休職期間を勤続年数に含めるか迷ったら読む記事

休職期間を勤続年数に含めるか迷ったら読む記事 休職・復職対応
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「休職していた社員が戻ってきて、退職金の計算のことを聞かれた。休職期間って勤続年数に入るの?」——初めてそんな場面に直面した経営者・人事担当者の方は少なくありません。法律で決まっているのか、会社が決めていいのか、就業規則には何を書けばいいのか。専任の人事がいない職場ほど、判断の根拠がなくて困ります。この記事では、法律上のルールから就業規則の書き方、退職金・有給休暇への具体的な影響まで、実務で使える形に整理してお伝えします。

休職期間を勤続年数に含めるかどうかは、会社が決めてよい

結論からお伝えすると、傷病(病気やメンタルヘルス不調)による休職期間を勤続年数に「含める・含めない」は、法律で強制されておらず、会社が就業規則によって自由に定めることができます。ただし「決めていない」状態のまま放置するのが最もリスクの高い選択です。

法律に強制規定はない

労働基準法にも、その他の主要な労働関連法令にも、「傷病休職期間を勤続年数に算入しなければならない」とする規定は存在しません。つまり、会社が就業規則に明記すれば、算入する・算入しない・一部だけ算入するのいずれの選択も法律上は認められます。

ただし、育児休業・産後パパ育休の期間については話が変わります。育児・介護休業法第10条では、育児休業の取得を理由とした不利益取扱いを禁止しており、退職金算定の勤続年数から「育児休業期間をまったく除外する」と定めることは問題になり得ます。今回のテーマである傷病休職とは別のルールが適用される点に注意してください。

「規則に書いていない」が一番危ない

就業規則に何も書いていない場合、「算入する」とも「しない」とも解釈でき、社員から個別に異議を申し立てられたとき、会社側が不利な立場に置かれやすくなります。「書いていないから会社が自由に決められる」ではなく、「書いていないから争われやすい」と理解してください。休職者が出て初めて気づいた場合でも、まず規則の整備から着手することが鉄則です。

育児休業と傷病休職は分けて考える

同じ「休職」でも、育児・介護による休業と傷病による休職では適用される法律が異なります。就業規則を作成・改定するときは、それぞれの類型を明確に区別して条文を書くことで、将来の解釈トラブルを防げます。「休職」とひとまとめにした規定は、後々混乱の原因になります。

退職金への影響と就業規則への書き方

休職期間を勤続年数に含めるかどうかは、退職金額に直接影響します。中小企業でよく使われる「勤続年数×係数×基本給」の計算式では、算入の有無で数十万円単位の差が生じることもあるため、事前に規定を明確にしておく必要があります。

算入の選択肢と計算例

退職金算定における休職期間の扱いには、大きく三つの選択肢があります。

選択肢 内容 就業規則への明記例
全期間算入 休職期間をそのまま勤続年数に含める 「私傷病による休職期間は、退職金算定の勤続年数に算入する」
全期間除外 休職期間を勤続年数から差し引く 「私傷病による休職期間は、退職金算定の勤続年数に算入しない」
一部算入(半算入等) 休職期間の一定割合のみ算入する 「私傷病による休職期間は、退職金算定の勤続年数の2分の1を算入する」

たとえば、勤続10年の社員が1年間休職し、退職金規程が「勤続年数×5万円」という計算式だとします。休職期間を全期間除外した場合は「9年×5万円=45万円」、全期間算入した場合は「10年×5万円=50万円」と5万円の差が生まれます。長期休職や高額退職金制度をもつ企業ほど、差額は大きくなります。

退職時のトラブルを防ぐために

退職金のトラブルは、退職時になって初めて表面化するケースが多くあります。社員が在職中に「自分の退職金はいくらだろう」と試算したとき、休職期間が除外されていることを知らなければ、退職のタイミングで強い不満や紛争につながります。どの選択肢を取るにせよ、「就業規則に明確に書いて、本人に周知する」ことが紛争予防の基本です。

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有給休暇の付与にはどう影響するか

休職期間が有給休暇の付与に影響するのは主に「出勤率8割要件」の計算です。ここの取り扱いが就業規則で明記されていないと、休職明けに有給を付与すべきかどうかの判断が毎回ぶれてしまいます。

