パートやアルバイトにも休職制度は必要?

パートやアルバイトにも休職制度は必要? メンタルヘルス対応
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「パートさんが体調を崩して休みが続いているんだけど、これって休職扱いにしていいのかな……」——そう頭を抱えながら、就業規則をめくってみたら、そこに書いてあるのは正社員のことばかり。パート・アルバイトへの対応をどうすべきか、判断の根拠が見当たらない。中小企業の現場では、こうした状況が珍しくありません。法律の義務なのか、そもそも制度を設けなくていいのか。この記事では、パート・アルバイトへの休職制度適用をめぐる法的な考え方と、実務上の対処法を整理します。

休職制度は法律上の義務ではない

結論からお伝えすると、「休職制度を設けなければならない」という法律上の義務は存在しません。ただし、義務がないからといって「何もしなくていい」ということにはならないのがこのテーマの難しいところです。

休職は就業規則によって生まれる制度

休職制度の根拠となる法律は、労働基準法でも労働契約法でもありません。休職は企業が自社の就業規則に規定することで初めて効力を持つ、任意の制度です(労働契約法第7条・第10条)。裏を返せば、就業規則に規定がなければ「休職」という概念そのものが社内に存在しない状態になります。

規定がないまま長期欠勤が続くと何が起きるか

就業規則に休職の定めがない場合、メンタル不調で休みが続く社員の状態は「欠勤」として処理されます。欠勤が長期化すれば、場合によっては「無断欠勤」として懲戒解雇の対象となる道筋が生まれてしまいます。しかし、そのメンタル不調の原因が業務にある場合や、不調のサインを会社が把握していた場合、解雇の正当性が問われることになります。「制度がないから対応しなかった」は通りにくい言い訳です。

安全配慮義務は雇用形態を問わない

労働契約法第5条は、使用者が雇用形態にかかわらず労働者の生命・身体・精神の安全に配慮する義務を負うと定めています。パートやアルバイトであっても、メンタル不調のサインを把握しながら放置した場合、安全配慮義務違反を問われるリスクがあります。「義務はない」と「何もしなくていい」は別物です。

正社員と雇用形態が違えば差をつけてよいのか

パート・アルバイトに正社員と同じ休職制度を適用しなければならないわけではありませんが、「パートだから一切認めない」という画一的な扱いは法的リスクを招きます。

不合理な待遇差を禁じるパートタイム・有期雇用労働法

パートタイム・有期雇用労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の第8条は「均衡待遇」、第9条は「均等待遇」を定めています。職務内容や配置変更の範囲が正社員と同一のパート・アルバイトに対して差別的取り扱いをすることは禁止されており(第9条)、同一でない場合でも不合理な差異は認められません(第8条)。休職制度もこの「待遇」に含まれると解されています。

「短く設定する」は合理的、「一切認めない」はリスク

実務上、合理性が認められやすいのは「雇用形態や勤続年数に応じて休職期間を短く設定する」というアプローチです。たとえば、勤続1年未満のパート・アルバイトは最長1〜2ヶ月、正社員は3〜6ヶ月、といった設計は、職務内容や継続雇用への期待度の違いを根拠として合理性を説明しやすい。一方で「パート・アルバイトには休職制度を一切適用しない」と就業規則に明記することは、不合理な待遇差として問題になる可能性があります。

職務内容で判断する——比較の視点

下表は、待遇差の合理性を判断する際に見るべき主な視点をまとめたものです。自社のパート・アルバイトがどの類型に近いかを確認してください。

確認項目 正社員と同一 正社員と異なる
職務内容(業務の種類・責任の程度) 均等待遇の対象(差別的取り扱い禁止) 均衡待遇の対象(不合理な差は禁止)
配置変更・転勤の範囲 正社員と同一なら差を設けにくい 限定的であれば差の根拠になりうる
勤続年数・更新回数 長期反復更新は正社員に近い扱いを検討 短期・単発契約は差が認められやすい

