休職者の復職意思撤回が繰り返されたらどうすればいい?

休職者の復職意思撤回が繰り返されたらどうすればいい? メンタルヘルス対応
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「先月も復職すると言っていたのに、また撤回されました。正直、もう限界です」——こうした声を、中小企業の経営者や兼務人事担当者からよく耳にします。復職意思の撤回が繰り返される状況は、担当者を精神的にも業務的にも疲弊させます。しかし、「どこまで待ち続けなければならないのか」という問いには、実務上の明確な答えがあります。この記事では、法的根拠をおさえながら、会社として合理的に区切りをつけるための具体的な手順を解説します。

会社はいつまで待ち続ける義務があるのか

結論から言えば、就業規則に定めた休職期間が満了すれば、会社は自然退職として処理できます。ただし、その適用が「不当」と判断されないためには、プロセスの丁寧さが問われます。

「復職意思がある」だけでは延長義務は生じない

「戻りたい気持ちはある」という発言と、「業務に就くことができる状態である」という事実は、まったく別物です。復職「意思」だけが示されている状態では、会社には休職期間を無制限に延長する義務はありません。就業規則に定められた期間が経過し、就業可能な状態が回復していない場合は、期間満了として取り扱うことが法的に認められています。

「自然退職」と「解雇」の違い、そして共通点

休職期間満了による退職は法律上「解雇」ではなく「自然退職(当然退職)」に分類されます。しかし裁判例では、これを「解雇に準じて」扱い、労働契約法第16条の解雇権濫用法理(「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効」とする原則)を類推適用したケースも存在します。つまり、手続きが不十分であれば「自然退職だから安全」とは言い切れません。会社が誠実に対応したことを示す記録が、トラブル回避の鍵になります。

就業規則の有無・内容で対応が変わる

就業規則がない、または休職・復職に関する規定が整備されていない場合、期間満了の根拠そのものが曖昧になります。従業員数10人以上の事業場には就業規則の作成・届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。規定が未整備の場合は、現在の状況への対処と並行して、今後のために規定の整備を急ぐ必要があります。

復職意思の撤回が繰り返されるときに取るべき対応

繰り返しの撤回に対しては、「また延期か」と受け身になるのではなく、会社として期限と手順を明示した主体的なプロセス管理に切り替えることが重要です。

休職期間の残余日数を書面で明示する

まず、本人に対して「現在の休職期間の起算日・満了日・残余日数」を書面(メールでも可)で通知します。口頭だけの確認は後日「聞いていない」となるリスクがあるため、必ず文書化してください。この通知には「休職期間満了日までに就業可能な状態での復職が難しい場合は、就業規則第○条に基づき休職期間満了となる」旨を明記します。一方的な圧力と見なされないよう、「ご状況をご確認のうえ、〇月〇日までにご返答をお願いします」と期限を設けた確認依頼の形式にするのが適切です。

「復職意思の期限設定」を段階的に行う

以下の流れで段階的に意思確認を行うことで、後から「十分な機会を与えなかった」と指摘されるリスクを減らせます。

タイミング 会社のアクション 記録方法
満了の2〜3か月前 休職期間・満了日を書面で通知。復職に向けた準備状況を確認 書面送付+メール送付記録
満了の1か月前 復職可否の最終確認。医師の意見書提出を依頼 面談記録(同席者あり)+確認メール
満了の2週間前 復職不可の場合の退職手続きを説明。本人に書面で確認 説明内容を書面化・本人署名または返信保存
満了日 就業規則の規定に基づき自然退職を処理 退職通知書の交付・記録保管

連絡頻度の設定で「ハラスメント」リスクを回避する

頻繁すぎる連絡は「復職強要」と見なされるリスクがあります。目安として、月1回程度の定期的な状況確認に留め、連絡方法はメールを主体とすることをお勧めします。電話や訪問よりもメールのほうが記録が残りやすく、本人にとっても返答のタイミングを選べるため負担が少なくなります。「早く戻ってきてください」という表現は避け、「ご体調はいかがでしょうか。就業規則上の休職期間について、〇月〇日時点での状況をご確認させてください」のように事務的・中立的な文面を心がけてください。

主治医の診断書と本人意思のズレにどう対処するか

「復職可能」の診断書が出ているのに本人が「まだ無理」と言う状況は珍しくありません。この場合、会社は主治医の判断に縛られる必要はなく、独自の判断を下す権限を持っています。

会社が最終的な復職可否を判断できる法的根拠

主治医の診断書は「参考資料」であり、復職の可否を決定する最終権限は会社にあります。これは確立した実務上の原則です。主治医は患者(従業員)の療養を担当する立場から「就労は可能な状態」と判断しますが、実際に業務遂行が可能かどうかは職場の状況を考慮した判断が必要であり、それは会社側しか行えません。

産業医の活用が対応の質を高める

産業医が選任されている事業場(従業員50人以上が義務)では、産業医意見書を取得することで、主治医診断書との整合性を確認し、会社判断の合理性を補強できます。産業医が選任されていない小規模事業場の場合も、地域産業保健センター(産業保健総合支援センター内)を活用すれば、費用をかけずに産業医に相談する機会を得られます。産業医の意見を記録に残すことが、後のトラブル回避において非常に有効です。

診断書が二転三転する場合の対処

主治医の診断書が「復職可」と「療養要」を繰り返す場合、会社は本人の同意を得たうえで主治医に直接問い合わせるか、セカンドオピニオンとして会社指定医や産業医の診察を受けるよう求めることができます。この際、本人の同意取得とその記録は必ず行ってください。同意なく医療機関に連絡することは個人情報保護の観点から問題になりえます。

