休職届けを出したまま診断書なし欠勤が続く時の3ステップ対応

休職届けを出したまま診断書なし欠勤が続く時の3ステップ対応 休職・復職対応
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「休職するとだけ言って、そのまま1週間以上連絡が途絶えている。診断書も届かない。このままでいいのか、何か動いていいのか……」

こうした状況に直面したとき、多くの経営者・人事担当者は「待つべきか、動くべきか」の判断基準がわからず、対応が止まってしまいます。放置すれば安全配慮義務違反のリスク、焦って動けばハラスメントのリスク。板挟みの中でも、会社がとるべき行動には明確な順序があります。この記事では、その具体的な3つのステップを解説します。

診断書なし欠勤が危険な理由

診断書のない欠勤を放置し続けることは、会社にとって複数のリスクを同時に抱える状態です。早期に初動を整えることで、後の紛争を未然に防ぐことができます。

安全配慮義務違反につながるリスク

労働契約法第5条は、会社に対して「労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務」を課しています。メンタルヘルス不調が疑われる状況で、会社が何もせず放置することは安全配慮義務違反とみなされる可能性があります。「診断書がないからわからなかった」という理由は、免責事由として認められないケースがほとんどです。

休職と欠勤の曖昧さが後の紛争を生む

休職と欠勤では、給与の有無・社会保険の扱い・復職基準・雇用継続期間がすべて変わります。早い段階でどちらの扱いにするかを明確にしないと、後から「休職期間として認めてほしい」「解雇は無効だ」といった主張につながります。口頭での「休みたい」発言を曖昧に受け取ったまま時間が経つのが最も危険な状態です。

不当解雇リスクを恐れて動けなくなる悪循環

「診断書がない=無断欠勤→懲戒解雇できる」と考えて一気に手続きに進もうとする会社もありますが、後から「実はうつ病だった」と主張されると、労働契約法第16条(解雇権濫用法理)により解雇が無効となるリスクがあります。逆に、リスクを恐れすぎて何もしないと月日だけが経過します。正しい手順を踏むことが、会社と従業員双方を守る唯一の方法です。

休職と欠勤の違いを整理する

休職と欠勤は法律上まったく異なる扱いです。この区分を正確に理解することが、以降のすべての対応の前提になります。

休職は法律上の義務制度ではない

休職制度は法律で会社に設置を義務付けられた制度ではなく、就業規則に定めがあって初めて成立する制度です。就業規則に休職規定がない場合、会社は法的な根拠をもって「休職命令」を出すことができません。その一方で、無制限に欠勤を認める義務もありません。まず自社の就業規則に休職規定があるかどうかを確認してください。

診断書は「休職成立の要件」になりうる

就業規則や休職命令書に「診断書の提出を休職の条件とする」と定めている場合、診断書の提出は労働契約上の義務となります。つまり診断書がなければ休職は未成立であり、欠勤として扱うことができます。ただし、「とりあえず休んでいいよ」という曖昧な言葉で事実上の休職を認めてしまった場合は、後からその判断を覆すことが難しくなります。口頭でのやり取りは必ず記録に残してください

就業規則がない・曖昧な場合の対処

常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則の作成・届出は労働基準法第89条により義務です。休職規定がない、または「診断書の要件」が明記されていない場合は、この機に社会保険労務士と連携して規定を整備することを強くお勧めします。現在進行中の案件に対しては、規定がない状態でも「業務上必要な情報提供として診断書の提出を求める」という業務命令の観点からアプローチすることが可能です。

診断書なし欠勤への3つのステップ対応

欠勤が続いたとき、会社がとるべき行動は「記録→通知→判断」の順序です。この順序を守ることが、後の紛争リスクを最小化します。

口頭申請の記録と就業規則の確認

まず最初にすべきことは、口頭で「休みたい」という申請を受けた日・内容・立会者を書面で記録することです。「誰が、いつ、何を言ったか」が後の対応の根拠になります。あわせて就業規則の以下の項目を確認してください。

