産前産後休業の出勤率計算、3つの手順で正しく算定する方法

産前産後休業の出勤率計算、3つの手順で正しく算定する方法 労務管理
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「産前産後休業や育児休業の期間って、出勤率の計算に入れていいんですか?」——復職したパート社員の有給休暇を付与しようとしたとき、こんな疑問が生じることがあります。専任の人事担当者がいない職場では、誰にも確認できないまま「休んでいた期間だからゼロにしておこう」と処理してしまいがちです。しかし、これは法律違反になりかねない重大なミスです。この記事では、産前産後休業・育児休業期間を含む出勤率の正しい計算方法を、パートタイム社員の事例も交えながら解説します。

出勤率80%ルールとは何か

年次有給休暇を付与するには、直近の算定期間(原則1年間)における出勤率が80%以上であることが条件です。これは正社員・パート問わずすべての労働者に適用されます。

有給休暇の付与に必要な2つの条件

有給休暇の付与には、「継続勤務」と「出勤率80%以上」の2つの条件を同時に満たす必要があります。継続勤務年数によって付与日数が決まり、出勤率がその付与の可否を左右します。この2つは別々の判定であることを押さえておいてください。「日数の計算(比例付与)」と「付与するかどうかの判定(80%ルール)」を混同している担当者が多いため、まずここを整理することが重要です。

出勤率の計算式

出勤率は以下の式で計算します。

項目 内容
分母(全労働日数) 所定労働日数から、会社都合の休業日・天災等やむを得ない休業日を除いた日数
分子(出勤日数) 実際の出勤日数+「出勤したものとみなす日数」

たとえば、年間の所定労働日数が200日のパート社員が、実際に160日出勤していたとすると、出勤率は160÷200=80%となり、ちょうど付与基準を満たします。ここに産前産後・育休期間がどう関わるかが次のポイントです。

パートタイム社員も同じルールが適用される

「パートは別扱いでは?」と思われるかもしれませんが、出勤率80%の判定ルールは雇用形態を問わず同じです。異なるのは付与日数の計算方法(比例付与)であり、出勤率の算定ルール自体は正社員と同一です。週3日勤務のパートも、週4日勤務のパートも、出勤率の計算構造は変わりません。

産前産後・育休期間は「出勤したものとみなす」

産前産後休業・育児休業の期間は、法律上、出勤率の計算において「出勤したものとみなす」と定められています。休んでいた期間であっても、出勤日数に算入しなければなりません。

労働基準法が定める強行規定

根拠は労働基準法第39条第10項です。同条項は、産前産後休業(第65条)・育児介護休業法に基づく育児休業・介護休業・子の看護休暇の取得期間を、出勤率の算定において出勤したものとみなすよう使用者に義務づけています。これは強行規定であり、就業規則でこれを下回る定めをしても無効です。「育休中だから有給を付与しない」と規定している就業規則は法的に効力を持ちません。

みなし出勤が適用される休業の種類

以下の休業・休暇期間が、出勤率の計算において「出勤扱い」になります。

  • 産前休業(出産予定日前6週間、多胎妊娠の場合は14週間)
  • 産後休業(出産後8週間)
  • 育児休業(原則子が1歳まで、最長2歳まで延長可)
  • 介護休業
  • 子の看護休暇
  • 業務上の傷病による休業
  • 年次有給休暇取得日

「欠勤」扱いになるのは、私傷病による休職や、正当な理由のない無断欠勤などです。産前産後・育休はこれらとは明確に区別されます。

「分母」からも除外できるケースがある

産前産後・育休期間のうち、所定労働日に当たる日は原則として分母(全労働日数)に含まれます。ただし、会社の都合による休業日や天災等のやむを得ない事由による休業日は分母から除外できます。産前産後・育休期間を「欠勤」として分母に入れたまま分子からは外す——という誤処理が最も多い法違反パターンです。正しくは、分子(出勤日数)に「みなし出勤日数」として算入します。

