無断欠勤3日で解雇できる?連絡試行から退職扱いまで5ステップ

無断欠勤3日で解雇できる?連絡試行から退職扱いまで5ステップ 採用・定着
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「もう3日、無断欠勤が続いている。電話しても出ない。どうすればいい?」——専任人事がいない会社の経営者や兼務担当者なら、こうした状況で「すぐ解雇できるのか」「間違えたら不当解雇になるのか」と判断に迷うのは当然です。結論を焦れば法的リスクを招き、放置すれば業務が止まる。この記事では、無断欠勤・連絡不通の社員への対応を5つのステップに整理し、解雇・自然退職のそれぞれの要件と落とし穴を実務的に解説します。

「3日で解雇できる」は誤解——法律が求めるもの

無断欠勤が3日続いても、その事実だけで即解雇することは原則としてできません。労働契約法16条は「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない解雇は無効」と定めており、欠勤の日数だけでなく、会社が「誠実に連絡を試みたか」「手続を踏んだか」が問われます。

就業規則の「○日で解雇」規定は自動執行されない

「うちの就業規則には”無断欠勤5日で解雇”と書いてある。だから動いていい」と考える経営者は少なくありません。しかしこの規定はあくまで解雇事由の根拠であり、日数が到達した瞬間に解雇が成立するわけではありません。就業規則に規定があっても、会社が連絡試行を怠り、本人の言い分を聞く機会を設けないまま解雇に踏み切ると、裁判所や労働審判で「解雇権の濫用」として無効と判断されるリスクがあります。

懲戒解雇で即時解雇するには「解雇予告除外認定」が必要

無断欠勤を理由に懲戒解雇(即時解雇)を行う場合、本来であれば労働基準法20条に基づき30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です。これを省略して即時解雇できるのは、労働基準監督署長による「解雇予告除外認定」を受けた場合に限られます。この認定なしに予告なし・手当なしで解雇すると、別途の法違反になります。なお、通常解雇(普通解雇)の場合も解雇予告または予告手当が必要です。

メンタル不調・ハラスメント被害という見落としやすいリスク

連絡が取れなくなった背景に、職場でのメンタルヘルス不調やハラスメント被害が潜んでいるケースがあります。この可能性を無視して解雇を進めると、「解雇は無効」という判断に加えて「会社が安全配慮義務(労働契約法5条)を怠った」という問題が重なり、損害賠償リスクが生じます。欠勤前に本人の様子が変わっていなかったか、職場環境に問題がなかったかを、対応の早い段階で確認しておくことが重要です。

連絡試行——何を・どこまでやれば「誠実に試みた」と言えるか

法的に有効な解雇・退職処理の前提として、会社は「誠実に連絡を試みた事実」を記録で示せなければなりません。「電話したけど出なかった」という口頭での説明だけでは不十分で、手段・日時・内容・記録の形式がすべて問われます。

試みるべき連絡手段とその順序

手段 具体的な方法 記録の残し方
電話 本人の携帯・自宅電話に複数回かける 発信履歴のスクリーンショット+日時・回数・結果のメモ
メール・チャット 業務用メール・社内ツール(Slack等)でメッセージを送る 送信画面をPDFまたはスクリーンショットで保存
郵送(書面) 特定記録郵便または内容証明郵便で自宅へ送付 郵便局の控え・追跡番号・内容のコピーを保管
緊急連絡先(家族)への連絡 採用時に登録された緊急連絡先に電話または郵送 連絡日時・相手・内容を記録。採用時の書面上の同意確認も行う
自宅訪問 状況次第で実施(必ず複数人で) 訪問日時・同行者・訪問結果を記録として残す

緊急連絡先(家族)への連絡——してよいのか

個人情報保護の観点から家族への連絡をためらう担当者は多いですが、採用時に緊急連絡先を書面で届け出てもらっている場合、安否確認の目的でその情報を使用することは原則として問題ありません。ただし「解雇するために連絡する」ではなく、「安否を確認するために連絡する」という趣旨にとどめることが重要です。家族を通じて解雇を通告したり、プライバシーに関わる情報を伝えることは避けてください。