出勤率8割要件とは

労働基準法第39条では、年次有給休暇は「全労働日の8割以上出勤した労働者」に付与すると定められています。休職期間中は当然出勤していないため、単純に「欠勤」として計算に含めると、8割要件を満たせず有給が付与されないケースが出てきます。

厚生労働省の行政解釈(昭和33年発基17号等)では、業務上の傷病による休業・産前産後休業・育児休業の期間は「出勤したものとみなす」とされています。しかし、メンタルヘルス不調を含む私傷病(業務外の病気・ケガ)による休職については、同様のみなし規定が法令上明示されていません。

実務上の二つの対応と就業規則への書き方

私傷病休職期間の扱いについては、実務上は次の二つに分かれます。

  • 全労働日から除外する(分母・分子の双方から除く):休職期間を計算の対象外とすることで、出勤率への不利な影響をなくす方法。
  • 欠勤として計算に含める:休職期間の日数を分母に含め、出勤日数には加えない方法。8割要件を満たしにくくなる。

多くの企業では前者(除外)を採用しています。就業規則には「私傷病による休職期間は、年次有給休暇の出勤率算定の基礎となる全労働日から除外する」と明記しておくと、復職後の有給付与をめぐる疑義が生じにくくなります。

有給の基準日と「継続勤務」の考え方

有給休暇の基準日(入社日起算または全社統一基準日)については、休職中でも雇用契約が存続している以上、「継続勤務」が認められるのが一般的な解釈です。つまり、長期休職があっても基準日を変更したり、勤続年数をリセットしたりする必要は通常ありません。特別な定めがなければ継続勤務として扱い、基準日に関する規定を別途変更する必要はないとされています。

「どのルールを採用すべき?」「うちの会社の場合は?」 といった判断に迷う場合は、人事労務の専門家に相談することで、会社と社員双方の納得感につながります。

就業規則の整備:どのタイミングで何をすべきか

実際に休職者が出てから規則を整備しようとすると、当事者への対応と並行して規則を作る二重の負担が生じます。「今まさに困っている」状況でも、できることから着手する手順をお伝えします。

今すぐ確認すること

まず、手元の就業規則に「休職期間と勤続年数・退職金・有給休暇」に関する条文があるかどうかを確認してください。何も書かれていなければ、最低限次の三点を明文化することを優先しましょう。

  • 退職金算定における休職期間の算入ルール
  • 年次有給休暇の出勤率計算における休職期間の扱い
  • 休職期間中の給与・社会保険料負担のルール(本記事の主題ではありませんが、合わせて整備を)

社員への説明と周知のタイミング

就業規則を変更・新設した場合、労働基準法上、常時10人以上の労働者を使用する事業場では労働基準監督署への届出と社員への周知が義務付けられています。10人未満の場合でも、周知しなければ就業規則の効力が認められないことがあるため、変更後は速やかに全社員に内容を共有してください。

特に「含めない」方向で規則を変更する場合は、既存社員にとって不利益変更に当たる可能性があります。一方的な変更は紛争リスクを高めるため、変更の必要性を丁寧に説明する、経過措置を設けるなど、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。

会社の規模・状況別の対応チェックポイント

就業規則の整備状況や従業員規模によって、優先度は変わります。自社の状況と照らし合わせてみてください。

  • 就業規則がそもそも古い・整備されていない場合:休職関連条文だけでなく、全体の見直しを社会保険労務士に依頼することを検討する。
  • 就業規則はあるが休職規定が曖昧な場合:今回紹介した三点(退職金・有給・継続勤務)を追記する形で最低限の手当てをする。
  • 現在進行形で休職者への対応が必要な場合:既存規則の解釈で対応しつつ、専門家に相談して規則整備を急ぐ。個別対応の内容は必ず記録に残す。

「前例になる」プレッシャーへの対処法

中小企業で最も多いのが、「Aさんのときにこう対応したから、Bさんにも同じにしてほしい」というパターンです。個別対応の積み重ねが非公式の「慣行」となり、制度として固定される前に整合性が崩れてしまいます。

