復職したいが上司に会いたくない。異動できない時どうする?

復職したいが上司に会いたくない。異動できない時どうする? 休職・復職対応
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「復職したい気持ちはある。でも、あの上司の顔を見るのが怖い」——休職中の社員からこんな訴えを受けたとき、部署が3つしかない会社の人事担当者はどう動けばいいのでしょうか。「異動させてあげたくても、現実的に無理」という詰まった状況のなかで、それでも復職を前に進めるための考え方と具体的な対処法を整理します。

「会いたくない」の理由を分類することが、すべての出発点

復職支援を進める前に、まず「なぜ上司に会いたくないのか」の原因を整理することが不可欠です。原因の種類によって、会社がとるべき対応はまったく異なります。

原因は大きく3つのパターンに分かれる

実際の相談現場では、「上司に会いたくない」という訴えの背景は以下の3パターンに分類されます。

原因の類型 具体的な状態 対応の優先事項
不適切行為型 上司による叱責・無視・過大な業務指示など、パワハラに該当しうる行為があった ハラスメント調査を先行させる
症状・認知型 うつ病・適応障害などの症状として、対人過敏や認知の偏りが生じている 主治医・産業医と連携し症状として整理する
関係摩擦型 疾患とは独立した、職場の人間関係上のすれ違いや価値観の衝突 コミュニケーション設計・関係調整で対処する

「パワハラが原因かもしれない」場合に注意すること

上司による不適切行為(パワハラ等)が訴えの背景にある可能性がある場合、復職対応だけを先に進めるのは危険です。労働施策総合推進法第30条の2に基づき、使用者にはパワハラの事実確認・再発防止措置を講じる義務があります。この調査を怠ったまま「とりあえず復職」を進めると、後に法的リスクが生じます。まず、本人から聞き取りを行い、記録に残しておくことが大切です。

「疾患の症状なのか、事実の訴えなのか」が判断しにくいとき

実務でもっとも難しいのが、本人の症状(うつや適応障害による過敏・回避)と、実際のハラスメント被害が混在しているケースです。どちらか一方に決めつけず、「まず本人の話を丁寧に聴く」「主治医に疾患的な背景について情報提供を求める」という2つを並行して進めることが現実的な対応です。産業医がいる場合は、この段階から関与を求めてください。

部署異動なしでできる「職場環境調整」の具体策

部署異動ができなくても、上司との接触の頻度・質・タイミングを構造的に設計することで、復職を実現できるケースは少なくありません。「異動できないから何もできない」ではなく、代替措置を具体的に検討・実施した記録をつくることが重要です。

接触を物理的・構造的に減らす工夫

報告ルートをサブリーダーや別の先輩社員に変更する、業務連絡をメール・チャット主体にする、席の位置を調整して視界に入る頻度を減らすといった工夫は、規模の小さい会社でも取り組みやすい施策です。また、始業・終業時刻を30分ずらすことで、朝の混雑した時間帯に上司と顔を合わせる機会を減らすことができます。テレワークが可能な業務であれば、復職初期は週に数日リモートで勤務するという設計も有効です。

「試し出勤」を段階的に設計する

いきなりフルタイム・フル出社で復職させるのではなく、最初は短時間・特定の時間帯・上司不在の曜日から始める「試し出勤」の設計が、再休職リスクを下げる上で効果的です。たとえば「最初の2週間は午前中だけ出社し、上司への報告はメールのみ」「3週目から週1回、第三者(人事担当者)同席のもとで対面の短時間面談を行う」といったスモールステップを、本人・上司・会社の三者で合意して文書化しておくことが大切です。

上司に「何をすべきか・しないべきか」を明示する

復職支援で見落とされがちなのが、上司へのケアと指示です。「あの社員が戻ってくるらしい」という情報だけが伝わり、上司が何をしていいかわからず混乱するケースは非常に多く見られます。上司には、「声かけの頻度はどの程度か」「業務指示はどの手段で行うか」「問題が起きたときは誰に相談するか」を具体的に伝える場(心理教育・役割の再定義の場)を設けることで、上司側の不安も軽減され、結果として職場全体が落ち着きます。