  • 休職規定の有無と内容
  • 診断書の提出要件の明記の有無
  • 欠勤の上限日数・無給転換のタイミング
  • 緊急連絡先の把握状況

この確認がなければ、以降の手続きの根拠が揺らぎます。1〜2営業日以内に済ませましょう。

書面で診断書の提出期限を通知する

次に、本人へメールまたは書留郵便で「診断書の提出依頼通知」を送ります。口頭や電話だけでの連絡は記録が残りにくいため、文書での通知が原則です。通知には以下の内容を盛り込んでください。

  • 欠勤開始日と現在の状況の確認
  • 診断書の提出期限(例:通知到達から10営業日以内)
  • 期限までに提出がない場合の扱い(欠勤として処理する旨)
  • 会社の問い合わせ先と担当者名

本人が電話に出ない場合でも、郵便(できれば内容証明郵便)であれば記録が残ります。「ハラスメントになるのでは」と萎縮する必要はありません。業務上必要な書面通知はハラスメントには該当しません。

提出がない場合の扱いを会社として決定する

期限を過ぎても診断書が提出されない場合、会社は「欠勤」として処理を進めます。就業規則に定める欠勤上限に達した時点で、次の選択肢を検討します。

状況 対応の方向性 注意点
就業規則に休職規定あり 休職命令を発令し、休職期間を設定する 休職期間満了後の自動退職規定の有無を確認
就業規則に休職規定なし 欠勤として扱い、退職勧奨または解雇の検討 解雇権濫用法理(労働契約法第16条)に要注意
メンタルヘルス不調が強く疑われる 産業医・主治医意見書の取得を試みる 傷病名不明でも安全配慮義務は発生する

いずれのケースも、解雇や退職勧奨に進む前に必ず社会保険労務士または弁護士に相談してください。診断書が存在しない段階での一方的な解雇は、後から精神疾患が確認された場合に無効リスクが高まります。

本人・家族への連絡で気をつけること

メンタルヘルス不調が疑われる場合、連絡の仕方を誤ると本人の状態を悪化させたり、ハラスメントと主張される原因になります。安否確認と業務連絡を明確に区別して対応してください。

連絡の目的を「安否確認」と「業務手続き」に分ける

本人への連絡には二つの目的があります。一つは安否確認(緊急性の判断)、もう一つは書類提出などの業務手続きの依頼です。この二つを一度のコンタクトで詰め込むと、本人にとってプレッシャーが過大になります。最初の連絡は「元気にしているか確認したかった」という安否確認に絞り、業務依頼は書面(郵便)で別途行うのが基本です。

家族への連絡は「安否確認目的」に限定する

本人と連絡が取れない場合、緊急連絡先として登録されている家族に連絡することは適切な対応です。ただし、傷病名や欠勤の詳細、評価・待遇に関する情報を家族に伝えることは個人情報保護の観点から問題があります。「○○さんと連絡が取れず、お体が心配なのでご確認いただけますか」という安否確認の範囲にとどめてください。家族の連絡先が把握できていない場合は、この機に緊急連絡先の整備を就業規則や入社時書類に盛り込む検討をしてください。

「傷病名を教えてほしい」は強制できない

傷病名は個人情報保護法第2条第3項に定める「要配慮個人情報」に該当します。会社が傷病名の開示を強制することはできません。一方で、就労可否の判断に必要な情報として「診断書(傷病名・就労の可否・療養期間の見込みが記載されたもの)」の提出は求めることができます。「病名を言え」ではなく「就労可否の判断のために医師の診断書を提出してください」という形で依頼することが、法的にも実務的にも正しいアプローチです。

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「待つ期間」の目安と休職命令のタイミング

「何日待てばよいか」に法律上の明文規定はありませんが、実務上の目安と自社の就業規則を組み合わせることで、合理的な判断ラインを引くことができます。

診断書提出の猶予期間の目安

実務上、診断書の提出期限として通知する期間は書面到達から10〜14営業日(約2週間)が一般的な目安です。精神科・心療内科の受診から診断書発行まで数日かかることを考慮すると、1週間以内の設定は厳しすぎる場合があります。「2週間以内に提出がない場合は欠勤として処理します」という形で明示することで、会社の対応に合理性を持たせることができます。

