メンタル不調社員の家族から「そっとして」と言われたら確認すべき3つのこと

メンタル不調社員の家族から「そっとして」と言われたら確認すべき3つのこと メンタルヘルス対応
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「ご本人は今、静養に専念させたいので、会社からの連絡はしばらく控えていただけますか」——休職中の社員の家族からこう言われたとき、あなたはどう判断しますか。「家族の言うことなら従うべきだ」とすべての連絡を止めてしまう会社は少なくありません。しかしその判断が、後になって安全配慮義務違反と問われる可能性があることをご存じでしょうか。家族の気持ちを尊重しながらも、会社として守るべき線引きを正確に知っておくことが、社員と会社の両方を守ることになります。

「家族の要請だから対応を止めていい」は誤解である

家族から「そっとしておいてほしい」と言われても、会社の安全配慮義務は消えません。家族の要請は「配慮の方法を変えるリクエスト」として受け取るべきものであり、会社の法的義務を免除するものではないのです。

安全配慮義務は休職中も続いている

労働契約法第5条は、使用者に対して「労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務を課しています。この義務は雇用関係が継続している限り休職中も同様に存在します。「家族に止められたので何もしなかった」は、万が一のときに法的な免責事由にはなりません。

たとえば、休職中の社員が自傷・自殺に至った場合、「会社が適切な関与を怠った」として損害賠償を求められる事例は実際に起きています。判断の根拠となるのは「連絡を止めたかどうか」より、「なぜ止めたのか、その経緯と代替措置をきちんと記録しているかです。

家族は法的な「本人の代理人」ではない

ここで多くの会社が見落としがちな点があります。成年後見制度などの法的手続きが行われていない限り、家族は本人の法的代理人ではありません。つまり、家族が「連絡しないでほしい」と言っていても、それが本人の意思に基づいているかどうかは別問題です。

本人が「家族に窓口をお願いしたい」と同意しているケースもあれば、本人は会社との連絡を望んでいるのに家族が遮断しているケースもあります。この点を確認しないまま対応を止めることは、むしろ本人の意思を無視することになりかねません。

連絡を「種類」で分類する前に知っておくべき考え方

家族から「連絡しないでほしい」と言われたとき、すべての連絡を一律に止める必要はありません。連絡の性質によって、止められるものと止められないものがあります。まずここを整理することが実務対応の第一歩です。

業務上必要な通知とケア目的の連絡は別物

連絡には大きく分けて二種類あります。一つは会社として行う義務のある「業務上の通知」、もう一つは本人の状態を気遣う「ケア目的の連絡」です。

連絡の種類 具体例 家族要請で止められるか
業務上必要な通知 休職期間満了の予告、傷病手当金の手続き案内、給与明細の送付 基本的に止められない(書面での送付は継続)
状態確認・ケア目的 「体調はいかがですか」の定期電話・メール 頻度・手段の調整は可能
復職に向けた調整 復職可否の確認、職場復帰支援プランの案内 時期・方法の調整は可能

「連絡しない」ではなく「連絡の方法を変える」が現実的な対応

現実的な落とし所は、電話やメールの頻度を下げつつ、本人宛て書面(郵送)での通知は継続するという形です。書面は本人が必要なときに読むことができ、心理的負荷の少ない形で情報を届けられます。

就業規則や休職規程に「休職期間満了の30日前に書面で通知する」といった定めがある場合、その義務は家族の要請があっても履行する必要があります。社内規程の確認を怠ったまま対応を止めると、手続き上のトラブルに発展することもあります。

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確認すべき3つのこと

家族から「そっとしておいてほしい」と言われたとき、会社として必ず確認しておくべきポイントは3つあります。これを確認・記録しておくことが、社員の安全を守り、かつ会社のリスクを最小化することにつながります。

本人自身の意思の確認

まず最初に確認すべきは、「その要請が本人の意思に基づいているか」です。家族に対して「ご本人も同じように希望されているか確認させてください」と伝え、可能であれば本人からメールや手紙などで意思表示をもらうことを試みてください。

主治医が介在している場合は、主治医を通じて「会社との連絡の方法について本人に確認してほしい」と依頼するルートも有効です。本人の意思が確認できた場合は、その内容と日付を必ず記録します。

「止める連絡」と「継続する連絡」の線引き

次に確認すべきは、社内の休職規程・就業規則に定められた「会社として必ず行わなければならない通知」の内容です。規程を確認し、書面送付を継続するものをリストアップしてください。

産業医が選任されている会社(常時50人以上の事業場は選任義務あり)であれば、産業医に相談しながら連絡の方法を整理することができます。産業医がいない場合は、人事労務の専門家や外部の支援機関に確認することを検討してください。

家族との連絡内容の記録

最後に、家族とのやり取りをすべて記録することです。誰から、いつ、どのような要請があり、会社としてどう対応したかを文書化しておきます。口頭でのやり取りは後日「言った・言わない」の問題になりやすいため、可能であれば家族への返答もメール等の書面で行い、内容を残しておくことを推奨します。

記録は万が一のときの根拠になるだけでなく、復職に向けた対応の際に経緯を正確に引き継ぐためにも不可欠です。

状況が悪化したとき、会社に責任は生じるか

「家族に言われたから何もしなかった」という対応の後に社員の状態が悪化した場合、会社は無条件に免責されるわけではありません。ただし、適切なプロセスを踏んで記録していれば、リスクを大幅に軽減できます。

「何もしなかった」か「方法を変えた」かが分かれ目

法的なリスクという観点では、「家族に言われたから一切の関与を止めた」という対応は問題になりやすく、「家族の要請を受けて電話は控えたが、書面での通知は継続し、本人の意思も確認しようと試みた」という対応は評価されやすいです。