法的に「どこまで配慮する義務があるか」を整理する

使用者には安全配慮義務(労働契約法第5条)がありますが、「上司と会わせないこと」自体が義務かどうかではなく、「復職後の安全な就業を実現するために合理的な措置を講じたか」が問われます。部署異動が物理的に不可能という事実は、合理的な限界として主張できる余地があります。ただし、そのためには「代替措置を検討し、試みた記録」が不可欠です。

「復職可」の診断書があっても、復職判断は会社が行う

主治医が「復職可能」と判断した診断書を出していても、それは参考情報に過ぎません。最終的な復職可否の判断権限は会社(使用者)にあることは、裁判例でも繰り返し確認されています。「上司と会えない状態で、当該業務への就労が現実的に可能か」を会社が独自に判断することは、法的に認められています。この視点を持つことで、「診断書が出たから無条件に戻さなければ」という誤解から抜け出すことができます。

精神障害がある場合の「合理的配慮」の考え方

うつ病や適応障害などの精神障害は、障害者雇用促進法上の合理的配慮の対象となり得ます。合理的配慮とは「過重な負担にならない範囲で、障害のある労働者が働きやすい環境を整えること」を指します。部署が2〜4つしかなく物理的に異動が不可能という状況は、「過重な負担」の主張として合理性を持ちます。ただし、「異動以外の代替措置を何も検討しなかった」では配慮義務を果たしたとは言えません。検討の経緯と実施内容を記録に残してください。

産業医・就業規則の有無で対応の幅が変わる

産業医が選任されている場合(常時50人以上の事業場では義務)は、復職支援プランの策定に産業医を関与させることが望ましく、後の法的判断でも「適切な手順を踏んだ」根拠になります。従業員50人未満で産業医がいない場合は、嘱託産業医や地域の産業保健センター(産業保健総合支援センター)への相談も選択肢です。また、就業規則に復職・休職に関する規定がない場合は、この機会に整備しておくことをお勧めします。規定がないと、復職時の判断基準が曖昧になり、トラブルの原因になります。

三者(本人・上司・会社)の役割を整理して「板挟み」を解消する

復職支援が行き詰まる最大の原因は、「本人が会社に要求する→上司は状況を知らされず混乱する→会社が板挟みになる」という構図です。誰が何をすべきかの役割を整理するだけで、状況が動き出すことがあります。

本人・上司・会社それぞれに求めること

本人に対しては、「何が怖いのか」「どういう状況なら出社できるか」を具体的に言語化してもらいます。「上司に会いたくない」だけでは支援の設計ができません。「朝礼での指示が怖い」「二人きりになるのが不安」など、できるだけ具体的な場面に落とし込むことで、対処策が見えてきます。上司に対しては、事情を適切に共有した上で(個人情報への配慮は必要です)、期待する行動を明示します。会社(人事担当者)は、本人と上司の間に入る「翻訳者・調整者」として機能することが求められます。どちらの味方でもなく、業務の継続と本人の健康の両立という目標を軸に動くことが大切です。

復職支援プランを文書化・三者で合意する

「誰が・何を・いつ・どのような形で行うか」を明文化した復職支援プランを作成し、本人・上司・会社の三者で合意しておくことが、後のトラブル防止に大きく役立ちます。プランには、復職開始日・業務範囲・勤務時間・報告ルート・見直しのタイミングを最低限盛り込んでください。「言った・言わない」の混乱を防ぎ、誰もが安心して動ける共通の地図になります。

「また再休職させない」ために復職後フォローを設計する

復職初日がゴールではありません。復職後3〜6ヶ月間は再休職リスクが高い時期です。この期間のフォロー設計を事前に決めておくことが、「復職→再休職→復職」という繰り返しを断ち切る鍵になります。

定期的な面談の仕組みをつくる

復職後は、人事担当者や産業医(いない場合は外部のEAP:従業員支援プログラム)が同席する定期面談を月1回程度設定することをお勧めします。本人と上司が二者でやりとりするのではなく、第三者が介在する場をつくることで、問題が小さいうちに把握・対処できます。「最近どうですか?」という漠然とした質問ではなく、「睡眠は取れていますか」「業務量は無理なく処理できていますか」など、確認項目を事前に決めておくと面談の質が上がります。

