「ストレスチェックをやらなければいけないらしいけど、うちは50人未満だからどうなんだろう……」。最近、そんな声を経営者や兼務の人事担当者からよく聞きます。外部委託を検討しても、EAP・社労士・健診機関とさまざまな選択肢があり、費用感もつかめず、結果的に後回しになってしまう。この記事では、50人未満企業がストレスチェックを外部委託する際に必要な知識を、実務の流れとともにわかりやすく整理します。
50人未満でもストレスチェックは必要か
結論からお伝えすると、50人未満の事業場はストレスチェックの「努力義務」にあたります。義務ではありませんが、「やらなくてよい」とは異なります。法律の趣旨と中小企業における現実的なリスクを理解したうえで、実施を検討してください。
法律上の位置づけを正確に知る
労働安全衛生法第66条の10では、常時使用する労働者が50人以上の事業場に対してストレスチェックの実施を義務付けています。一方、50人未満の事業場については同法附則第4条により「当面の間は努力義務」とされており、行政への報告義務もありません。ただし、いったん実施した場合は記録を5年間保存する義務(労働安全衛生規則第52条の13)が生じる点に注意が必要です。
「努力義務だから不要」と判断するリスク
法的義務がないとはいえ、従業員20~50名規模の企業でも職場のストレスが原因で休職・離職が発生するリスクはあります。むしろ人員に余裕がないため、一人が抜けた際の業務影響が大きく、早期発見・早期対応の重要性は大企業以上ともいえます。また、採用活動や取引先からの評価として「メンタルヘルス対策の実施有無」が問われる場面も増えてきています。
産業医がいない会社の現実
50人未満の事業場は産業医の選任も努力義務です。社内に医師・保健師などの有資格者がいないケースがほとんどであり、これがストレスチェックの「実施者」要件(労働安全衛生規則第52条の10:医師・保健師・一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士)を社内で満たせない理由です。だからこそ外部委託が現実的な選択肢になります。
外部委託機関の種類と特徴を比べる
ストレスチェックを外部委託できる機関は大きく3種類あります。それぞれ強みが異なるため、自社の状況や優先したいサポート内容に合わせて選ぶことが重要です。
EAP(従業員支援プログラム)提供会社
EAPとは、従業員のメンタルヘルス支援を専門とするサービスの総称です。ストレスチェックの実施から高ストレス者へのカウンセリング、職場改善の提案まで一気通貫で対応できる会社が多く、実施後の「高ストレス者対応」まで見据えたい企業に向いています。費用は他の選択肢と比べてやや高めになる傾向がありますが、チェック後のフォローまで含めたパッケージを選べる点がメリットです。
社会保険労務士(社労士)事務所
労務管理の専門家である社労士がストレスチェック 50人未満 外部委託を取り扱うケースも増えています。すでに給与計算や就業規則の作成を依頼している社労士がいれば、日頃の会社の状況を把握したうえで対応してもらえるため、連携がスムーズです。ただし、社労士自身が「実施者」の資格(医師・保健師等)を持っているわけではなく、実施者との連携体制がどのように組まれているかを確認する必要があります。
健診機関・クリニック
定期健康診断を実施している健診機関やクリニックがストレスチェックをセットで提供するサービスです。医師や保健師が在籍しているため実施者要件を満たしており、健診との同時実施で従業員の負担を減らせる点がメリットです。一方、メンタルヘルス相談やカウンセリングなどの継続的なフォローは別途手配が必要なケースが多いです。
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費用相場と契約時の確認ポイント
外部委託の費用は「1人あたりの単価×対象従業員数」で算出されるのが一般的です。相場感と契約内容の確認事項を事前に把握しておくことで、見積もり比較がスムーズになります。
費用の目安と内訳
一般的な費用の目安は、1人あたり数百円~数千円程度と幅があります。安価なプランはオンラインのシステム利用料のみで、集計・結果通知・記録保存は自社対応が前提のケースがあります。一方、高価なプランには実施者費用・高ストレス者への面接指導・集団分析レポートの作成・記録5年保存代行などが含まれます。「何が含まれているか」を必ず確認してください。
見積もり比較で必ず聞く5項目
- 実施者(医師・保健師等)は誰が担当するか
- 使用する調査票は何か(国推奨の「職業性ストレス簡易調査票57項目版」かどうか)
- 高ストレス者への面接指導はプランに含まれるか、別途費用か