記録の基本原則——時系列ファイルを作る

各試行の記録は「いつ・誰が・何の手段で・どんな内容を・どういう結果だったか」を時系列で一本化し、証拠書類(郵便控え・スクリーンショット等)と一緒にファイル化します。後から「どんな順番で何をしたか」が一目でわかる状態にしておくことが、労働紛争が発生した際の防御力を高めます。メモはWordやExcelで構いませんが、作成日・記載者名を必ず入れてください。

自然退職(みなし退職)——就業規則があれば安全ではない

「解雇より自然退職のほうがリスクが低い」という理解は正しい方向ですが、就業規則に条項があるだけで自動的に退職扱いにできるわけではありません。有効に機能させるには、規定・周知・手続の三つが揃っている必要があります。

みなし退職条項が有効に機能する三つの条件

就業規則に「○日間の無断欠勤で退職とみなす」旨の規定があっても、それだけでは不十分です。まず、就業規則が労働者に適切に周知されていること(配布・掲示・イントラ公開等)が必要です。次に、会社が誠実に連絡試行を行い、その記録が残っていること。そして、条項に基づく退職の事実を本人に通知する手続(書面での通知等)を経ることが求められます。これら三つが揃って初めて、みなし退職は法的に有効なものとして扱われます。

就業規則がない・周知が不十分な場合はどうする

就業規則がない(常時10人未満の場合は作成義務がない)場合や、あっても社員への周知が十分でない場合、みなし退職条項は機能しません。この場合は通常の「解雇」手続(解雇予告または予告手当の支払い)を経るか、本人が最終的に連絡可能になった際に「退職の意思」を確認する手順を取ることになります。いずれの場合も、弁護士や社会保険労務士への相談を早期に行うことを強く推奨します。

連絡試行から退職扱いまで——5つのステップ

無断欠勤・連絡不通への対応は、感情や焦りで動くのではなく、手順を踏んで進めることが最大のリスク回避になります。以下の流れを、自社の状況(就業規則の有無・規定日数・産業医の有無など)に当てはめて活用してください。

まず欠勤初日から始める安否確認と記録開始

無断欠勤が発覚した初日から、電話・メール・チャット等で連絡を試みます。この段階では「解雇」ではなく「安否確認」が目的です。連絡試行の記録(時系列メモ)を開始し、毎回の試行結果を記録します。欠勤前後の本人の様子(体調不良・職場での出来事等)も可能な範囲で記録に残しておきます。

数日経過後——書面送付と緊急連絡先への連絡

電話等で連絡が取れない状態が2〜3日続いた場合、特定記録郵便または内容証明郵便で自宅に書面を送ります。書面には「いつまでに連絡がほしいか」「連絡がない場合はどう対応するか」を明記します。同時に、採用時の届け出に基づき緊急連絡先(家族等)に安否確認の連絡を入れます。このタイミングで、就業規則の無断欠勤規定(何日で解雇事由・みなし退職となるか)を確認しておきます。

就業規則の規定日数到達——退職処理か解雇手続の判断

就業規則で定めた日数に達した段階で、みなし退職条項を適用するか、解雇手続に移行するかを判断します。みなし退職の場合は、退職の事実を通知する書面を内容証明郵便で送付します。解雇(普通解雇・懲戒解雇)の場合は、解雇予告(30日前)または解雇予告手当の支払いが必要です。懲戒解雇で即時解雇する場合は、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を要します。いずれの判断も、社会保険労務士または弁護士に相談したうえで進めることが望ましいです。

連絡が取れた場合——事情聴取と意思確認

途中で本人から連絡があった場合、または連絡が取れた場合は、まず事情を聞きます。メンタル不調・ハラスメント被害・家庭の事情など、業務継続可能か否かを判断するための情報収集が先決です。休職制度がある場合はその適用も検討します。本人が退職の意思を示した場合は、合意退職の手続(退職届・退職合意書)に移行します。

退職処理完了後の事務手続

解雇・みなし退職・合意退職のいずれであっても、離職票の交付・健康保険・厚生年金の資格喪失手続・雇用保険の喪失届を期限内に行います。本人が受け取れない状況であれば、書面での通知と郵送対応が必要です。対応全体の記録を最低5年間は保管しておくことを推奨します(労働基準法改正により書類の保存期間が延長されています)。

