子の看護休暇の時間単位取得に困ったら読む対応ガイド

子の看護休暇の時間単位取得に困ったら読む対応ガイド 労務管理
Photo by Jonathan Borba on Pexels

「子どもが急に熱を出したので、今日は2時間早退させてください」——こうした連絡を受けたとき、あなたの会社はどう対応していますか?口頭で「わかりました」と伝えるだけで、休暇の種類も記録もあいまいなまま……というケースは、専任人事のいない中小企業では珍しくありません。実は2021年1月の法改正により、子の看護休暇は時間単位で取得できることが全企業に義務づけられているのです。就業規則の整備も、申請様式の用意も、給与計算のルールも、まだ手つかずという会社は早急に対応が必要です。この記事では、実務担当者がつまずきやすいポイントを整理しながら、今日から使える対応手順をお伝えします。

2021年改正で何が変わったのか

2021年1月1日の育児・介護休業法改正により、子の看護休暇は「半日単位」から「時間単位」での取得が可能になりました。この改正には中小企業への猶予期間はなく、企業規模・業種を問わずすべての事業主に即日適用されています。

改正前と改正後の違い

改正前は「半日単位」が最小の取得単位でした。つまり、子どもの病院に付き添うために1〜2時間だけ抜けたい場合でも、半日分の休暇を使わなければなりませんでした。改正後は「1時間単位」での取得が法律上の最低基準となり、実態に合わせた柔軟な取得が可能になっています。

対象となる従業員と日数

対象となるのは、小学校就学前の子を養育する労働者です。取得できる日数は子が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日で、この上限は改正前後で変わっていません。パートタイム労働者も、所定労働日数が週3日以上または雇用期間が6か月以上であれば対象となります(労使協定で除外しない限り)。

「うちは中小企業だから猶予があるはず」は誤解

育児・介護休業法の改正には、かつて中小企業への適用猶予が設けられていたケースもありましたが、2021年1月の時間単位取得に関しては猶予の定めはありません。従業員数が5名でも50名でも、すでに対応が必要な状態です。「まだ大丈夫」という認識でいると、法律の最低基準を下回る運用をしていることになります。

就業規則・社内規程をどう整備するか

現在「半日単位」と記載されたままの就業規則は、法律の最低基準を下回るため無効とみなされます。速やかに「時間単位」での取得を明記した規程へ改定することが必要です。

就業規則への記載が必要なケース

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準法第89条により就業規則の作成・届出が義務づけられています。この場合、子の看護休暇に関する規定を就業規則に明記し、変更後は所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。常時9人以下の事業場では届出義務はありませんが、社内ルールとして書面で整備しておくことを強くお勧めします

規程に必ず盛り込むべき内容

就業規則または育児・介護休業規程に以下の内容を記載します:

  • 取得単位が「1時間単位」であること
  • 対象となる子の年齢(小学校就学前)
  • 年間取得日数(子1人:5日、2人以上:10日)
  • 有給・無給の別
  • 申請手続きの方法

特に「有給か無給か」は会社が自由に決められる事項ですが、規程に明記していないと運用がぶれる原因になります。

労使協定で除外できる労働者の範囲

勤続6か月未満の労働者、または週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定を締結することで子の看護休暇の適用を除外できます。ただし、除外を設けるには労使協定の締結が必要であり、就業規則への記載だけでは不十分です。また除外はあくまで任意であり、設けなくても問題ありません。

申請書(様式)はどう準備するか

子の看護休暇の申請様式に法定書式はありません。ただし、時間単位取得に対応するために「いつ・何時から何時まで・何時間取得するか」を記録できる様式が必要です。

厚生労働省のひな形を活用する

厚生労働省は「子の看護休暇申出書」のひな形を公開しており、両立支援のひろば(厚生労働省Webサイト)からダウンロードできます。このひな形はそのまま使用することも、自社の書式に合わせて加工することも可能です。まず手っ取り早く整備したい場合は、このひな形を印刷して運用を始めるのが現実的な第一歩です。

時間単位取得に対応した様式の要件

口頭での連絡だけで処理してきた会社では、後から「いつ誰が何日分の看護休暇を取得したか」が追えなくなります。様式には少なくとも次の項目を含めましょう。

  • 申請日
  • 申請者氏名
  • 対象となる子の氏名・続柄・生年月日
  • 取得希望日
  • 取得時間(開始時刻・終了時刻・取得時間数)
  • 申請者署名または押印欄
  • 承認者欄

取得した時間数の累計管理も合わせて行うと、年間上限(5日または10日)の超過を防げます。

勤怠システム・給与ソフトへの登録

紙の申請書と並行して、勤怠管理システムや給与計算ソフトに「子の看護休暇(時間単位)」という休暇区分を追加することが必要です。区分が設定されていないと、担当者が毎回手作業で補正することになり、ミスの原因になります。ソフトウェアのサポート窓口に相談すれば、多くの場合は設定方法を案内してもらえます。

給与計算:有給と無給、どちらにすべきか

育児・介護休業法第16条の2は、子の看護休暇を有給にするか無給にするかは会社が自由に決められると定めています。ただし、どちらを選ぶにしても事前にルールを明文化し、全社員に周知することが重要です。

有給・無給の選択と実務上の影響

以下に有給・無給それぞれの特徴を整理します。

区分 給与への影響 主な注意点
有給とする場合 通常どおり賃金を支払う 給与ソフトへの休暇区分登録が必要。社員の取得ハードルが下がる
無給とする場合 取得時間分を賃金控除する 控除計算の基礎となる時給換算額の設定が必要。控除ルールを就業規則に明記する