欠勤上限と休職命令のタイミング

就業規則に「連続○日の欠勤で休職命令を発令できる」という規定がある場合、その日数に達した時点で休職命令を書面で発令します。規定がない場合は、欠勤が1か月を超えた段階で休職命令の検討を始めるのが実務上の目安です。休職命令は口頭ではなく必ず書面で行い、休職期間・給与の扱い・復職に必要な条件を明記してください。

産業医がいない場合の対応

常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の選任が義務付けられています(労働安全衛生法第13条)。50人未満の事業場では義務はありませんが、地域産業保健センター(リージョナル産業保健センター)を通じて無料または低コストで産業医相談を利用できます。メンタルヘルス不調が疑われる場合の復職判断など、医学的な判断が必要な場面では、外部の産業保健の専門家を活用することが安全配慮義務の観点からも有効です。

まとめ

診断書のない欠勤が続いているとき、会社がとるべき行動は「待つか動くか」ではなく、正しい順序で動くことです。まず口頭申請を記録し就業規則を確認する。次に書面で診断書の提出期限を通知する。そして期限後に休職命令か欠勤処理かの判断を下す。この3つのステップを踏むことで、安全配慮義務を果たしながら、不当解雇リスクも回避できます。

一方で、「うちの就業規則には休職規定がない」「本人が完全に音信不通になっている」「精神疾患が疑われるが対応経験がない」といったケースでは、自社だけで判断を進めることにリスクがあります。ウェルセンス株式会社では、中小企業の経営者・兼務人事担当者の方からの、こうした休職・復職・メンタルヘルス対応に関するご相談をお受けしています。「うちの状況ではどうすればいいか」をまず話してみたいという方は、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 診断書がなくても「休職扱い」にできますか?

A. 就業規則に「診断書の提出を休職の要件とする」と定めている場合、診断書がなければ休職は未成立であり、欠勤として扱うことができます。ただし会社が口頭などで事実上の休職を認めてしまっていた場合は、後から判断を変えることが難しくなるため、初動での記録と書面対応が重要です。

Q. 診断書を提出しない社員を解雇することはできますか?

A. 診断書の不提出のみを理由とした解雇は、労働契約法第16条(解雇権濫用法理)のもとで合理性・相当性を問われるリスクがあります。特にメンタルヘルス不調が疑われる場合、後から精神疾患が確認されると解雇無効の主張につながることがあります。解雇に進む前に必ず社会保険労務士または弁護士に相談し、手順を踏んで対応してください。

Q. 本人が電話に出ない場合、家族に連絡してもいいですか?

A. 緊急連絡先に登録されている家族への連絡は、安否確認を目的とする範囲で適切な対応です。ただし、傷病名・欠勤の詳細・評価・待遇に関する情報を家族に伝えることは個人情報保護の観点から問題があります。「連絡が取れず体調が心配」という安否確認の範囲にとどめ、業務上の書類依頼は本人宛の書面で別途行ってください。

Q. 就業規則に休職規定がない場合、どう対応すればいいですか?

A. 就業規則に休職規定がない場合、会社は休職命令を出す法的根拠を持てませんが、欠勤を無制限に認める義務もありません。現在進行中の案件については、業務上必要な情報提供として診断書の提出を求めるアプローチが可能です。あわせて、社会保険労務士と連携して休職規定を就業規則に整備することを早急に検討してください。常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則の作成・届出は労働基準法第89条により義務です。

Q. 診断書に傷病名が書いていない場合、受け取ってもいいですか?

A. 診断書に記載が必要な最低限の情報は、「就労の可否」「療養期間の見込み」「医師の氏名・署名」です。傷病名は要配慮個人情報であり、本人が開示を望まない場合に強制することはできません。傷病名の記載がなくても、就労可否と療養期間が明記されていれば、休職命令発令の根拠として活用できます。傷病名が不明な場合でも、メンタルヘルス不調が疑われるなら安全配慮義務は発生することを忘れないようにしてください。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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