社員が休職したら?メンタルヘルス対応を知らない経営者が最初に読む記事

社員が休職したら?メンタルヘルス対応を知らない経営者が最初に読む記事 休職・復職対応
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「診断書が届いた。でも、次に何をすればいいのかわからない。」

ある日突然、社員からそう告げられたとき、専任人事のいない経営者は一人で判断しなければなりません。休職の手続き、給与の扱い、周囲への説明——どこから手をつければいいのか、何が法的にアウトなのか、誰も教えてくれない状況に置かれます。この記事では、メンタルヘルス対応が初めての経営者・兼務人事担当者に向けて、「今日やるべきこと」と「絶対に避けるべきこと」を実務の順番で整理します。

診断書が届いたら、まず何をするか

診断書を受け取ったら、まず内容を確認し、休職の意思と期間を書面で合意することが最初の対応です。口頭だけで進めると、後のトラブルの原因になります。

診断書の内容を正確に読み取る

医師が発行する診断書には、通常「病名」「休養が必要な期間」「業務上の制限の有無」が記載されています。ここで確認すべきポイントは二つです。まず、記載された休養期間はあくまで医師の見立てであり、会社が定める休職期間とは別物だということ。次に、「業務制限あり」と書かれている場合は、たとえ軽微な業務でも本人に依頼することが安全配慮義務違反につながるリスクがあるということです。

安全配慮義務とは、労働契約法第5条に定められた、使用者が労働者の健康・身体・生命を守るために必要な措置を講じる義務のことです。この義務を怠った場合、損害賠償請求を受けるリスクがあります。

休職辞令は必ず書面で出す

「わかりました、ゆっくり休んでください」という口頭のやりとりだけで休職を開始してはいけません。休職の開始日・期間・休職中の給与の扱い・連絡ルールを明記した「休職辞令」を書面で交付し、本人に署名・受領確認を取ることが重要です。書式がなければ、シンプルな書面でも構いません。

あわせて、社会保険料(健康保険・厚生年金)は休職中も発生し続けることを本人に説明します。給与が発生しない場合は、毎月の本人負担分をどのように徴収するかを事前に合意しておく必要があります。

傷病手当金の案内を忘れない

給与が支払われない休職期間中、健康保険の「傷病手当金」を受給できる場合があります。これは会社が申請するのではなく、社員本人が申請する給付ですが、会社が申請書の一部(賃金の証明欄)を記入・押印する必要があります。支給対象は、連続して3日間休んだ後(待期期間)、4日目以降から始まります。支給額は標準報酬日額の約3分の2です。社員がこの制度を知らないまま「無収入になる」と誤解して退職してしまうケースがあります。初期対応の段階で必ず案内しましょう。

就業規則に休職規定がない場合のリスク

休職制度は法律で義務付けられたものではありませんが、就業規則に規定がない状態でメンタルヘルス不調者に対応すると、会社・社員の双方にとって重大なリスクが生じます。

「休職制度なし」は会社のリスクになる

休職制度がないと、「働けない社員をどう扱うか」の基準がなくなります。その結果、会社側が「解雇するしかない」という判断に流れやすくなりますが、これは非常に危険です。労働契約法第16条(解雇権濫用の法理)により、客観的な合理的理由のない解雇は無効とされます。また、業務上の原因によるメンタル不調の場合は、労働基準法第19条により休業期間中の解雇は原則禁止です。

休職制度は「社員を守る制度」でありながら、同時に「会社が一定の猶予期間を設けた上で合法的に関係を整理できる制度」でもあります。

今すぐ確認すべき就業規則の3つの項目

就業規則を開いて、以下の3点が明記されているか確認してください。

  • 休職事由(どんな場合に休職を命じるか)
  • 休職期間の上限(勤続年数によって異なる場合も多い)
  • 休職期間満了時の取り扱い(復職できない場合は自然退職 or 解雇 の明記)

従業員数が10名以上の事業場は、労働基準法第89条に基づき就業規則の作成・届出が義務です。10名未満でも、休職規定がなければ今すぐ整備することを強く推奨します。既存の就業規則に休職規定がない、または内容が10年以上更新されていない場合は、社会保険労務士への相談を優先してください。

休職中の連絡ルールも規則に落とし込む

「心配だから」と頻繁に連絡を取ることが、かえってハラスメントと受け取られるケースがあります。一方で連絡を一切断つと、復職支援が遅れたり、状況悪化に気づけなかったりします。実務上は、月1回程度のメールや書面による状況確認が適切とされています。連絡の頻度・手段・担当者をあらかじめ本人と合意し、文書化しておくことで、双方のトラブルを防げます。

絶対にやってはいけない対応

メンタルヘルス対応で経営者が法的リスクを負う多くのケースは、「悪意はなかったが、やってはいけないことをやってしまった」というパターンです。以下に代表的な禁止行為を整理します。

禁止行為 リスク・根拠
休職中に頻繁な業務連絡・出勤要請をする 安全配慮義務違反・ハラスメントに該当する可能性がある
診断書提出直後に解雇通告する 解雇権濫用(労働契約法第16条)、業務起因なら労働基準法第19条違反
病名・診断内容を本人の同意なく上司・同僚に開示する 要配慮個人情報の不適切な取り扱い(個人情報保護法)
休職期間を口頭だけで合意し書面を残さない 期間・条件の認識齟齬によるトラブルの原因になる
主治医の診断書なしに「もう大丈夫そうだから」と復職させる 再発・労災認定リスクが高まる

特に注意が必要なのは「病名の開示」です。うつ病や適応障害といった病名は「要配慮個人情報」に分類されており、本人の同意なく第三者に伝えることは個人情報保護法上の問題になります。周囲のメンバーへの説明は「体調不良により休養中」という範囲にとどめ、詳細は伝えないことが原則です。