無給とする場合の計算方法

無給とする場合、取得時間分の賃金をどう控除するかを事前に決めておく必要があります。一般的には以下の計算式で控除額を算出します。

月所定賃金 ÷ 月所定労働時間 × 取得時間数

ただし、月によって所定労働時間が異なる場合の扱い、固定残業代がある場合の基礎賃金の計算など、個別の雇用条件によって計算方法が異なります。給与計算ソフトのベンダーや社会保険労務士に確認しながら設定することをお勧めします。

不利益取扱いの禁止に注意する

看護休暇を無給にすることは合法ですが、看護休暇を取得したことを理由に人事評価を下げたり、昇進・昇給で不利に扱ったりすることは育児・介護休業法第16条の4で禁止されていることに注意が必要です。「よく休む人」という印象で評価に影響させることも不利益取扱いに該当する可能性があります。管理職への周知も忘れずに行いましょう。

「年次有給休暇の時間取得」との混同に注意

子の看護休暇の時間単位取得に労使協定は不要です。これは年次有給休暇の時間単位取得とは全く別の制度であり、混同が起きやすい落とし穴の一つです。

2つの制度の根本的な違い

年次有給休暇の時間単位取得は、労働基準法第39条第4項に基づく制度で、労使協定の締結が必要です。一方、子の看護休暇の時間単位取得は育児・介護休業法に基づくものであり、労使協定は不要で、法律の規定によって当然に時間単位での取得が認められます。「労使協定がないからうちでは時間単位の休暇は認められない」という判断は、子の看護休暇には当てはまりません。

担当者が「できない」と思い込むパターン

人事を兼務している担当者が「時間単位の休暇=労使協定が必要」という知識だけを持っている場合、子の看護休暇の時間取得申請を受けたときに「うちは対応できません」と誤って断ってしまうことがあります。これは法律上の義務に反する可能性があり、従業員から不満や相談が生じる原因にもなります。2つの制度の違いを、社内の管理職・担当者全員に共有しておくことが重要です。

申請を受けたときの対応フロー

従業員から「子の看護休暇を時間単位で取りたい」と申し出があった場合、以下の流れで対応します。

  1. 対象の子が小学校就学前であるか確認
  2. 年間取得日数の残日数(時間数)を確認
  3. 申請書を受け取る
  4. 勤怠システムに記録
  5. 給与計算に反映

申請書の提出タイミング(事前申請・当日申請など)については、就業規則または社内ルールで定めておくとスムーズです。

まとめ

子の看護休暇の時間単位取得は、2021年1月から全企業に適用されている法的義務です。中小企業への猶予はなく、就業規則の整備、申請様式の用意、給与計算ルールの設定の3点が実務上の対応ポイントになります。また、年次有給休暇の時間取得とは別制度であり、労使協定は不要という点も重要な知識です。「半日単位」のままの就業規則、口頭だけの受付、有給・無給のルール未決定——このうち一つでも該当する場合は、早めに整備を進めることをお勧めします。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業向けに、就業規則の見直しや人事労務の整備をサポートしています。「どこから手をつければいいかわかからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。貴社の状況をお聞きしながら、優先度の高い対応から一緒に整理します。

よくある質問

Q. 従業員が5人しかいない会社でも、子の看護休暇の時間単位取得に対応しなければなりませんか?

A. はい、対応が必要です。2021年1月の育児・介護休業法改正による時間単位取得は、企業規模を問わずすべての事業主に適用されます。常時9人以下の事業場は就業規則の届出義務はありませんが、社内ルールとして時間単位取得を認める旨を書面で整備しておくことをお勧めします。

Q. 子の看護休暇を有給にすると、社会保険や雇用保険の計算に影響しますか?

A. 有給とした場合は通常どおり賃金を支払うため、社会保険料・雇用保険料の計算に特別な変更は生じません。無給とした場合は取得時間分の賃金が減少し、その月の報酬額が変わる可能性があります。ただし、月額変更届(随時改定)の判断基準は3か月平均の標準報酬月額の変動によるため、毎月の休暇取得で即座に変更が生じるわけではありません。詳細は社会保険労務士へご確認ください。

Q. パートタイム社員にも子の看護休暇は適用されますか?

A. 原則として適用されます。ただし、労使協定を締結している場合に限り、勤続6か月未満の労働者または週の所定労働日数が2日以下の労働者を適用除外にすることができます。労使協定がない場合は、雇用形態にかかわらずすべての従業員が対象です。

Q. 申請書の提出は事前でないといけませんか?当日に連絡があった場合はどうすればよいですか?

A. 法律上、申請のタイミング(事前・当日)について特定の定めはありません。子どもの急病は予測できないため、当日朝の連絡でも受け付けることが実態に合っています。就業規則や社内ルールで「やむを得ない場合は事後申請を認める」と明記しておくことで、担当者が迷わず対応できるようになります。

Q. 就業規則に「半日単位」と書いたままですが、罰則はありますか?

A. 就業規則の規定が法律の最低基準を下回る場合、その部分は無効となり、法律の規定が直接適用されます(育児・介護休業法の強行規定)。つまり、就業規則が「半日単位」であっても、従業員から時間単位の申請があれば認めなければなりません。直接的な罰則規定はないケースが多いですが、対応を拒否した場合は行政指導や紛争の原因になるリスクがあります。速やかに規程を改定することをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

不調者対応を、人事だけで抱えない。

メンタル不調者面談や休職・復職対応を、1件からスポットでご相談いただけます。

詳しく見る →

タイトルとURLをコピーしました