- 記録の5年保存はどちらが行うか(委託先か自社か)
- 集団分析レポートは提供されるか、対象人数の下限は何人か
契約スコープの落とし穴
ストレスチェックで高ストレス者が判定された場合、会社は医師による面接指導を実施する努力義務を負います(50人未満の場合)。しかし、安価なプランでは「集計・結果通知まで」しか含まれておらず、高ストレス者が出た後の対応を別途手配しなければならないケースがあります。実施後の対応まで含めた総コストで比較することを強くおすすめします。
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個人情報とプライバシーの扱いを理解する
「結果が会社に筒抜けになるのでは」という従業員の不安を解消しないと、回答率が下がりチェックの精度が落ちます。ルールを正確に把握し、従業員に説明できる状態にしておくことが担当者の重要な役割です。
個人の結果を会社が見ることはできない
労働安全衛生規則第52条の12により、本人の同意なく事業者(会社)に個人の結果を提供することは禁止されています。チェックの結果を受け取るのは実施者(外部機関の医師・保健師等)であり、会社の担当者や経営者が個人の回答内容を見ることはできません。この点を従業員に周知することが、回答率向上に直結します。
集団分析の「特定リスク」に注意する
部署単位の集計結果(集団分析)は会社に提供できますが、集団のサイズが小さい場合は個人が特定されるリスクがあります。一般的に10人未満のグループの結果は開示されない運用が多く、20~30名規模の会社では部署によってはほぼ全社集計しか得られないケースもあります。外部機関に事前に確認し、期待値を合わせておきましょう。
記録保存の責任は誰が持つか
実施した記録は5年間保存する必要があります(労働安全衛生規則第52条の13)。外部委託の場合、委託先が保存するのか自社が保存するのかは契約によって異なります。「50人未満だから行政への報告は不要」は正しいですが、「報告不要=記録不要」ではありません。契約終了時にデータが削除されてしまわないよう、保存責任の所在を契約書で明確にしてください。
実施の流れを把握する
ストレスチェックの実施は「回答させるだけ」ではなく、複数のステップが連続するプロセスです。全体の流れを把握することで、外部機関への委託範囲と社内での対応範囲を切り分けられます。
実施前に会社が準備すること
まず、実施方針・目的・個人情報の取り扱いについて従業員に事前説明を行います。次に、外部機関と委託契約を締結し、対象者リストを提出します。オンライン実施の場合はアカウント発行や案内メールの送付を外部機関が行うケースが多いですが、案内文の内容確認や送付タイミングの調整は担当者が行います。
実施中・実施後の流れ
| フェーズ | 主な作業 | 担当 |
|---|---|---|
| 回答収集 | 従業員がオンラインまたは紙で回答 | 外部機関が管理 |
| 集計・判定 | ストレスレベルの判定・高ストレス者の抽出 | 外部機関(実施者) |
| 結果通知 | 個人への結果フィードバック | 外部機関→本人 |
| 面接申出対応 | 高ストレス者が希望した場合、医師面接を手配 | 会社+外部機関 |
| 集団分析・報告 | 部署別の集計結果を会社に提供 | 外部機関→会社 |
| 記録保存 | 実施記録を5年間保管 | 契約による |
高ストレス者が出た後の対応を想定しておく
高ストレス者が面接指導を希望した場合、会社は医師による面接を実施する必要があります(50人未満は努力義務)。面接後には就業上の措置(業務軽減・配置転換など)を検討する流れになります。外部委託先が面接指導まで一括対応できるかどうかを事前に確認し、対応できない場合は産業医や地域の医療機関との連携経路を別途用意しておくと安心です。
高ストレス者への対応まで含めた包括的なサポートは、人事と医療の両面から検討することが重要です
まとめ
50人未満の事業場でのストレスチェックは義務ではありませんが、従業員のメンタルヘルスリスクや採用・取引への影響を考えると、実施を検討する価値は十分にあります。外部委託の機関選びでは、EAP・社労士・健診機関の特徴を比べつつ、「実施者の資格要件を満たしているか」「高ストレス者対応まで含まれるか」「記録保存の責任はどちらか」を必ず確認してください。費用の安さだけで選ぶと、実施後の対応で予想外の負担が生じることがあります。
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よくある質問
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