社員の家族から連絡が来たら、どう対応すべきか

社員の家族から連絡が来たら、どう対応すべきか メンタルヘルス対応
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「社員の奥様から電話があって、『夫が最近おかしい、会社での様子を教えてほしい』と言われたんですが、どう対応すればよかったんでしょう……」。このような相談は、専任人事のいない中小企業では珍しくありません。突然の家族からの連絡に、何をどこまで話してよいのか、本人に伝えるべきなのか、記録はどう残すのか——判断軸がないまま、担当者が一人で抱え込んでしまうケースが後を絶ちません。この記事では、家族から連絡が来たときの対応の原則と、実務的な判断基準をわかりやすく解説します。

家族からの連絡への対応で最初に押さえるべき2つのポイント

家族であっても「第三者」である

社員の配偶者や親から連絡が来ると、「家族なら話しても大丈夫」と感じる方は多いです。しかし法律の観点では、社員本人以外はすべて「第三者」に該当します。個人情報保護法第27条は、本人の同意なく個人情報を第三者に提供することを原則として禁止しています。家族であっても例外ではありません。

特に注意が必要なのは、社員の勤務状況・評価・メンタルヘルスに関する情報です。これらは「要配慮個人情報」(同法第2条第3項)として、通常の個人情報よりも厳格な管理が求められます。「心配してくれている家族だから」という親切心が、後に情報漏洩トラブルや本人からの苦情につながるリスクがあることを認識しておきましょう。

成人社員に対して家族は法的な代理権を持たない

「家族が休職させてほしいと言っているから、手続きを進めよう」——この判断には落とし穴があります。成人である社員に対して、配偶者や親は原則として法的な代理権を持ちません。後見人・保佐人として家庭裁判所に認められた場合を除き、家族の意向だけで会社が動くことは、本人の意思・権利を侵害する可能性があります。

労働契約法第5条に定める「安全配慮義務」も、本人の意思と尊厳を尊重した上で行うことが前提です。家族が心配しているからといって、本人への確認なしに人事上の措置を取ることは、善意であっても問題になりえます。

家族からの連絡で社員情報をどこまで話してよいか

「傾聴・記録・判断保留」を基本姿勢にする

家族から電話があった場合、担当者がまず心がけるべきは「話を聞くが、情報は提供しない」というスタンスです。具体的には、相手の話をしっかりと傾聴し、情報を受け取った事実を記録します。ただし、こちらから社員の勤務状況・評価・健康状態などを伝えることは行いません。

「最近、職場でどんな様子ですか?」と聞かれた場合でも、「本人のプライバシーに関わる情報については、ご本人に確認なくお伝えすることができない規程となっています」と丁寧に伝えるだけで構いません。この一言を事前に準備しておくだけで、担当者の心理的負担はかなり軽減されます。

DV加害者からの情報収集である可能性を忘れない

配偶者からの「夫(妻)の様子を教えてほしい」という連絡は、DV(家庭内暴力)の加害者が被害者の居場所や勤務状況を把握しようとするケースである可能性も排除できません。配偶者暴力防止法(DV防止法)の観点からも、本人の住所・シフト・職場の部署名などを家族であっても安易に開示しないことが重要です。

実際に、「配偶者から会社に電話がかかってきて、出退勤時間を教えてしまった結果、帰り道で待ち伏せされた」という事案は起きています。「家族だから大丈夫」という思い込みを持たず、本人確認を経ない情報提供は原則として行わない、という方針を組織として共有しておくことが必要です。

本人に「家族から連絡があった」と伝えるべきか

原則は「本人への報告」が基本

家族から連絡があったことは、原則として本人に伝えることが望ましいです。理由は二つあります。一つは、本人が自分についての情報管理をコントロールできるようにするため。もう一つは、家族と会社が本人の知らないところで情報を共有することで、本人の信頼を損なうリスクを避けるためです。

伝え方のポイントは「事実のみ、淡々と」です。「お母様からお電話をいただきました。ご連絡があったことをお伝えしておこうと思いまして」という程度で十分です。内容を詳しく説明する必要はなく、連絡があった事実を知らせる形で問題ありません。

報告を慎重にすべき例外的なケース

一方で、本人への報告を慎重にすべき状況も存在します。たとえば、連絡してきた家族がDV加害者である可能性がある場合、または家族関係に深刻な確執があることが事前にわかっている場合です。このようなケースでは、報告すること自体が本人にとってのストレス要因になりかねません。

判断が難しい場合は、担当者一人で結論を出さず、上長や産業医・外部の専門機関に相談することを強くお勧めします。「どちらが正解か」を一人で抱え込む必要はありません。組織として判断する体制を作ることが、担当者を守ることにもなります。

自傷・自殺リスクなど緊急事態への対応フロー

緊急性の判断を最初に行う

「本人がリストカットをしている」「死にたいと言っている」「大量の薬を手元に持っている」——このような情報を家族から受け取った場合、通常の対応フローとは別の「緊急対応」に切り替える必要があります。まず最初に行うべきは、緊急性の有無の判断です。

緊急性が高い(今すぐ生命の危険がある)場合は、救急や警察への連絡が必要になります。緊急性はやや低いが深刻な場合(継続的な自傷行為など)は、産業医や外部の専門機関への相談を優先します。この判断基準を事前に整備しておかないと、担当者が混乱し、対応が遅れるリスクがあります。