休職期間の計算管理——同一疾病での再休職に注意

復職後に短期間で症状が再発し、再休職となるケースでは、休職期間の通算管理が適切に行われているかどうかが重要な論点になります。

通算規定がある場合とない場合の違い

就業規則に「同一または類似の傷病による再休職は、前回の休職残余期間を適用する」といった通算規定があれば、復職→再発→再休職を繰り返しても、休職期間は積み上がっていきます。たとえば、最大休職期間が12か月の場合に8か月消化して復職し、3か月後に再発した場合、残余は4か月となります。一方、この規定がない場合、再休職時に新たな休職期間が丸ごとリセットされて発生するリスクがあります。結果として、会社が意図せず長期の在籍を認め続ける状況が生まれます。

通算規定がない場合に今からできること

現時点で通算規定がない場合、既存の休職者に対して遡及的に不利な変更を加えることは原則として認められません。ただし、今後の就業規則改定において通算規定を追加することは可能です。改定にあたっては、労働者代表の意見聴取と就業規則の届出(労働基準法第89条・第90条)が必要です。現在進行中のケースについては、既存の規定の範囲内で対応しながら、次のリスクに備える体制を整えてください。

対応を記録する——「誠実に対応した」を証明するために

万が一トラブルになった際に会社を守るのは、「きちんと対応した」という事実ではなく、それを証明できる記録です。記録の習慣化が、担当者自身の負担軽減にもつながります。

面談・電話・メールの記録ルール

口頭での面談は、同席者を置くことが理想です。同席が難しい場合は、面談終了後24時間以内に「本日ご確認いただいた内容を以下の通り整理しました。相違があればご連絡ください」というメールを送付し、本人から返信がなければ黙示の確認が得られたと扱います。「復職する」「やはり難しい」などの発言は、発言日・手段・内容を時系列で記録してください。Excelや簡単なメモアプリでも構いません。記録の様式よりも、継続して残すことのほうが重要です。

会社が「復職支援の合理的努力をした」ことの証明

業務量の軽減、職種・部署の変更、試し出勤(リハビリ出勤)の提案など、会社が行った配慮内容とそれに対する本人の応答を記録してください。「〇月〇日、業務量を通常の50%に軽減する案を提案したが、本人から『やはり難しい』との回答があった」という形式で残します。これが「会社は誠実に復職支援を行った」という証拠になり、期間満了処理の正当性を支えます。

記録管理で担当者の疲弊を軽減する

記録を整備することは、担当者自身の心理的な負担軽減にもつながります。「次にまた撤回されたらどうしよう」という不安は、「ここまで対応すれば会社の義務は果たした」という明確な基準がないことから生まれます。記録と手順を整えることで、担当者は感情的な消耗から距離を置き、事務的なプロセス管理として対応できるようになります。

まとめ

復職意思の撤回が繰り返される状況は、担当者を疲弊させますが、会社には「合理的な区切りをつける権限」があります。就業規則に定められた休職期間の満了をもって自然退職として処理することは法的に認められており、そのために必要なのは「誠実に対応したプロセスの記録」です。期間満了日の事前通知、段階的な意思確認、主治医診断書への適切な対応、そして面談記録の文書化——これらを一つひとつ積み重ねることが、会社を守り、担当者の消耗を防ぐことにつながります。

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よくある質問

Q. 「復職したい」と言った翌週に「やはり無理」と撤回されました。これを繰り返す場合、会社はどこまで対応する必要がありますか?

A. 就業規則に定められた休職期間の範囲内で誠実に対応することが会社の義務です。復職「意思」の表明だけでは、休職期間を無制限に延長する義務は生じません。期間満了日を書面で明示し、段階的に意思確認を行ったうえで、期間内に就業可能な状態が回復しなければ自然退職として処理することが認められています。

Q. 主治医から「復職可能」の診断書が出ているのに、本人が「まだ無理」と言います。どちらに従えばよいですか?

A. 復職の最終判断権は会社にあります。主治医の診断書は参考情報であり、実際の業務遂行可能性は職場環境を踏まえて会社が判断します。可能であれば産業医の意見も取得し、会社として判断した根拠を記録に残すことが重要です。本人が「無理」と言い続ける場合も、就業規則の規定に従って期間満了として処理できます。

Q. 復職後3か月で再発し、再休職になりました。休職期間はリセットされますか?

A. 就業規則に「同一または類似の傷病による再休職は前回の残余期間を適用する」旨の通算規定があれば、期間はリセットされず残余期間が適用されます。この規定がない場合、新たな休職期間が発生するリスクがあります。現在の就業規則を確認し、通算規定がなければ今後の改定を検討してください。

Q. 連絡を取るたびに「ハラスメントだ」と言われそうで怖いです。どの程度の頻度・方法で連絡すればよいですか?

A. 月1回程度の定期的な状況確認が目安です。連絡はメールを主体とし、「早く戻ってきてください」のような言葉は避けて、「休職期間に関する確認」として事務的・中立的な文面にしてください。送付した内容と相手の返答はすべて保存し、記録として残しておくと安心です。頻度・文面・目的が適切であれば、ハラスメントとは評価されません。

Q. 就業規則がない(または休職規定がない)状態で、休職者が長期化しています。どうすればよいですか?

A. 就業規則(特に休職・復職規定)がない場合、期間満了による自然退職の根拠が曖昧になり、会社側のリスクが高まります。現在のケースへの対応と並行して、早急に就業規則の整備を進めることをお勧めします。現状の対応方針については、社会保険労務士や専門機関への相談が最も確実です。

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