欠勤が続いているのに休職発令できず困ったら読む記事

欠勤が続いているのに休職発令できず困ったら読む記事 休職・復職対応
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「有給は全部使い切った。でも本人からは何の連絡もない。このまま放っておいていいのか、それとも動くべきなのか——」。欠勤が続く従業員への対応に迷い、結果として何もできずにいる経営者・人事担当者は少なくありません。専任の人事がいない中小企業では、こうした状況に直面しても「どこから手をつければいいかわからない」まま日数だけが経過してしまいがちです。この記事では、欠勤放置のリスク、休職発令のタイミングと法的根拠、給与・社会保険の実務処理まで、現場で即使える情報を整理します。

欠勤放置がもたらすリスク

欠勤状態を「様子見」で放置し続けることは、会社にとって法的・金銭的リスクを静かに積み上げる行為です。何も対処しなければ自然に解決するという期待は危険な誤解です。

自動退職はない。籍は残り続ける

欠勤が長期化しても、労働契約は自動的に終了しません。本人が退職を申し出ない限り、籍は会社に残り続けます。「このまま欠勤を続けたら自然退職になる」と考えている経営者もいますが、法的にはそのような概念は原則として存在しません。欠勤が続いていても雇用関係は継続しており、会社には適切な対応をとる義務があります。

安易な解雇は「解雇無効」に転じるリスク

有給休暇を使い切った後も欠勤が続いているからといって、それだけを理由に解雇することは認められません。労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当でない解雇を無効と定めています。特にメンタルヘルス不調が背景にある場合、「休職制度を利用させないまま解雇した」という事実が、裁判所で解雇を不当と判断する事情の一つとして扱われた裁判例が複数あります。休職制度を設けているにもかかわらずそれを経ずに解雇した場合のリスクは極めて高く、解雇無効・地位確認訴訟に発展する可能性があります。

社会保険料の立替が知らぬ間に積み上がる

欠勤中でも、退職しない限り社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者資格は継続します。給与支払いがない月でも保険料は発生し、本人負担分を会社が立て替える状態が続きます。無給欠勤が3ヶ月続けば、数万円単位の立替が生じるケースもあります。この立替分を後で本人に請求しようとしても回収できないリスクがあるため、早期に対応方針を決めることが重要です。

休職命令の法的根拠とタイミング

会社は本人の申し出を待たなくても、一定の条件のもとで休職を命じることができます。ただし、就業規則の規定が前提となるため、まず自社の規定を確認することが出発点です。

就業規則があれば、会社からの休職命令は適法

就業規則に「会社は従業員に対して休職を命じることができる」という規定がある場合、会社側からの職権による休職命令は適法です。本人が「休職したい」と申し出ることを待つ必要はありません。むしろ、本人が申し出ないまま欠勤が続いている状況こそ、会社が積極的に動くべき場面です。一方、就業規則に休職規定がない場合は、会社側からの命令に法的根拠がなくなるため、まず規定の整備が必要になります。

休職移行を検討する実務上の目安

実務では、以下のいずれかの状況が生じた段階で休職への移行を検討するのが一般的です。

トリガーとなる状況 対応の方向性
医師による「休養要」「休職要」の診断書が提出された 速やかに休職発令の手続きへ
有給休暇を使い切った後も欠勤が継続している 休職命令の検討・受診勧奨の実施
就業規則で定めた連続欠勤日数を超えた 就業規則に基づき休職発令
本人と連絡が取れない状態が続いている 書面による連絡・受診命令の検討

受診勧奨・受診命令の実行

本人がメンタルヘルス不調と思われる状態で欠勤している場合、まず受診勧奨(医療機関への受診を促すこと)を行います。労働安全衛生法や就業規則を根拠として、受診命令を出すことも実務上認められています。受診勧奨・命令を行った事実は必ず記録に残してください。後のトラブル対応において、会社が適切な対応を取っていたことを証明する重要な証拠になります。