就業規則の確認と整備——今すぐできる対応

パート・アルバイトへの休職対応で最初にすべきことは、現在の就業規則がどこまでをカバーしているかを確認することです。多くの中小企業では、この確認だけで「何が足りないか」が見えてきます。

就業規則の適用範囲を確認する

就業規則の第1条や総則部分に「適用範囲」の記載があります。「正社員に適用する」となっていれば、パート・アルバイトには原則として適用されません。パート・アルバイト向けの別規程(パートタイム就業規則)を整備しているかどうかが最初の分岐点です。常時10人以上の従業員を使用する事業場では就業規則の作成・届出が義務付けられており(労働基準法第89条)、パート・アルバイトを含む場合はその実態に合った規程整備が必要です。

休職規定に盛り込むべき内容

パート・アルバイト向けの休職規定を整備する場合、最低限、以下の内容を盛り込むことをおすすめします。

  • 休職の適用要件(傷病による欠勤が何日以上続いた場合など)
  • 休職期間の上限(雇用形態・勤続年数に応じた設定)
  • 休職申請に必要な書類(医師の診断書など)
  • 休職中の賃金・社会保険料の取り扱い
  • 休職期間満了時の扱い(復職できない場合の退職扱い等)

規定がない状態で個別対応を続けると、社員ごとに扱いがバラつき、後々「あの人には認めたのに」という問題が生じます。

就業規則がない・整備されていない場合の当面の対応

就業規則の整備には時間がかかります。目の前にすでに体調不良のパート・アルバイトがいる場合は、個別の「休職合意書」や「覚書」を本人と締結する方法が現実的です。休職の期間・条件・復職の見通し・契約更新との関係などを文書で明確にしておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。

メンタル不調のパート・アルバイトへの初動対応

体調不良の状況に気づいたとき、最初の対応を誤ると本人との信頼関係が壊れるだけでなく、法的リスクに直結します。「どう声をかけるか」よりも「何を確認するか」を先に整理しておくことが大切です。

診断書の取得依頼は規定に基づいて行う

「診断書を出してください」と伝えることに、経営者や担当者が躊躇するケースがあります。しかし、就業規則に「休職申請には医師の診断書を要する」旨が規定されていれば、その提出を求めることは適法です。規定がない場合でも、本人の同意を得た上で「医療機関の受診を検討してみませんか」と伝えることは問題ありません。問題になるのは、本人の意思を無視した強制的な提出命令や、診断書を口実にした不利益取り扱いです。

「欠勤」か「休職」かを早期に整理する

連絡なく休みが続いている状態を放置すると、会社側は「無断欠勤」として処理せざるを得ない状況に追い込まれます。しかし、その背景にメンタル不調があれば、懲戒解雇は困難です。できるだけ早い段階で本人または家族と連絡を取り、「休職として扱うか、欠勤として扱うか」を明確にしておくことが現場を守ります。連絡が取れない場合は、試みたことの記録(日時・手段・内容)を残しておきましょう。

現場の人員不足と安全配慮義務のあいだ

少人数体制の職場では「ひとり抜けると回らない」という現実があります。それでも、メンタル不調の社員を休ませずに無理に働かせ続けた結果として症状が悪化した場合、安全配慮義務違反として損害賠償を求められるリスクがあります。人員補充の手配が難しければ、業務の一部をほかのスタッフや派遣で一時的にカバーする選択肢も含めて、早めに手を打つことが経営判断として重要です。

目の前に「対応に困っているパート・アルバイト」がいるなら、法的判断と実務的な対応は並行して進めるべきです。不安な場合は、まず相談することが最短ルートになります。

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有期雇用特有の問題——契約更新と休職の交差点

パート・アルバイトの多くは有期雇用契約です。休職期間中に契約満了日が到来した場合、「更新しない(雇い止め)」と「休職の継続」のどちらを優先するかは、慎重な判断を要します。