不当解雇リスクを下げるために——中小企業が今すぐできること

無断欠勤への対応で不当解雇リスクを高める最大の原因は「準備不足のまま急いで動くこと」です。事前の整備と事後の記録を徹底するだけで、リスクは大幅に下げられます。

就業規則の整備と周知を確認する

常時10人以上の労働者を使用する事業場には就業規則の作成・届出義務があります(労働基準法89条)。作成している場合でも、無断欠勤に関する解雇事由・みなし退職条項が明記されているか、全社員に周知されているか(配布記録・閲覧可能な場所への掲示等)を今一度確認してください。周知が不十分であれば、その条項は機能しない可能性があります。

産業医・外部相談窓口の有無によって対応が変わる

常時50人以上の事業場には産業医の選任義務があります(労働安全衛生法13条)。産業医がいる場合は、連絡不通の社員の対応においても産業医に相談し、メンタルヘルス不調の可能性を確認するプロセスを組み込みます。産業医がいない規模の事業場(50人未満)では、外部の産業保健サービスやEAP(従業員支援プログラム)の活用が選択肢になります。専門家のサポートを受けておくことで、「会社として安全配慮を怠らなかった」という実績にもなります。

相談先を決めておく——事前準備が対応速度を上げる

無断欠勤が発生してから「誰に聞けばいいか」を調べている時間は、対応の遅れに直結します。顧問社会保険労務士・顧問弁護士・または外部のメンタルヘルス・人事支援サービスとの関係を事前に持っておくことが、いざというときの最大の備えです。

まとめ

無断欠勤3日という事実だけで即解雇することは、法的には非常にリスクの高い判断です。労働契約法16条が求める「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を満たすには、誠実な連絡試行・その記録・適切な手続という三つのプロセスが欠かせません。就業規則のみなし退職条項も、周知と手続が伴わなければ機能しません。そして連絡が取れない状況の背景に、メンタル不調やハラスメント被害が潜んでいる可能性を見落とさないことが、後の安全配慮義務違反リスクを防ぎます。

「今まさに連絡が取れない社員がいる」「就業規則が整備できているか不安」「対応の記録をどう残せばよいかわからない」——そうした状況でお困りの場合、ウェルセンス株式会社ではメンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の課題に関する相談を受け付けています。専任人事がいない中小企業の実情に合わせた実務的なサポートを提供していますので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 無断欠勤3日で解雇できますか?

A. 3日という日数だけを理由に即解雇することは、原則としてできません。労働契約法16条に基づき、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。就業規則に規定があっても、誠実な連絡試行の記録・本人への通知手続を経ることが求められます。

Q. 緊急連絡先(家族)に連絡してもよいですか?

A. 採用時に本人から届け出を受けた緊急連絡先であれば、安否確認を目的として連絡することは原則として問題ありません。ただし、「解雇を通告する」「プライバシーに関わる詳細を伝える」といった行為は避け、あくまで安否確認の範囲にとどめることが重要です。

Q. 就業規則に「○日無断欠勤で退職とみなす」とあれば、自動的に退職扱いになりますか?

A. 自動的に退職扱いになるわけではありません。みなし退職条項を有効に機能させるには、就業規則が全社員に適切に周知されていること、会社が誠実に連絡を試みた記録があること、そして退職の事実を本人に書面で通知する手続を経ることが必要です。

Q. 連絡試行の記録はどのように残せばよいですか?

A. 「いつ・誰が・何の手段で・どんな内容を・どういう結果だったか」を時系列でメモし、発信履歴のスクリーンショット・郵便局の控え・メール送信記録などの証拠書類と一緒にファイル化します。記録には必ず作成日と記載者名を入れてください。

Q. 解雇予告手当を払えば、すぐに解雇できますか?

A. 解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払えば予告期間を置かずに解雇することは可能ですが、それだけでは不十分です。解雇には労働契約法16条に基づく合理的な理由と相当性が別途必要です。手当を払っても解雇理由が不十分であれば、不当解雇として無効と判断されるリスクは残ります。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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