復職判断で陥りがちな誤解

「主治医が復職可と言っているから戻してよい」という判断は誤りです。復職の最終決定は会社が行うものであり、主治医の診断書はあくまで参考情報の一つに過ぎません。

主治医と産業医の役割の違いを理解する

主治医は「患者が日常生活を送れる状態かどうか」を判断します。一方、産業医(または外部の産業保健の専門家)は「その職場・その業務に本人が耐えられるか」という視点で評価します。この二つは全く異なる問いへの回答であり、主治医診断書だけで復職を判断すると、職場環境への適応ができずに再休職するケースが起きやすくなります。

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、復職判断は5つのステップ(休業開始から職場復帰後のフォローアップまで)で行うことが推奨されています。産業医がいない事業場でも、この手引きを参照することで判断の枠組みを得ることができます。

産業医がいない場合の現実的な対応

50名未満の事業場は産業医の選任が義務ではありません。その場合、以下のような代替手段を検討してください。

  • 地域の産業保健総合支援センター(各都道府県に設置)への相談(無料)
  • 主治医に「職場の業務内容を伝えた上での意見書」を依頼する
  • 外部のメンタルヘルス支援サービス・EAP(従業員支援プログラム)の活用

試し出勤(リハビリ出勤)を有効活用する

いきなりフルタイム復職ではなく、週数日・短時間から職場に慣れる「試し出勤制度」を設けることで、再発リスクを下げることができます。この制度を運用するには、就業規則への記載と本人との合意文書が必要です。また、試し出勤中の賃金の取り扱い(有給扱い・無給扱い等)を事前に明確にしておくことも重要です。

専任人事がいない会社が「外部に頼る」判断基準

経営者が一人で全てを抱え込む必要はありません。社内でやるべきことと、外部専門家に任せるべきことを明確に区分することが、組織を守ることにつながります。

自社でできること・できないことを切り分ける

経営者・兼務人事担当者が担うべきは、「休職辞令の発行」「社会保険手続きの補助」「休職中の定期連絡の管理」「復職後の業務調整」といった実務的な管理業務です。一方、「就業規則の法的整合性チェック」「復職可否の医学的評価」「本人へのカウンセリング」は、専門家の領域です。この区分を混同すると、対応の遅延・法的リスク・担当者の疲弊が重なります。

相談すべき専門家の種類

休職対応に関わる専門家は複数います。就業規則の整備や解雇リスクの確認は社会保険労務士、本人のメンタルヘルスケアはカウンセラー・産業カウンセラー、医学的判断は産業医・主治医、そして休職から復職までの一連のプロセスを組織視点でサポートするのが、メンタルヘルス支援の専門サービスです。初めての休職対応では、まずどの専門家に連絡すべきかを判断すること自体が難しいため、複数の領域をカバーできる窓口に最初に相談することが効率的です。

まとめ

社員のメンタルヘルス不調・休職対応は、「知らなかった」では済まされない法的リスクをはらんでいます。診断書受領後の書面対応、傷病手当金の案内、就業規則の整備、禁止行為の回避、そして復職判断のプロセス——これらは一連のフローとして理解し、初動で正しい対応を取ることが最も重要です。

専任人事がいない環境でこれらを一人で担うことには、当然限界があります。ウェルセンス株式会社では、20〜50名規模の成長企業を対象に、メンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の課題を、実務に即した形でサポートしています。「今、目の前の社員に何をすべきか」「就業規則を見直したい」「復職判断を一緒に考えてほしい」——そんなときは、まず気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 社員に診断書を出すよう求めることはできますか?

A. 休職を命じる際や復職を判断する際に、会社が診断書の提出を求めることは合理的な業務上の指示として認められています。就業規則に「休職にあたっては医師の診断書を提出すること」と明記しておくと、スムーズに運用できます。ただし、提出を強制する形での圧力は避け、手続き上の確認として求める姿勢が重要です。

Q. 休職中も社会保険料を会社が負担し続けるのですか?

A. 休職中も雇用関係が続く限り、健康保険・厚生年金の社会保険料は発生します。会社負担分は会社が引き続き負担し、本人負担分は給与から天引きできないため、毎月振込や立替払いなどの方法で別途徴収する必要があります。この取り決めを休職前に書面で合意しておくことが、後のトラブル防止につながります。

Q. 休職期間が満了しても復職できない場合、解雇できますか?

A. 就業規則に「休職期間満了時に復職できない場合は自然退職とする」と明記されており、かつ会社が復職支援を適切に行った上での判断であれば、退職扱いとすることは法的に認められる場合があります。ただし、業務起因のメンタル不調の場合は労働基準法第19条の解雇制限が適用されるため、個別の事情を社会保険労務士や弁護士に確認することを強くお勧めします。

Q. 休職している社員のことを他のメンバーにどこまで伝えてよいですか?

A. 病名や診断内容は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当するため、本人の同意なく開示してはいけません。チームへの説明は「体調不良により一定期間お休みしています」という範囲にとどめることが原則です。業務の引き継ぎが必要な場合も、病状の詳細ではなく「担当業務の再配分」という形で話すことで、プライバシーを守りながら組織運営を続けることができます。

Q. 従業員が10名未満でも就業規則は必要ですか?

A. 労働基準法上の就業規則の作成・届出義務は「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に課されており、10名未満の場合は法的義務はありません。ただし、休職・復職の運用基準、懲戒規定、退職時の取り扱いなどは就業規則として明文化しておかないとトラブルの原因になります。従業員数にかかわらず、整備しておくことが経営リスクの軽減につながります。

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【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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