慶弔休暇は法律で決まっていない|相場日数と規程の作り方5つのポイント

慶弔休暇は法律で決まっていない|相場日数と規程の作り方5つのポイント 労務管理
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「慶弔休暇って、法律で決まっているんですか?」——採用面接で求職者に聞かれて、答えに詰まった経験はありませんか。あるいは、従業員のご家族が亡くなったとき、何日休ませればいいか迷ったことは。専任の人事担当者がいない中小企業では、慶弔休暇の扱いが「なんとなくの前例」で回っているケースが少なくありません。この記事では、慶弔休暇の法的な位置づけ、日数の相場、そして規程を整備するときに押さえるべき5つのポイントをわかりやすく解説します。

慶弔休暇に「法的義務」はない

結論からお伝えすると、慶弔休暇(忌引休暇とも呼ばれます)の付与を直接義務づける法律は存在しません。年次有給休暇のように「与えなければ違法」とはならない、任意の制度です。ただし、「義務がないから何もしなくていい」ということにはなりません。

慶弔休暇は「法定外休暇」にあたる

労働基準法第39条が定める年次有給休暇は「法定休暇」と呼ばれ、要件を満たした従業員には必ず付与しなければなりません。一方、慶弔休暇は会社が自主的に設ける「法定外休暇」に分類されます。設けるかどうか、何日にするか、有給にするか無給にするか、すべて会社が自由に決めることができます。

規程に書いた瞬間、会社の義務になる

「任意だから書かなくていい」と思われがちですが、実は逆です。就業規則や慶弔休暇規程に定めた内容は、労働契約法第7条により労働契約の内容となり、会社はその内容を守る義務を負います。「規程には5日と書いてあるのに3日しか認めなかった」という状況は、契約違反になりえます。設ける以上は、しっかり明文化することが前提です。

就業規則への記載が必要になるケース

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています。慶弔休暇を設けている場合、同法第89条第10号(「その他の休暇に関する事項」)に該当するため、就業規則への記載が必要です。「口約束で運用してきた」「規程がない」という状態は、労基署の調査・指導の対象になりえます。従業員が10人未満であっても、書面で明確にしておくことはトラブル防止の観点から強く推奨されます。

慶弔休暇の日数「相場」はどのくらいか

日数に法的な決まりはないため、自社で設計する必要があります。ただし、あまりにも一般的な水準とかけ離れていると、採用・定着の面で不利になることもあります。厚生労働省「就労条件総合調査」をはじめとする各種調査で、多くの企業が設定している水準の目安が公表されています。

よく見られる付与日数の目安

対象イベント よく見られる日数の目安
本人の結婚 3〜5日程度
子の結婚 1〜2日程度
配偶者・子の死亡 3〜5日程度
父母(実父母・養父母)の死亡 3〜5日程度
祖父母・兄弟姉妹の死亡 1〜3日程度
配偶者の父母の死亡 1〜3日程度

これはあくまで目安であり、業種・会社規模・社風によって異なります。自社の状況に合わせて設計することが前提です。

「関係が遠いほど日数を短く」が基本的な考え方

日数を設計するときの基本的な考え方は、「故人との関係が近いほど日数を多く、遠いほど少なく」です。配偶者や子、実父母は最も近い関係として3〜5日程度を設ける企業が多く、祖父母や兄弟姉妹、配偶者の親は1〜3日程度が多く見られます。「配偶者の祖父母・兄弟姉妹」については、規程に含めない会社もあれば、1日程度とする会社もあり、対応は分かれます。どこまでを対象とするかは、後述の「対象範囲の決め方」で整理します。

日数に迷ったときの実務的な判断基準

日数を決める際には、「葬儀の準備・参列・後片付けにかかる実際の日程」を基準にするとブレが出にくくなります。遠方への移動が必要なケースも考慮して、配偶者・実父母クラスは5日程度を設ける会社も増えています。また、土日祝日を日数に含めるかどうか(「暦日」か「営業日」か)も規程に明記しておく必要があります。含め方によって実質的な日数が大きく変わるため、ここを曖昧にしておくとトラブルの原因になります。

規程を作るときの5つのポイント

慶弔休暇規程を整備するうえで、押さえるべきポイントは大きく5つあります。どれか一つでも欠けると、後から「言った・言わない」や「不公平だ」という問題が起きやすくなります。

対象となるイベントと続柄を明確にする

まず最初に、どのイベントを慶弔休暇の対象とするかを列挙します。「慶」の側では本人の結婚、子の結婚が一般的です。「弔」の側では、配偶者・子・父母・祖父母・兄弟姉妹・配偶者の父母などを対象にするケースが多く見られます。ここで重要なのは、「配偶者の祖父母」「配偶者の兄弟姉妹」を含めるかどうか、「養父母・継父母」を実父母と同扱いにするかどうかなど、判断が分かれやすいケースを事前に決めておくことです。決めておかないと、そのつど対応が変わり、従業員間の不公平感につながります。

有給か無給かを必ず明記する

次に確認すべきは、慶弔休暇を「有給」とするか「無給」とするかです。法律上はどちらでも構いませんが、規程に明記しておかないと、後で「給与が引かれた」というトラブルが起きます。多くの企業は有給扱いとしており、採用競争力の観点からも有給で設計するのが現実的です。有給と定めた場合は、通常の賃金(基本給ベースが一般的)を支払う必要があります。年次有給休暇とは別個の休暇として設計し、「慶弔休暇は年次有給休暇の消化とは別に取得できる」と明示しておくことが重要です。