出勤率を正しく計算する3つの手順

産前産後休業を含む出勤率の計算は、手順を踏めば確実に処理できます。まず「全労働日数(分母)」を確定し、次に「出勤日数(分子)」を確定し、最後に割り算して判定するという流れです。

全労働日数(分母)を確定する

算定期間(通常、有給休暇の基準日から遡った1年間)における所定労働日数を数えます。そこから会社都合の休業日・天災等による休業日を差し引いた日数が分母です。産前産後・育休期間中の所定労働日は、この分母に含めたままにします(除外しません)。

たとえば週3日勤務のパート社員の場合、年間の所定労働日数はおよそ156日(52週×3日)です。会社都合の休業が2日あれば、分母は154日になります。

出勤日数(分子)を確定する

実際に出勤した日数に、みなし出勤日数を加算します。みなし出勤日数とは、産前産後休業・育児休業期間のうち、その社員の所定労働日に当たる日数です。

具体例を示します。週3日勤務のパート社員Aさんが、産前6週間(42日)+産後8週間(56日)の計98日間、産前産後休業を取得したとします。週3日勤務の場合、98日間のうち所定労働日はおよそ42日(98日×3/7で概算)です。この42日がみなし出勤日数となり、実際の出勤日数に加算します。

仮に実際の出勤日数が80日であれば、分子は80+42=122日となります。

出勤率を計算して80%を判定する

分子÷分母で出勤率を算出します。上記の例では、122÷154=約79.2%となります。この場合、80%をわずかに下回りますが、ここで「みなし出勤日数を入れ忘れていた」場合はどうなるでしょうか。みなしを除いた場合の分子は80日のみとなり、80÷154=約51.9%です。みなし処理の有無で、付与可否の判定が大きく変わることがわかります。

80%を満たした場合は有給休暇を付与します。80%未満の場合は付与義務は生じませんが、産前産後・育休期間のみなし処理を正しく行ったうえで判定することが前提です。

パート社員の場合、このみなし処理が複数人いると個別計算が必須になります。計算漏れや誤処理が起こりやすいので、不安な場合は早めに専門家に相談することをおすすめします。

パートタイム社員の付与日数(比例付与)の確認

出勤率80%以上が確認できたら、次にパートタイム社員の付与日数を確定します。週の所定労働日数・年間の所定労働日数と継続勤務年数の組み合わせで、比例付与の日数が決まります。

比例付与が適用される社員の条件

週の所定労働日数が4日以下、かつ年間所定労働日数が216日以下の場合に比例付与が適用されます。週5日以上または年間217日以上の場合は、正社員と同じ付与日数テーブルが適用されます。週4日勤務でも年間217日以上になるケースは比例付与の対象外となるため、日数の確認が必要です。

週の所定労働日数が変動している場合の対応

育休前と復職後で勤務日数が変わっているパート社員は珍しくありません。この場合、付与日数の算定基準は「有給休暇の基準日時点の所定労働日数」を原則として参照します。ただし、算定期間中に変更があった場合の取り扱いは実務上の判断が求められる場面もあるため、不明な点は社会保険労務士に確認することをおすすめします。

継続勤務年数の計算に育休期間を含める

育児休業期間は、付与日数を決める「継続勤務年数」のカウントからも除外されません。産休・育休中も雇用契約は継続しているため、勤務年数は通算されます。「育休から復職したから勤続年数をリセットする」という取り扱いは誤りです。

よくある誤処理と対処法

産前産後・育休期間の出勤率計算でよく起こるミスは、大きく3パターンに分けられます。いずれも「知らなかった」では済まない法令違反につながるため、自社の処理を点検してください。

産前産後・育休期間を欠勤扱いにしている

最も多い誤処理です。出勤率の計算において、産前産後・育休期間中の所定労働日を分子に含めず、出勤率を実態よりも低く計算してしまうケースです。正しくは、その期間の所定労働日数をみなし出勤日数として分子に加算します。過去の処理が誤っていた場合、さかのぼって有給休暇を付与する必要が生じることがあります。