個人情報保護法の「緊急時例外」を知っておく

通常は本人の同意なく情報を共有することはできませんが、個人情報保護法第18条・第27条には「人の生命・身体・財産の保護のために必要な場合」の例外規定が設けられています。自殺リスクなどの緊急事態では、本人の同意を得られない状況であっても、産業医・医療機関・家族との間で必要な情報共有を行うことが法的に許容される場合があります。

ただし、この例外はあくまで「緊急かつ必要な範囲」に限られます。「なんとなく心配だから」という理由でこの例外を使うことはできません。緊急時に正確に動けるよう、判断基準と連絡ルートを事前にリスト化しておくことが重要です。

情報は担当者個人ではなく「組織」として管理する

家族から受け取った情報(特に緊急性のある情報)は、担当者のメモや個人メールで管理するのではなく、組織として記録・管理することが必要です。記録には、連絡日時・連絡者(続柄)・連絡内容・対応した担当者・その後の対応方針を残します。

この記録は「個人情報」として管理し、アクセスできる人を限定することも重要です。「誰でも見られる共有フォルダに置いておく」「チャットに書き込む」といった管理方法は避け、人事担当者や経営者など、必要な関係者のみがアクセスできる形で保管してください。

社内に整備しておきたい「家族対応ガイドライン」の最低限の要素

担当者が迷わない「対応スクリプト」を用意する

家族から突然電話があったとき、担当者が一番困るのは「何を言えばいいかわからない」という状況です。この問題を解消するために有効なのが、あらかじめ用意しておく「対応スクリプト」です。

スクリプトには最低限、次の内容を盛り込みます。まず最初に「ご連絡いただきありがとうございます」という受け答えの文言、次に「本人のプライバシーに関わる情報についてはお伝えが難しい旨」の説明、そして「後日、担当者から改めてご連絡する場合がある旨」の案内です。これだけでも、担当者の心理的負担は大きく減ります。

「緊急連絡先リスト」と「エスカレーションルート」を事前に決める

緊急事態が発生したとき、「誰に連絡すればいいか」がわからないと初動が遅れます。社内で事前に決めておくべき項目は、産業医または提携する医療機関の連絡先、警察・救急の連絡判断基準、経営者または上長へのエスカレーションタイミング、外部EAP(従業員支援プログラム)の連絡方法——の4点です。

これらをA4一枚にまとめて、人事担当者のデスクや社内イントラに保管しておくだけで、緊急時の対応スピードが大きく変わります。「いざとなれば何とかなる」ではなく、「事前に決めておく」ことが担当者と社員を守る最大の備えです。

まとめ

社員の家族から連絡が来たとき、担当者が一人で「どこまで話していいか」「本人に伝えるべきか」を判断するのは、非常に難しい状況です。基本的な原則は「情報を提供しない・傾聴にとどめる」「本人の同意なく動かない」「組織として記録・管理する」の三点です。緊急時には法的な例外規定があるものの、平時からフローを整備しておかなければ、いざというときに機能しません。

中小企業の経営者や兼務人事担当者は、日々の業務と並行して人事対応をされているため、こうした突発的な判断に迷うことは珍しくありません。ウェルセンス株式会社では、家族対応ガイドラインの整備から緊急時プロトコルの設計まで、中小企業の実態に合わせた支援を行っています。「うちはまだ整備できていない」と感じた方は、まずは気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 社員の親から「うちの子の勤怠状況を教えてほしい」と電話がありました。答えてもいいですか?

A. 原則として、本人の同意なく勤怠情報を家族に提供することは個人情報保護法の観点からリスクがあります。「本人のプライバシーに関わる情報のため、直接ご本人にご確認いただけますでしょうか」と丁寧にお断りするのが適切な対応です。

Q. 配偶者から「夫を休職させてほしい」という要望がありました。手続きを進めてもいいですか?

A. 成人の社員に対して、配偶者は法的な代理権を持ちません。まず本人の意思を直接確認することが必要です。家族の意向だけで休職手続きを進めることは、本人の権利侵害になる可能性があります。本人と面談の機会を設け、意思を確認した上で対応を検討してください。

Q. 家族から「本人が死にたいと言っている」と連絡がありました。どう動けばよいですか?

A. まず緊急性を判断してください。今すぐ生命の危険がある場合は救急・警察への連絡を検討します。緊急度がやや低い場合でも、産業医や外部専門機関へ速やかに相談することが必要です。このような緊急事態では、個人情報保護法の例外規定により、本人同意なしの情報共有が法的に許容される場合があります。一人で抱え込まず、組織として対応することが重要です。

Q. 家族から連絡があったことを、本人に伝えるべきですか?伝えると関係が悪化しそうで迷っています。

A. 原則として本人に伝えることが望ましいです。本人の知らないところで家族と会社が情報を共有すると、後に信頼関係が損なわれるリスクがあります。伝える際は「お電話をいただいたことをお伝えしておきます」という事実ベースの報告にとどめ、内容を詳細に話す必要はありません。ただし、DV被害の可能性など特別な事情がある場合は、専門家に相談した上で判断してください。

Q. 家族対応のガイドラインを整備したいのですが、何から始めればいいですか?

A. まず最初に「情報を提供しない・傾聴にとどめる」という基本方針を担当者間で共有することから始めましょう。次に、緊急時の連絡先リスト(産業医・救急・警察・経営者)を一枚にまとめて保管することをお勧めします。対応スクリプトや記録様式の整備まで含めると作業量が増えますので、ウェルセンス株式会社のような外部の専門機関に相談しながら進めるのが効率的です。

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【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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