休職中の代替採用で失敗しない3つの説明ルール

休職中の代替採用で失敗しない3つの説明ルール メンタルヘルス対応
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「求人を出したいけど、休職中の社員にバレたら関係が壊れる」「代わりの人を採用してもいいのか、法的に問題はないのか」――そんな不安を抱えたまま、採用活動に踏み切れずにいる経営者・人事担当者は少なくありません。実は、休職中の代替採用そのものは違法ではありません。ただし、説明のタイミングと言葉の選び方を誤ると、大きなトラブルに発展します。この記事では、法的リスクと本人との信頼関係を両立させる「3つの説明ルール」を実務的に解説します。

代替採用は違法ではない――ただし「その後」に落とし穴がある

採用活動自体は適法

まず大前提として、休職者がいる間に求人を掲載したり、補充要員を採用したりすること自体は、労働基準法にも労働契約法にも抵触しません。会社には業務を継続させる経営上の必要があり、人員を手当てすること自体は正当な経営判断です。中小企業では「1人休むだけで現場が回らない」という状況は珍しくなく、代替採用は現実的かつ合理的な対応です。

問題が起きるのは「採用後の対応」

法的リスクが生じるのは、採用活動の目的・方法・その後の対応によってです。たとえば、代替要員を採用したあと、復職してきた本人に「あなたの業務はもうない」と伝えて退職を促すケースがあります。これは整理解雇の4要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続きの相当性)のうち、「解雇回避努力義務」に著しく反するとして裁判で認められないケースがほとんどです。新しく人を採用しておきながら「業務がない」という主張は、法的に矛盾と見なされるのです。

「採用活動がバレる」リスクはどこから来るか

20~50名規模の会社では、社員同士のネットワークが濃く、IndeedやWantedlyに掲載した求人が本人やその知人の目に触れる可能性は決して低くありません。「自分の代わりを探している」と受け取られた場合、本人のメンタル症状が悪化したり、SNSで拡散されたりするリスクがあります。だからこそ、求人の掲載方法と本人への事前説明を丁寧に設計しておくことが重要です。

説明義務の正体――法的義務と信義則上の配慮は別物

法律上の明示義務はない

「採用活動をしていることを休職者本人に伝える法的義務はあるのか?」という疑問をよく受けます。結論から言えば、明示的な法律上の義務はありません。労働基準法にも労働契約法にも、採用活動の告知を義務付ける条文は存在しません。この点は安心してよい部分です。

信義則上の配慮義務は存在する

ただし、民法第1条2項が定める「信義誠実の原則(信義則)」のもと、労働契約関係においては使用者に一定の配慮義務があると解釈されています。特に、復職が近づいている段階で「自分の席はあるのか」と本人が不安を感じているとき、それを放置したまま採用活動を進めることは、信義則上問題になりうる場合があります。法的に義務がないからといって「何も伝えなくていい」とは限らない、というのが実務の現実です。

「解雇の意思表示」と見なされるリスク

特に注意が必要なのは、説明の内容と表現です。「あなたの代わりを採用しました」「もうあなたの業務はありません」といった言葉は、たとえ口頭であっても、労働基準法第20条が定める解雇予告の手続きを経ない事実上の解雇予告と見なされる可能性があります。不用意な一言が、後の不当解雇訴訟の根拠を与えてしまうケースがあるのです。

説明ルール1:「目的」を明確にしてから伝える

「補充」と「代替」は言葉の選び方が全然違う

本人への説明で最も重要なのは、採用の「目的の定義」です。「あなたがいない間の業務をカバーするための補充採用である」という立場を、社内でまず明確にしておく必要があります。その上で本人には「チームの業務負荷を分散するために人員を補充した」という文脈で伝えます。「あなたの代わり」という表現は絶対に使ってはいけません。言葉1つで本人の受け取り方は大きく変わります。

雇用形態の選択が説明内容を左右する

採用する人材の雇用形態によっても、本人への説明のしやすさが変わります。派遣社員や業務委託であれば「あくまで一時的な補充」という説明が成立しやすく、本人も「自分の席が守られている」と受け取りやすい。一方で正社員として採用する場合、本人が復職した後の業務分担について明確なシナリオを事前に用意しておく必要があります。何のビジョンも示さずに正社員採用を進めると、「自分のポジションを奪われる」という不安を本人に与えることになります。

採用担当者への情報管理も忘れずに

採用面接の場で「この仕事は現在休職している社員の代わりです」と候補者に伝えることは、休職者の個人情報を漏洩するリスクがあります。メンタル不調による休職の事実は、個人情報保護法第2条3項が定める要配慮個人情報にあたります。採用担当者には「現在体制強化のための補充採用を行っている」という説明に留め、特定の社員の状況を開示しないよう徹底することが必要です。

説明ルール2:「タイミング」を復職フェーズに合わせる

休職直後に伝えるのは逆効果

休職に入ったばかりの時期は、本人が最も心理的に不安定な状態にあります。このタイミングで「採用活動を進める可能性がある」と伝えることは、回復を妨げるだけでなく、「会社に見捨てられた」という感情を引き起こしかねません。休職直後は、まず「安心して療養してほしい」というメッセージを主軸に置き、採用の話題は持ち出さないことが原則です。

伝えるべきは復職が現実的になった段階

適切なタイミングは、主治医から復職に向けた動きが出始めた時期です。復職面談(産業医や人事との定期的な面談)の中で、「体制が一部変わっている」「担当業務の一部が変更になる可能性がある」といった形で自然に触れる機会を設けるのが実務上の推奨です。いきなり「あなたの業務がなくなった」と告げるのではなく、段階的に情報を共有することで本人の心理的な準備を整えられます。