育休復職後の付与タイミングを見落としている

有給休暇の基準日管理(入社日基準か統一基準日か)によって、育休から復職した社員への付与タイミングが変わります。統一基準日を設けている会社の場合、復職日と基準日がずれていると、付与が遅れたり漏れたりするリスクがあります。復職が決まった時点で基準日と付与予定日を確認し、個別にスケジュールを立てておくことが重要です。

就業規則に誤った記載がある

「育児休業期間中は有給休暇を付与しない」「産前産後休業は欠勤とみなす」といった記載が就業規則に残っているケースがあります。これらは労働基準法第39条第10項に反し、無効です。規定が無効であっても、誤った運用が続いていれば実質的な法違反となります。就業規則の該当箇所を確認し、必要であれば修正・届出を行ってください。

自社の計算方法や就業規則に不安がある場合は、人事労務のプロに一度見てもらうことで、トラブルを未然に防げます。

まとめ

産前産後休業・育児休業の期間は、労働基準法第39条第10項に基づき、出勤率の計算において「出勤したものとみなす」ことが法律上の義務です。正社員・パートタイム社員を問わず、この処理を省略することは法令違反にあたります。出勤率の正しい計算は、まず全労働日数(分母)を確定し、次に実際の出勤日数にみなし出勤日数を加えた分子を確定し、最後に80%以上かどうかを判定するという手順で進めます。80%を満たした場合は、パートタイム社員であれば比例付与テーブルに従って日数を決定します。

自社の過去処理に不安がある場合、あるいはパート社員が複数おり契約形態がバラバラで個別対応が難しい場合は、人事労務の専門家に相談することで安心が得られます。ウェルセンス株式会社では、中小企業の人事労務課題について実務に即したサポートを提供しています。「うちのケースではどうすればいい?」という具体的なご質問にも対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 産前産後休業の期間は分母(全労働日数)から除外するのですか、それとも分子(出勤日数)に加算するのですか?

A. 産前産後休業期間中の所定労働日は、分母(全労働日数)には含めたまま、分子(出勤日数)にみなし出勤日数として加算します。分母から除外するのは「会社都合の休業日」や「天災等やむを得ない休業日」であり、産前産後休業はこれに該当しません。「除外」と「加算」を混同すると計算結果が大きく狂うため注意が必要です。

Q. 週3日勤務のパート社員が1年間のうち産前産後休業で4か月休んでいました。有給休暇は付与しないといけませんか?

A. 産前産後休業期間のうち所定労働日に当たる日数を「みなし出勤日数」として分子に加算したうえで、出勤率を計算してください。その結果が80%以上であれば、有給休暇を付与する義務があります。産前産後休業を欠勤扱いにして出勤率を低く算定し、有給を付与しないことは法令違反です。

Q. 育児休業期間は継続勤務年数に含まれますか?付与日数の計算に影響しますか?

A. 育児休業期間中も雇用契約は継続しているため、継続勤務年数のカウントに含まれます。育休から復職した社員の付与日数は、育休前の勤続年数も通算して計算します。「育休中は勤続年数が止まる」という考え方は誤りです。

Q. 就業規則に「育児休業期間は有給休暇を付与しない」と書いてあります。この規定は有効ですか?

A. 無効です。労働基準法第39条第10項は強行規定であり、就業規則でこれを下回る定めをしても法的効力を持ちません。該当の条文は速やかに修正し、労働基準監督署への変更届出を行うことをおすすめします。誤った規定を根拠に有給を付与しないでいた場合、過去にさかのぼって付与義務が生じる可能性があります。

Q. 産前産後休業から復職したパート社員の有給休暇の付与タイミングはいつですか?

A. 付与タイミングは、会社が採用している基準日管理の方法によって異なります。入社日を基準日としている場合は入社日の応当日に付与し、全社統一の基準日を設けている場合はその基準日に付与します。育休からの復職日と基準日がずれる場合は、付与漏れが生じやすいため、復職が決まった段階で付与予定日を個別に確認しておくことが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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