個別対応を前例にしないために

休職者が出るたびに個別に判断していると、対応した内容が社内に伝わり、次の休職者から「前の人と同じ扱いをしてほしい」という要求が来ます。これに反論するためには、制度として明文化されたルールが必要です。個別対応をせざるを得なかった場合は、「この判断は暫定的なもので、今後は就業規則に基づいて統一的に対応する」と明言し、記録に残しておくことが重要です。

「一貫性のある対応」が信頼につながる

就業規則に明文化されたルールは、社員にとっても「会社がどう対応するか事前に分かる」という安心感をもたらします。特にメンタルヘルス不調による休職は、本人も職場も不安な状況です。制度が整っていることで、復職後の関係修復がスムーズになるという効果もあります。ルール整備は「社員を管理するため」だけでなく、「安心して働ける職場を作るため」という視点で取り組むことが、長期的な組織の安定につながります。

ご注意: 本記事は一般的な取り扱いをお伝えしているもので、個別の法的解釈に関するご相談は、社会保険労務士や弁護士への相談をお勧めします。

まとめ

休職期間を勤続年数に含めるかどうかは、法律で強制されておらず、会社が就業規則によって決定できます。ただし「規則に書かれていない」状態が最もトラブルになりやすく、退職金・有給休暇・復職後の処遇をめぐる紛争リスクを高めます。まず就業規則を確認し、(ア)退職金算定の算入ルール、(イ)有給休暇の出勤率計算への反映、(ウ)継続勤務の取り扱いの三点を明文化することを優先してください。育児休業と傷病休職は別のルールが適用される点も忘れずに押さえておきましょう。

休職・復職対応に伴う規則整備は、会社と社員の関係に大きな影響を与えるため、「これくらいで大丈夫」と判断する前に、一度専門家に相談することをお勧めします。

よくある質問

Q. 就業規則に何も書いていない場合、社員から「算入してほしい」と言われたら従わなければなりませんか?

A. 法律上の強制規定はないため、就業規則に明記がない状態で「必ず算入しなければならない」とはいえません。ただし、明記がないことで解釈が曖昧になり、紛争になった場合に会社側が不利になることがあります。「書いていないから自由に断れる」ではなく、「書いていないから争われやすい」と理解し、早急に規則を整備することをお勧めします。

Q. 休職期間を勤続年数から除外する方向で規則を変えたいのですが、既存社員への影響はありますか?

A. 既存社員にとって不利な方向への就業規則変更は「不利益変更」に当たる可能性があります。変更の合理的理由を丁寧に説明すること、経過措置(変更前入社の社員には旧規定を適用するなど)を設けること、社員の意見聴取を行うことが重要です。一方的に変更して周知だけ行うと、後に変更の効力を争われるリスクがあります。社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。

Q. 復職後すぐに有給休暇を使いたいと言われました。休職明けでも有給は付与されますか?

A. 就業規則で私傷病休職期間を「全労働日から除外する」と定めている場合、出勤率の計算上不利にはならず、基準日が到来していれば有給休暇は付与されます。一方、欠勤として計算に算入する規定の場合は、8割要件を満たせず付与されないケースがあります。どちらのルールを採用しているかは就業規則を確認してください。規則に明記がない場合は、まず規則の整備を優先し、それまでの対応は専門家に相談して判断することをお勧めします。

Q. 育児休業と傷病休職は、勤続年数の扱いで何が違うのですか?

A. 育児・介護休業法第10条では、育児休業の取得を理由とした不利益取扱いが禁止されています。このため、退職金算定の勤続年数から育児休業期間を「まったく除外する」と就業規則に定めることは、不利益取扱いとして問題になり得ます。一方、メンタルヘルス不調を含む私傷病による休職については、同様の法規制はなく、会社が就業規則で自由に算入ルールを定めることができます。就業規則を作成する際は、両者を明確に区別して条文を書くことが重要です。

Q. 休職者が複数名出た場合、全員に同じルールを適用しなければなりませんか?

A. 同じ種類の休職(例:私傷病休職)であれば、全社員に同一のルールを適用することが原則です。特定の社員だけに有利・不利な扱いをすることは、均等待遇の観点から問題になる可能性があります。過去に個別対応した経緯がある場合でも、今後は就業規則に基づいて統一的に運用することが重要です。過去の個別対応については「暫定的なものだった」と明確に整理し、規則整備のうえで今後の対応方針を全社に周知することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
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