定期連絡の中で「変化の予告」を組み込む

休職中も月1回程度の定期連絡(メールや郵送での状況確認)を行っている会社では、その中に「チームの体制について、復職に向けた面談でお話しする機会を設ける予定です」と一文加えておくだけで、本人に心の準備をさせることができます。突然の情報開示は、本人の症状悪化やトラブルのリスクを高めます。段階的・予告的なコミュニケーションが、労使双方の安全を守ります。

説明ルール3:「復職後のビジョン」をセットで伝える

「席はある」を言葉だけでなく具体的に示す

本人が最も恐れているのは「自分の居場所がなくなること」です。採用した補充要員との業務分担について、復職後の具体的なシナリオをあらかじめ準備しておくことが不可欠です。たとえば「現在は山田さん(仮名)に一部の業務を担当してもらっているが、あなたが復職した際には担当を再分配する予定」という形で、本人の業務がどこにあるのかを示します。抽象的な「席はある」より、具体的な役割提示のほうが本人の安心感につながります。

復職後の「業務重複」問題への備え

復職後に採用した人材と業務が重複するケースは、中小企業ではよく起こります。この状況で安易に「業務がない」を理由に退職勧奨や整理解雇に動くことは、前述の通り法的リスクが極めて高い。現実的な対処策としては、新しく採用した人材の業務領域を徐々にシフトさせるか、本人の職域を少し変えて両者が共存できる体制を作ることです。いずれにしても、復職前から「どう両立させるか」のプランを持っておくことが鍵です。

産業医・主治医との情報共有の範囲

採用活動の進捗や会社の体制変化を、産業医や主治医と共有してよいかという疑問もよく出てきます。産業医には「復職後の業務内容や職場環境の変化」について共有することが適切であり、それが復職可否の判断に必要な情報です。一方で、「新しく〇〇という人材を採用した」という詳細情報を主治医に伝える必要はありません。共有すべきは「本人が復職後に担当する業務と環境」の情報であり、採用プロセスの詳細ではないという線引きが重要です。

求人掲載で「バレる」リスクを下げる実務上の工夫

求人票の文言と媒体選定に気を配る

IndeedやHelloWorkなどの公開求人では、社名で検索すれば誰でも内容を確認できます。求人票に「現在の業務空白を埋めるための採用」と読み取れる表現を使うことは避けましょう。「事業拡大に伴う体制強化」「チームの強化を目的とした増員」といった表現が実務的には自然です。また、リファラル採用(社員紹介)やエージェント経由など、公開露出の低い採用手法を優先することも有効な選択肢です。

社内への情報共有の範囲を絞る

採用活動の事実を知る社内メンバーは最小限に絞ることが重要です。特に、休職者と親しい社員に採用情報が伝わると、そこから本人に伝わるリスクが一気に高まります。採用に関わる情報は、経営者と採用担当者の間だけに留め、入社が決まった段階で必要なメンバーに段階的に共有する形が望ましいです。

まとめ

休職中の代替採用は、適切な手順を踏めば法的にも実務的にも問題なく進められます。大切なのは、まず「採用の目的を補充として明確にすること」、次に「タイミングを復職フェーズに合わせて段階的に伝えること」、そして「復職後のビジョンをセットで提示すること」の3点です。これらのルールを守ることで、本人との信頼関係を損なわず、法的トラブルのリスクも最小化できます。

とはいえ、実際の場面では「どんな言葉で伝えるか」「誰が面談に同席すべきか」「復職のシナリオをどう設計するか」など、判断に迷う場面が必ず出てきます。ウェルセンス株式会社では、休職・復職支援の専門家として、こうした説明設計や面談同席まで実務レベルで伴走しています。「自社の状況に合った対応を相談したい」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 休職者がいる間に求人を掲載することは法的に問題ありますか?

A. 求人掲載や採用活動そのものは違法ではありません。ただし、採用後に「業務がない」として復職者を解雇・退職勧奨することは、整理解雇の要件(特に解雇回避努力義務)に反するとして法的に無効と判断されるリスクが高いため、採用後の対応設計が重要です。

Q. 採用活動をしていることを本人に伝える義務はありますか?

A. 法律上の明示義務はありません。ただし、民法の信義則(信義誠実の原則)に基づく配慮義務は存在します。特に復職が近づいた段階では、「体制が変わっている」「担当業務が一部変更になる可能性がある」といった形で段階的に情報共有することが、法的安全と本人の心理的安全の両面から推奨されます。

Q. 求人票に「代替採用」と書いてしまっても問題ありませんか?

A. 「代替採用」という表現を求人票に使うことは避けるべきです。公開求人は誰でも閲覧でき、休職中の本人やその知人の目に触れる可能性があります。「体制強化のための増員」「チーム補強」といった表現を使い、特定の社員の状況が推測できる表記は控えましょう。個人情報保護の観点からも重要です。

Q. 復職後に採用した人と業務が重なった場合、どう対処すればいいですか?

A. 復職後の業務重複は事前にシナリオを設計しておくことが最善策です。新たに採用した人材の業務を別の領域にシフトするか、本人の担当範囲を調整して両者が共存できる体制を作ります。「業務がない」を理由とした退職勧奨や解雇は、不当解雇と判断されるリスクが高く、復職前の段階から業務設計を行っておくことが重要です。

Q. 派遣社員と正社員、どちらで代替採用するほうがリスクが低いですか?

A. 一般的に、派遣社員や業務委託での補充は「一時的なカバー」という位置付けが明確になりやすく、本人への説明がしやすいという実務上のメリットがあります。正社員採用の場合は、復職後の業務分担や役割設計を事前に詳細に検討する必要があります。どちらが適切かは業種・業務内容・休職期間の見通しによって異なりますので、状況に応じた判断が求められます。

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【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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