労働契約法や過去の裁判例においても、使用者の安全配慮義務違反が問われる際には「義務の存在を知っていたか」「合理的な措置を取ったか」が主要な判断基準となっています。

復職のタイミングで問題が表面化することがある

家族の要請に従って対応を止めていた場合、復職の段階でその空白が問題になることがあります。たとえば、「休職中に状態が悪化していたが会社が把握していなかった」ために復職判断が遅れたり、復職後に再び不調が生じてしまったりするケースです。

こうしたリスクを避けるためにも、家族の要請を受けた後も主治医からの定期的な情報提供(本人の同意を得た上で)を継続するよう努めることが重要です。復職支援プラン(職場復帰支援の手引き・厚生労働省)に沿った手順を踏んでいれば、対応の妥当性を説明しやすくなります。

社員規模・体制別の現実的な対応方針

会社の規模や体制によって、現実的に取れる対応の幅は異なります。自社の状況に合わせた方針を事前に決めておくことが、いざというときの迷いをなくします。

産業医・専門スタッフがいない場合の対応

常時50人未満の事業場では産業医の選任義務がなく、メンタルヘルス対応の専門知識を持つスタッフもいないことが多いです。この場合は、次の方針を基本線とするとよいでしょう。

  • 書面(郵送)による業務上の通知は継続する
  • 電話・メールによるケア目的の連絡は頻度を下げる(月1回程度の書面挨拶に変更するなど)
  • 家族との連絡内容はすべてメモ・メールで記録する
  • 本人の意思確認を書面で試みる(返答がなくても「試みた記録」を残す)
  • 対応方針に迷う場合は、外部の社労士や支援機関に相談する

就業規則・休職規程の整備状況を確認する

休職規程に「連絡・報告義務」「復職手続き」「休職期間満了の通知」などの規定がある場合、それらに沿った対応が基本です。規程がない・曖昧な場合は、今回のケースを機に整備することを検討してください。休職に関するトラブルの多くは、規程の不備や運用の不統一から発生しています。

「家族からの対応要請の判断」「本人の意思確認の進め方」など、個別のケースで判断に迷うことは少なくありません。対応に時間をかけすぎると、復職時期の決定や書面送付のタイミングに支障をきたすこともあります。

まとめ

家族から「そっとしておいてほしい」と言われたとき、会社がとるべき対応は「すべてを止める」でも「無視して連絡を続ける」でもありません。まず本人自身の意思を確認し、次に業務上必要な通知と任意のケア目的の連絡を分類し、そして対応のすべてを記録に残すこと——この3つのステップが、社員と会社の両方を守る実務の基本です。安全配慮義務は休職中も続いており、家族の要請はその義務を免除するものではないという点は、どの規模の会社にとっても共通する重要な認識です。

「判断に自信がない」「対応の手順を事前に決めたい」という場合は、ウェルセンス株式会社に相談することで、自社の状況に合わせた具体的な対応方針を整理できます。

よくある質問

Q. 家族から「一切の連絡を止めてほしい」と強く求められました。それでも書面送付は続けていいですか?

A. はい、続けてください。休職期間満了の予告・手続き案内・給与明細など、会社として行う義務のある通知は、家族の要請があっても停止することはできません。本人宛てに書面を郵送する形であれば、本人が必要なときに確認でき、心理的な負荷も比較的少ないためお勧めです。家族にはその旨を丁寧に説明し、「業務上必要な書面のみ送付する」と伝えると理解を得やすくなります。

Q. 本人の意思を確認しようとしたのに、家族が「本人には連絡させない」と言います。どうすればいいですか?

A. その場合は「本人の意思確認を試みたが、家族の意向によりできなかった」という経緯を記録しておくことが重要です。会社としては確認の意思を示したことを残しておくだけで、対応の妥当性は大きく変わります。また、主治医が関与している場合は、主治医を通じて本人の希望を確認できないか相談するルートも検討してください。強引に本人へ連絡することは控えつつも、記録と代替手段の探索は続けてください。

Q. 家族の要請に従って対応を控えていたら休職期間が満了してしまいそうです。どうしたらいいですか?

A. 休職期間満了の予告は、就業規則に定めた期間(例:満了の30日前)に書面で本人に通知する義務があります。この通知は家族の要請に関わらず行ってください。また、復職の可否判断には主治医の診断書と会社側の面談が必要です。時期が迫っている場合は、主治医への診断書依頼・復職面談の調整を書面で依頼し、その記録を残しておくことが大切です。対応に迷う場合は、社労士や専門機関への相談を早めに行うことをお勧めします。

Q. 家族との連絡記録はどのように残せばいいですか?

A. 電話での連絡は通話後すぐに日時・内容・相手の発言・会社の対応をメモとして残し、社内の担当者間で共有してください。可能であれば、電話の内容を確認するメールをその後送付し「本日お電話でお伝えした通り…」と書面化することで記録の信頼性が高まります。書面・郵送の場合は控えを保管し、送付日も記録します。記録は最低でも退職後3年(労働基準法上の保存義務に準じて)は保管することをお勧めします。

Q. 社員が20名ほどの小規模な会社ですが、休職に関する社内規程がありません。何から整備すればいいですか?

A. まず優先すべきは「休職規程」の整備です。休職期間の上限・延長の可否・休職中の連絡方法・復職手続きの流れ・期間満了時の取扱いを定めることで、今回のような「家族から連絡拒否を求められた場合」の対応も規程に基づいて説明できるようになります。次に、厚生労働省が公開している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を参考に、復職支援の手順を整理することをお勧めします。規程の作成には社労士のサポートを受けると効率的です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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