「うまくいっていない」サインを早期に察知する仕組み

再休職の兆候として現れやすいのは、遅刻・早退の増加、報告の遅延・消極化、表情の変化、ミスの増加などです。上司に「これらのサインが出たらすぐに人事に連絡する」という役割を明示しておくことで、早期介入が可能になります。上司一人に抱え込ませず、会社として観察・支援する体制をつくることが重要です。

まとめ

「復職したいが上司に会いたくない、でも異動もできない」という状況は、小規模企業では珍しくありません。大切なのは、まず「なぜ会いたくないのか」の原因を分類し、それに応じた対応(ハラスメント調査なのか、症状管理なのか、関係調整なのか)を選ぶことです。部署異動ができなくても、接触頻度の設計・業務範囲の限定・試し出勤の段階設計・第三者介在の面談など、代替手段は複数あります。そして、その検討と実施の記録を残すことが、会社の安全配慮義務を果たしたことの証明になります。復職支援プランを三者で合意・文書化し、復職後3〜6ヶ月のフォロー体制まで設計することで、「また再休職」という繰り返しを防ぐことができます。

「どこから手をつければいいかわからない」「本人への聴き取りの仕方がわからない」「上司への説明をどうすればいいか悩んでいる」——そうした具体的な場面での悩みに、ウェルセンス株式会社は伴走します。復職支援・職場環境調整の実務経験をもとに、御社の状況に合わせた対応を一緒に考えます。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 本人が「上司と会わせないこと」を復職の条件として要求してきました。会社はこれを受け入れなければなりませんか?

A. 「上司と一切会わせない」という要求をそのまま受け入れる法的義務はありません。ただし、「代替措置を何も検討しなかった」では安全配慮義務を果たしたとは言えません。接触頻度の低減・報告ルートの変更・テレワーク活用など、できる範囲の代替措置を検討・実施し、その経緯を記録しておくことが重要です。その上で「これ以上の対応は事業運営上困難」と説明することは、合理的な対応として認められる余地があります。

Q. 主治医から「復職可」の診断書が出ました。会社は必ず復職させなければなりませんか?

A. 主治医の診断書は復職判断の参考情報であり、最終的な復職可否の判断権限は会社にあります。「上司と会えない状態で現実的に業務に就けるか」を会社として独自に評価することは、法的に認められています。ただし、拒否する場合は理由を明確にし、再度の復職判断の機会を設けるなど、合理的なプロセスを踏むことが重要です。

Q. 産業医がいない場合、誰に相談すればいいですか?

A. 常時50人未満の事業場では産業医の選任義務はありませんが、都道府県ごとに設置されている「産業保健総合支援センター」では、中小企業向けに産業保健の相談を無料で受け付けています。また、EAP(従業員支援プログラム)を提供する外部機関を活用する方法もあります。復職支援の専門家に相談することで、社内だけでは判断しにくい場面での助言を得ることができます。

Q. 上司には、休職している社員のことをどこまで伝えていいですか?

A. 疾患名や診断内容などの医療情報は、本人の同意なく上司に開示することは避けてください。一方で、「復職に向けて段階的に対応を進めていること」「上司として期待する行動・避けてほしい行動」については、上司が業務上必要な範囲で情報を持つことは適切です。「何を伝えるか・伝えないか」を事前に本人と合意し、記録しておくとトラブルを防げます。

Q. 復職支援プランは、どんな内容を盛り込めばよいですか?

A. 最低限盛り込みたい項目は、復職開始日・業務範囲と業務量・勤務時間(短時間勤務の有無)・報告ルートと報告手段・上司との接触に関するルール・定期面談の頻度と担当者・プランの見直しタイミングです。本人・上司・会社(人事担当者)の三者が内容を確認し、署名または確認のサインをもらった上で保管することをお勧めします。「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、文書化が重要です。

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