雇い止め法理の適用可能性

契約更新を繰り返してきたパート・アルバイトについては、労働契約法第19条の「雇い止め法理」が適用される可能性があります。これは、実態として期間の定めのない契約と同視できる場合や、更新への合理的な期待がある場合に、雇い止めを解雇と同様の厳しい基準で審査するものです。「休職中だから更新しない」という判断は、この法理のもとで正当性を問われることがあります。

契約満了時の対応フロー

休職中に契約満了日が来た場合、まず確認すべきは「これまでの更新回数と更新時の状況」です。更新を繰り返してきた実績があれば、雇い止め法理が適用されるリスクを念頭に置いて対応する必要があります。次に確認するのは「就業規則または休職合意書に、契約満了時の扱いが明記されているか」です。記載がなければ個別交渉になり、トラブルの温床になります。法的判断が必要な場面では、社労士や弁護士への相談を早めに検討してください。

まとめ

パート・アルバイトへの休職制度適用に法的な義務はありませんが、「何もしなくていい」とは言えません。安全配慮義務はすべての雇用形態に及び、パートタイム・有期雇用労働法は不合理な待遇差を禁じています。実務上の基本は、まず自社の就業規則がパート・アルバイトをカバーしているかを確認し、カバーされていなければ規定を整備すること。メンタル不調のサインが出たら早期に状況を把握し、「欠勤」か「休職」かを曖昧にしないことが重要です。有期雇用の場合は、契約満了と休職の関係を事前にルール化しておくことがトラブル防止につながります。

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よくある質問

Q. パート・アルバイトに休職制度を設けないと法律違反になりますか?

A. 休職制度を設けること自体は法的義務ではないため、規定がなくても直ちに法律違反にはなりません。ただし、メンタル不調の社員を放置した場合には安全配慮義務違反(労働契約法第5条)を問われる可能性があり、また「パートだから一切認めない」という扱いはパートタイム・有期雇用労働法の不合理な待遇差禁止に抵触するリスクがあります。

Q. 正社員より短い休職期間をパート・アルバイトに設定してもよいですか?

A. 職務内容や継続雇用の期待度などに応じて、合理的な範囲で短く設定することは認められると考えられます。たとえば正社員が最長6ヶ月のところ、勤続1年未満のパート・アルバイトは最長1〜2ヶ月とするといった設計です。「一切認めない」ではなく「短く設定する」という形が実務上の安全策です。

Q. パート・アルバイトに診断書の提出を求めてもよいですか?

A. 就業規則(パートタイム就業規則を含む)に「休職申請には医師の診断書を要する」旨の規定があれば、提出を求めることは適法です。規定がない場合でも、本人の了解を得た上で受診を勧めることは問題ありません。ただし、規定もなく強制的に提出を命じたり、診断書を理由に不利益な扱いをすることは慎む必要があります。

Q. 休職中にパート・アルバイトの契約期間が満了した場合、雇い止めしてもよいですか?

A. 契約を繰り返し更新してきた実績がある場合、雇い止め法理(労働契約法第19条)が適用される可能性があります。この場合、雇い止めには解雇と同等の合理的理由と社会通念上の相当性が求められます。「休職中だから更新しない」だけでは正当性が認められない可能性が高く、個別の事情を踏まえて慎重に判断する必要があります。社労士や弁護士への相談を強くおすすめします。

Q. 就業規則がパート・アルバイトに対応していない場合、すぐに整備が必要ですか?

A. 常時10人以上の従業員がいる事業場では就業規則の整備・届出が義務です(労働基準法第89条)。パート・アルバイトを含む場合も、その実態に合った規程が必要です。目の前にすでに体調不良のスタッフがいる場合は、就業規則の整備と並行して個別の休職合意書・覚書を本人と締結することで当面のリスクを抑えることができます。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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