本人と連絡が取れない場合の対応手順

本人から連絡がなく、電話にも出ない状態が続く場合でも、会社は「連絡が取れないから仕方ない」で終わらせてはいけません。記録を残しながら段階的に対応することが重要です。

複数の連絡手段を使い記録を積み上げる

まず電話・メール・LINEなど複数の手段で連絡を試み、その都度日時と内容を記録します。連絡が取れない場合は、書面(内容証明郵便も選択肢)で「現在の状況確認と出勤または連絡を求める」旨を通知します。この書面の送付と到達確認は、後の法的手続きにおいて「会社は適切な対応を行っていた」ことを示す証拠になります。

緊急連絡先や家族への確認

本人と連絡が取れない状況が続く場合、入社時に届け出のある緊急連絡先(家族等)に連絡を取ることを検討します。ただし、この際には「本人の健康状態を心配しての確認」という目的に留め、個人情報の取り扱いに注意が必要です。また、家族から状況を聞いた内容も記録として残しておきます。

連絡不能でも休職発令は可能

就業規則に「連続して一定日数以上欠勤した場合、会社は休職を命じることができる」という規定があれば、本人の同意や連絡なしでも休職命令の発令が可能です。書面を自宅住所に送付し、会社として手続きを進めた記録を残してください。なお、従業員数が50人以上の場合は産業医が関与できますが、50人未満の企業では産業医の選任義務がないため、主治医の診断書取得を軸に対応を進めることになります。

欠勤中の給与・社会保険の実務的な処理

欠勤中の給与と社会保険の処理を正しく理解しておかないと、金銭的損失や後のトラブルにつながります。基本的な仕組みを把握したうえで、早めに対応方針を決めておくことが大切です。

欠勤中の給与の扱い

欠勤については「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されるため、原則として欠勤日の給与は支払わなくてよいとされています。ただし、就業規則に欠勤中の賃金支払いに関する別の定めがある場合はその内容に従う必要があります。休職に移行した後の給与については、就業規則の定め次第で無給・一部支給のいずれもあり得るため、自社の規定を確認してください。

社会保険料の処理と傷病手当金の活用

欠勤・休職中でも退職しない限り社会保険の資格は継続するため、毎月の保険料は発生し続けます。給与が発生しない月は会社が本人負担分を立て替えることになるため、後日清算する方法(退職時の給与から控除するなど)を事前に取り決めておく必要があります。また、業務外の傷病で休業している従業員には、健康保険の傷病手当金(連続3日の待機期間後、4日目以降の欠勤に対して支給)を申請できることを案内してください。会社には申請書への証明を行う義務があり、これを拒否することは適切ではありません。傷病手当金の活用により、休職中の従業員の生活を支えながら、会社の給与支払い負担を軽減することができます。

就業規則に休職規定がない場合の対処法

就業規則に休職規定がない企業(特に従業員10人未満の企業では就業規則の作成義務自体がありません)では、会社からの休職命令に法的根拠がありません。この場合、まず就業規則を整備する、あるいは本人との個別合意に基づいて休職期間・条件を取り決める形で対応することになります。規定がないまま欠勤を長期放置することは、後の解雇・退職交渉を一層複雑にするため、欠勤が発生した段階で就業規則の整備を同時に進めることをお勧めします。

今すぐ着手すべき実務チェックリスト

欠勤対応は「やるべきこと」が複数同時に走ります。どれかを後回しにするほどリスクが積み上がるため、優先順位をつけながら着実に進めることが重要です。

記録と連絡の整備

欠勤が始まった日、有給消化の開始日・終了日、本人への連絡を試みた日時と手段・内容、受診勧奨を行った日時、診断書を受け取った日——これらをすべて時系列で記録してください。メールは受信フォルダに残し、電話は発信履歴と通話内容のメモを保管します。記録がないと、後のトラブルで「会社は何も対応しなかった」とみなされるリスクがあります。

