朝、会社に届いた一通の封書。差出人は見慣れない法律事務所の名前。開封すると「通知書」の文字と、休職中の従業員の名前——。そのまま固まってしまう気持ちは、当然です。しかし、この最初の48時間の動き方が、その後の交渉の行方を大きく左右します。専任人事がいない中小企業でも、やるべきことは明確です。この記事では、弁護士書面を受け取った直後から48時間以内に取るべき初動対応を、順を追って解説します。
届いた書面の「種類」を正確に把握する
弁護士から届く書面には種類があり、それぞれ意味と重さが異なります。まず書面の種類を冷静に確認することが、適切な初動の出発点です。
書面の種類と会社への影響
受け取った書面が何であるかによって、会社が取るべき対応の緊急度が変わります。以下の3種類を確認してください。
| 書面の種類 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 内容証明郵便(弁護士名義) | 「この日にこの内容を送った」という発信の証拠を残す郵便 | 法的義務を直接生じさせるわけではないが、請求内容が明記されていることが多い |
| 通知書・警告書 | 会社に謝罪・支払い・再発防止などの行動を求める書面 | 回答期限が設定されている場合が多い |
| 損害賠償請求書・慰謝料請求書 | 具体的な金額が明示された請求書面 | 放置すると訴訟提起の根拠として使われる |
「代理人弁護士からの通知」が意味すること
書面に「代理人弁護士 ○○法律事務所 弁護士 ××」と記載されている場合、以後の交渉窓口は原則として弁護士対弁護士になります。会社の担当者や経営者が直接、従業員本人と交渉・協議を進めようとすることは、トラブルをこじらせるリスクがあります。「書面が届いた=法的交渉のフェーズに入った」と認識し、会社側も弁護士を立てることを前提に動き始めてください。
回答期限が設定されていても焦らない
「○日以内に回答がない場合は法的措置を取る」という文言に驚く方は多いですが、催告書に期限を設定しても、その期限自体に法律上の強制力はありません。即座に回答する義務はありません。ただし完全に黙殺することは交渉上の不利につながるため、弁護士の指示のもとで「現在弁護士と協議中であり、弁護士から改めて回答する」という旨の短い返答をするのが一般的な対応です。
受領直後の6時間以内にやること
書面を受け取ったら、まず最初にやるべきことは「書面の保全」と「経営者への報告」の2点です。この段階では、判断や交渉は一切不要です。
書面と封筒を複数部コピーして原本を保管する
書面本体だけでなく、封筒(消印・差出人の記載を含む)も一緒にコピーしてください。消印の日付は、弁護士が「いつ発送したか」を主張する根拠になるため重要です。原本はファイルに入れて鍵のかかる場所に保管し、コピーを業務用として使います。また、受領した日時・受領者・受領方法(郵便・手渡し・宅配便など)を書面に書き残しておきましょう。これは後の証拠整理で必ず役立ちます。
経営者(決裁者)へ即時報告する
担当者が一人で抱え込むことは禁物です。弁護士書面への対応は会社としての意思決定が必要になるため、必ず経営者・代表者に当日中に報告してください。「まだ内容を精査していないから」と報告を先延ばしにする必要はありません。「弁護士書面が届いた」という事実だけでも、まず共有することが大切です。
休職者本人への連絡は一時停止する
弁護士が代理人として介入した段階で、従業員本人への直接連絡は原則として控えてください。「話し合えば解決するはず」という判断で本人に電話をかけることは、発言内容を記録・利用されるリスクがあります。業務連絡や復職打診についても、弁護士の方針が定まるまで一時停止するのが安全です。
📄 【無料】休職・復職 実務書式パック(全5点)
休職の根拠規定・開始日・期間・期間中の取扱いを明示する休職指示書と、復職の条件・提出書類・手続の流れを休職の入口で本人に渡す説明書を含む、休職・復職の実務書式5点です。
6時間〜24時間以内に専門家へ連絡する
書面の保全と経営者への報告が終わったら、次に行うことは専門家への第一報です。この段階での相談先の優先順位は、顧問弁護士の有無によって変わります。
顧問弁護士がいる場合の連絡方法
書面のコピーをメールまたはFAXで送付し、方針判断を仰いでください。このとき「どう対応すればよいか」という漠然とした問いではなく、「この書面で請求されている内容は何か」「回答期限への対応はどうすべきか」という具体的な問いを添えると、弁護士も動きやすくなります。費用についても最初に確認しておくと、その後のやり取りがスムーズです。
顧問弁護士がいない場合の対処法
顧問契約がない場合は、労働問題の実績がある弁護士への単発相談を最優先で調整してください。日本弁護士連合会の「ひまわり求人求職ナビ」や各都道府県の弁護士会の相談窓口を利用する方法があります。また、顧問社労士がいる場合は、弁護士への橋渡しや休職に関する就業規則・給与規程の確認を依頼することができます。社労士は法廷代理はできませんが、休職経緯の整理や社内書類の確認など、弁護士相談の準備段階で大きく役立ちます。
専門家に伝えるべき情報を事前に整理する
相談の場で「何を伝えればよいかわからない」という状態では時間のロスが生じます。最低限、以下の情報を口頭でも伝えられるように整理しておきましょう。休職の開始時期と理由、診断書の提出状況、休職中の給与支払い状況、書面に記載されている主な主張内容、そして休職に至るまでの経緯の大まかな流れです。これらを5分程度でまとめたメモがあると、弁護士・社労士への最初の説明がスムーズになります。
