

Q. 休職中に給与から健康保険料を引けていなかった場合、どう対処すればよいですか?

A. 休職中に無給または給与減額となっており、本人負担分の健康保険料を天引きできていなかった場合、退職時に一括精算が必要です。その際は、本人の書面による同意を取った上で、最終賃金や退職金から相殺処理を行います。書面での同意なく一方的に控除することはトラブルの原因になりますので注意してください。

Q. 退職後も傷病手当金を受け取れると聞きましたが、会社から説明する必要はありますか?

A. 法的な説明義務はありませんが、案内しなかったことで「知っていれば違う選択をできた」と本人が感じた場合、関係が悪化するリスクがあります。退職手続きの案内文書の中で「退職後も一定条件を満たせば傷病手当金の継続受給が可能です。詳細は協会けんぽや健康保険組合にご確認ください」と一言添えるだけで、会社への信頼を保つことができます。

Q. 退職後に失業給付と傷病手当金を同時にもらうことはできますか?

A. 原則として同時受給はできません。失業給付は「今すぐ働ける状態で求職活動をしている人」を対象としており、療養中の方は対象外となります。療養中は傷病手当金を受給し、回復して求職活動が可能になった段階でハローワークに「受給期間延長」の申請を行うことで、失業給付の受給開始を遅らせることができます。本人にこの仕組みを伝えておくことが親切な対応です。

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