取得の申請方法と証明書類を定める

慶弔休暇を取得する際に必要な手続きも規程に盛り込みましょう。例えば、「死亡の場合は忌引きの事実を証明できる書類(会葬礼状・死亡診断書の写し等)を提出すること」と定めておくと、不正取得のリスクを抑えられます。また、「いつまでに申請するか」(緊急の場合は事後申請を認めるかどうか)なども明確にしておくと、現場の混乱を防げます。申請様式を1枚作っておくだけで、管理がぐっとラクになります。

「連続取得」か「分割取得」かを決める

慶弔休暇は「事由が発生した日から連続して取得する」という形が一般的ですが、葬儀が週末をまたぐ場合や、遠方の場合など、連続取得が難しいケースもあります。「取得可能期間は事由発生日から○日以内」と期限を設けて、その期間内であれば分割取得を認める設計にする会社も増えています。この点を定めていないと、「1年後に取得したい」という要求に対応できなくなります。

就業規則との整合性を確認する

慶弔休暇規程を別規程として整備する場合は、就業規則の本体に「慶弔休暇に関しては、別に定める慶弔休暇規程による」と明記し、規程同士が矛盾しないよう整合性を確認します。就業規則の「休暇」の章に直接盛り込む場合も、有給・無給の記載、対象続柄、日数が明確に読み取れるよう文言を整えましょう。規程を作成・変更した際は、労働基準監督署への届出(常時10人以上の事業場)と従業員への周知が必要です。

「規程を作ったら終わり」ではない——周知の義務と落とし穴

規程を整備しても、従業員に周知しなければ法的な効力が発生しません。これは見落とされがちな重要なポイントです。

周知しなければ規程は「存在しないも同然」

労働基準法第106条は、就業規則を常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付けるか、書面で交付するか、電磁的方法(イントラネット等)で周知することを使用者に義務づけています。また労働契約法第7条は、就業規則が労働契約の内容となるためには「合理的な内容であること」と「労働者に周知されていること」の両方が必要と定めています。つまり、どれだけ整った規程を作っても、従業員が知らない状態では効力が認められないリスクがあります。

小規模企業でよくある「作りっぱなし」問題

中小企業では「社労士に頼んで規程を作ってもらったが、その後どこに置いたか従業員が知らない」というケースが実際に起きています。規程を整備したら、全従業員にメールや書面で内容を通知し、いつでも確認できる場所(共有フォルダ・社内掲示板・クラウドストレージ等)に保管しましょう。新入社員が入社した際の説明資料にも含めることで、入社時から認知される仕組みをつくることが重要です。

既存の「なんとなく運用」をどう整理するか

「これまで社長の判断でそのつど対応してきた」という会社では、規程を整備するタイミングで過去の運用との整合性も確認する必要があります。例えば、「以前は配偶者の親が亡くなったときに5日与えていたが、規程では3日と定める」という場合、既存の従業員に対しては丁寧な説明が必要です。不利益変更(労働契約法第9条・第10条)にあたる可能性があるケースは、社会保険労務士に相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

慶弔休暇は法律で義務づけられた制度ではありませんが、就業規則に定めれば会社の義務となり、周知しなければ効力が生じません。日数の相場は「配偶者・実父母クラスで3〜5日、祖父母・兄弟姉妹クラスで1〜3日」が目安ですが、大切なのは自社の実情に合わせて対象範囲・日数・有給無給・申請手続き・取得期限を明確にし、全従業員に周知することです。「規程がない」「なんとなく運用してきた」という状態は、従業員が増えるほどトラブルの温床になります。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業の経営者・担当者の方が抱える就業規則・休暇規程の整備から、従業員への周知・運用定着まで、実務に即した支援を行っています。「うちの会社の場合はどうすればいい?」という具体的なお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 慶弔休暇を設けていない会社は違法ですか?

A. 違法にはなりません。慶弔休暇の付与を直接義務づける法律は存在せず、年次有給休暇のような法的強制力はありません。ただし、設けていないことが採用・定着に影響する場合もあります。また、従業員が年次有給休暇を使って忌引きに対応せざるを得ない状況は、従業員の不満につながりやすいため、何らかの形で整備することが望ましいといえます。

Q. 慶弔休暇は有給にしないといけませんか?

A. 法律上は有給にする義務はなく、無給でも構いません。ただし、規程に「有給」か「無給」かを明記することが重要です。明記がないと後からトラブルになりやすいため、設計の段階でどちらにするかを決め、就業規則または慶弔休暇規程に明確に記載してください。

Q. 従業員が9人以下の会社も就業規則に慶弔休暇を書く必要がありますか?

A. 常時9人以下の事業場は、就業規則の作成・届出義務はありません(労働基準法第89条)。ただし、義務がないことと「書かなくていい」ことは別です。書面で明確にしておかないと「言った・言わない」のトラブルや、対応の不公平感が生じやすくなります。従業員が数名であっても、簡単な書面で慶弔休暇のルールを定めて周知することを強くおすすめします。

Q. 慶弔休暇の日数に土日祝日は含めますか?

A. 法律上の決まりはなく、「暦日(土日祝日を含む)」で計算する方法と「所定労働日(営業日)のみ」で計算する方法があります。どちらにするかは会社が自由に決められますが、規程に明記することが必須です。明記がないと解釈が分かれトラブルになります。なお、暦日計算のほうが実質的な休暇日数は少なくなるため、従業員への説明が必要になるケースもあります。

Q. 既存の就業規則に慶弔休暇の条項がありません。いまから追加できますか?

A. 追加できます。就業規則は変更が可能で、慶弔休暇の新設は一般的に従業員にとって有利な変更にあたるため、不利益変更(労働契約法第9条・第10条)の問題は生じにくいです。変更後は労働基準監督署への届出(常時10人以上の事業場)と全従業員への周知が必要です。作成・変更に不安がある場合は、社会保険労務士やウェルセンス株式会社にご相談ください。

【監修】ウェルセンス株式会社
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