就業規則と社内規程の確認・整備

現在の就業規則に休職規定があるかを確認します。ある場合は、休職の発令要件・期間・給与の扱い・復職の手続きが明記されているかを確認します。規定がない、または曖昧な場合は、今回の対応と並行して規定の整備を進めることを検討してください。就業規則の変更には就業規則の変更手続き(労働者代表への意見聴取・労働基準監督署への届出)が必要です。

傷病手当金・社会保険手続きの確認

  • 欠勤開始日・有給消化の終了日を確認し、傷病手当金の申請可否を判断する
  • 本人または家族に傷病手当金制度を案内し、申請書の準備を進める
  • 給与が発生しない月の社会保険料(本人負担分)の立替と清算方法を決める
  • 休職期間中の保険料納付スケジュールを経理担当者と共有する

まとめ

欠勤放置のリスクは時間とともに確実に大きくなります。有給使い切り後も欠勤が続いている状況は「様子見でいい」フェーズではなく、会社として記録・連絡・受診勧奨・休職発令の検討を同時並行で進めるべき局面です。就業規則に休職規定があれば会社からの休職命令は適法であり、本人の申し出を待つ必要はありません。規定がなければ整備と個別合意を並行して進めます。欠勤中の給与はノーワーク・ノーペイの原則が基本ですが、社会保険料の立替は発生し続けるため早期の対応方針決定が欠かせません。傷病手当金の案内も忘れずに行ってください。

「何から手をつければいいかわからない」「就業規則を見てもよくわからない」という場合、ウェルセンス株式会社では欠勤・休職対応の実務相談を承っています。専任人事がいない企業の経営者・兼務担当者からのご相談も歓迎しています。お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 有給を使い切った後も欠勤が続いています。このまま解雇できますか?

A. 有給消化後の欠勤継続だけを理由とした解雇は、原則として認められません。特にメンタルヘルス不調が背景にある場合、労働契約法第16条の解雇権濫用法理により解雇無効となるリスクが高く、休職制度を経ずに解雇した事案で解雇が無効と判断された裁判例も複数存在します。まず休職命令の検討を優先してください。

Q. 就業規則に休職規定がありません。それでも休職を命じることはできますか?

A. 就業規則に規定がない場合、会社からの一方的な休職命令には法的根拠がありません。この場合は、本人との個別合意に基づいて休職期間・条件を書面で取り決めるか、就業規則を早急に整備したうえで手続きを進めることを検討してください。就業規則の整備には労働者代表への意見聴取と労働基準監督署への届出が必要です。

Q. 欠勤中の従業員の社会保険料は誰が払うのですか?

A. 欠勤・休職中でも退職しない限り社会保険の資格は継続するため、毎月の保険料(会社負担分+本人負担分の両方)が発生します。給与支払いがない月は、会社が本人負担分を一時的に立て替える形になります。立替分の清算方法(復職後の給与から分割控除するなど)を事前に本人と取り決め、書面で合意しておくことをお勧めします。

Q. 本人が連絡に一切応じません。それでも会社は何かしなければいけませんか?

A. 連絡が取れない場合でも、会社は対応を止めてはいけません。電話・メール・書面(郵送)など複数の手段で連絡を試み、その記録を残してください。緊急連絡先(家族など)への確認も選択肢です。就業規則に「一定日数以上の無断欠勤で休職命令が可能」という規定があれば、本人の応答がなくても書面で休職命令を発令し、その記録を保全することができます。

Q. 傷病手当金はどのタイミングで案内すればよいですか?

A. 業務外の傷病による欠勤が始まった早い段階で案内することをお勧めします。傷病手当金は、連続する3日間の待機期間を経た後、4日目以降の欠勤日から支給対象となります。有給消化中の日数も待機期間に含まれるため、有給休暇の終了が近づいた時点で案内すると従業員も準備しやすくなります。申請書には会社が証明を行う欄があり、これへの協力は会社の義務です。

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【監修】ウェルセンス株式会社
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