書面の種類判定や記録整理は専門知識が必要です。正しい初動を踏むため、まずウェルセンス株式会社に相談し、弁護士・社労士との連携体制を整えることをお勧めします。
24時間〜48時間以内に記録を保全する
弁護士への相談と並行して、会社が進めるべきことが「証拠となる記録の保全」です。散逸する前に集めることが、この段階の最大の目標です。
最優先で集めるべき記録
まず最初に手をつけるべきは、休職の経緯に直接関わる書類です。診断書の原本と受領年月日の記録、休職開始・延長に関する会社書類(休職命令書・通知書)、休職中の給与支払い記録(給与明細・振込履歴)、そして書面で問題とされている行為の時期に関するメール・チャットの履歴が対象になります。これらは上書き・削除のリスクがあるため、印刷またはPDF保存で早期に固定してください。
48時間以内を目安に収集する記録
次に、就業規則・休職規程の該当バージョンを確認してください。規程は改定されていることがあるため、休職開始時点に適用されていたバージョンを特定することが重要です。あわせて、本人との面談記録・電話記録(日時・内容・参加者)、産業医面談記録(ある場合)、上司・関係者からの聴き取りメモを作成します。聴き取りメモは「作成日・記録者名・聴き取り相手の署名」を入れると証拠としての信頼性が高まります。
記録が残っていない場合の対応
「面談の記録を取っていなかった」「メールを削除してしまった」というケースも少なくありません。その場合は、担当者・上司・関係者それぞれの記憶を個別にヒアリングし、時系列に沿ったメモとして作成します。記憶に基づいて後から作成したメモであっても、作成日・作成者・裏付けとなる別の証拠(交通費精算など)と組み合わせることで一定の証拠価値が生まれます。「何も残っていない」と諦める前に、弁護士や社労士に現状を正直に伝えて方針を仰いでください。
会社側の対応に問題があったか、自分で見極めるには
書面に「ハラスメント」「安全配慮義務違反」「不当な休職強要」といった主張が書かれていると、会社に本当に非があるのか判断できず混乱します。この問いに対する答えは、弁護士が精査すべきものですが、判断の大まかな軸を知っておくことで冷静さを保てます。
主な主張類型と確認ポイント
ハラスメント(パワハラ・セクハラ)の主張では、問題とされる言動の具体的な日時・場所・内容・目撃者の有無が問われます。安全配慮義務違反(労働契約法第5条)の主張では、長時間労働・業務負荷・健康状態の変化を会社が認識していたかどうかが焦点になります。不当な休職強要の主張では、休職命令の根拠・手続き・診断書の取り扱いが確認事項です。これらについて「会社として把握している事実」を客観的に整理し、弁護士に伝えることが、方針策定の出発点になります。
「会社に問題があった可能性」を否定しないことの重要性
担当者が「うちは問題ない」と確信している場合でも、法的な評価は別の基準で行われることがあります。たとえば月45時間を超える残業が常態化していたなら、本人の申告がなくても安全配慮義務違反が問われる可能性があります(労働安全衛生法第66条の8の2、過重労働対策関連)。弁護士に相談する際は、会社に不利な事実も隠さず伝えることが、最終的には会社を守ることにつながります。
企業規模・体制別の注意点
従業員50名以上で産業医を選任している場合は、産業医面談記録が証拠として扱われるため、記録の有無と内容を早急に確認してください。就業規則の届出義務が生じる従業員10名以上の企業は、届出済みの就業規則のバージョン管理が問われます。10名未満で就業規則が存在しない場合は、民法・労働基準法の規定が直接適用される前提で弁護士が判断しますので、その旨を正直に伝えてください。
一人で対応すると判断ミスが起きやすいフェーズです。記録の整理方法や法的評価の進め方について、早めにウェルセンス株式会社など専門家に相談することで、後々の交渉がスムーズになります。
まとめ
休職者から弁護士書面が届いた場合、最初の48時間は「保全・報告・相談・記録」の4つに集中することが基本です。書面と封筒を複数部コピーして原本を保管し、経営者に即日報告する。そして顧問弁護士または労働問題に詳しい弁護士に第一報を入れ、社労士とも連携しながら休職に関わる記録を集める。返答期限への焦りや、本人への直接連絡は状況を悪化させるリスクがあるため、弁護士の指示が出るまで慎重に動きましょう。
「どこから手をつければよいかわからない」「顧問弁護士がおらず、まず誰に相談すべきか迷っている」「複数の書類を整理する時間がない」——そういったご状況であれば、ウェルセンス株式会社にご相談ください。休職・復職支援・メンタルヘルス対応を専門とする立場から、弁護士・社労士との連携体制の整え方や、社内の記録保全の進め方について、初動から伴走してサポートします。特定の担当者が一人で抱え込まず、適切な専門家につながるための入口として、まず気軽にお問い合わせください。
よくある質問
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。
不調者対応を、人事だけで抱えない。
メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。


