中小企業向け休職規程の作り方と必須条項

中小企業向け休職規程の作り方と必須条項 メンタルヘルス対応
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「就業規則に休職の条項はあるけれど、いざ使おうとしたら何も決まっていない」——休職対応を迫られて初めて、規程の穴に気づく経営者・人事担当者は少なくありません。休職規程は、作っただけでは機能しません。通算規定・復職判断の主体・期間満了時の処理など、必要な要素が揃って初めて、会社と社員の双方を守るルールになります。この記事では、20〜50名規模の中小企業が整備すべき休職規程の必須条項と、実務で機能させるためのポイントを、具体的に解説します。

休職規程は就業規則の「相対的必要記載事項」

休職制度は法律で義務付けられた制度ではありませんが、就業規則に設けるなら正確に記載しなければなりません。この前提を押さえることが、規程整備の出発点です。

10名以上なら就業規則の作成・届出は義務

労働基準法第89条により、常時10名以上の労働者を使用する事業者は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。休職制度は「相対的必要記載事項」に分類されます。つまり、会社が休職制度を設ける場合は必ず記載しなければならないが、設けないこと自体は法律上許容されている、という位置づけです。

ただし、休職制度を設けずに長期欠勤者をそのまま放置すると、解雇を検討せざるを得ない場面で「解雇権の濫用」と判断されるリスクが生じます。実務的には、制度を設けたうえで適切に運用する方が会社を守ることになります。

労働基準法に「休職」の定義はない

労働基準法や労働契約法には「休職」という用語の定義規定が存在しません。休職制度の内容(期間・条件・賃金の扱いなど)は、会社が就業規則で自由に設計できます。この自由度の高さが、「雛形をそのまま使っても大丈夫か」という不安につながっています。インターネットで入手できる雛形は最低限の枠組みしか持っていないことが多く、中小企業の実態に合わせたカスタマイズが必須です。

休職規程に盛り込むべき必須条項

機能する休職規程に必要な条項は、大きく「入口(休職開始)」「期間中」「出口(復職・退職)」の三段階に整理できます。それぞれに抜けがあると、実際の対応場面でトラブルが起きます。

入口:休職事由と命令の発令主体

まず明記すべきは、どのような場合に休職を命じるかという「休職事由」です。私傷病(業務外の怪我・病気)、メンタル不調、その他(刑事事件・出向等)を区分して列挙します。事由ごとに休職期間が異なる設計にするのが一般的です。

次に重要なのが、休職命令の発令主体を「会社」と明示することです。「本人が申請したら休職できる」という書き方では、会社が主導権を持てません。「会社は、〇〇と認めた場合、休職を命じることができる」という表現にし、会社命令としての位置づけを明確にします。

期間中:連絡義務・賃金・社会保険の明記

休職期間中に定めておくべき事項は、主に三つです。まず「月に一度、健康状態を会社に報告する」といった連絡義務の設定。連絡が途絶えたまま期間が満了するケースでは、その後の手続きが難しくなります。次に賃金の取り扱い。休職中は原則として無給とし、健康保険の傷病手当金(最長1年6か月)を活用する旨を記載します。さらに社会保険料の本人負担分を、休職中にどう徴収するかも定めておきましょう(給与がなければ振込依頼が必要です)。

出口:復職判断と期間満了時の処理

最もトラブルが起きやすいのが「出口」の設計です。復職を認める主体が「会社」であることを明記し、主治医の診断書に加えて会社(または産業医・外部の産業保健スタッフ)が判断する旨を規定します。また、休職期間が満了しても復職できない場合は「自然退職(雇用関係の終了)」とする条項を設けることが一般的です。ただし、この条項は就業規則への明記・本人への事前告知・手続きの適正性が揃っていないと、解雇と同等に扱われるリスクがあります。形式を整えることが必須です。

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休職期間の長さをどう設定するか

休職期間は、短すぎると復職できずに退職トラブルに発展し、長すぎると人件費・業務負担の問題が生じます。勤続年数に応じた段階設定が実務上のスタンダードです。

勤続年数別の期間設定が現実的

中小企業でよく採用される設定の例を示します。

勤続年数 休職期間の目安
1年未満 1〜2か月
1年以上3年未満 2〜3か月
3年以上5年未満 3〜6か月
5年以上 6か月〜1年

これはあくまで参考値であり、業種・職種・会社の体力によって調整が必要です。重要なのは、社員が傷病手当金を受給できる最長期間(1年6か月)と休職期間の関係を意識すること。会社の休職期間が傷病手当金の受給期間より大幅に短いと、金銭的な不安から復職を急ぐ社員が増え、再休職のリスクが高まります。

通算規定がないと「無限ループ」になる

見落としがちな落とし穴が「通算規定」の欠如です。たとえば「復職後3か月で再度不調になり再休職」というケースで、通算規定がなければ休職期間がゼロリセットされ、実質的に何度でも同じ期間の休職を繰り返せることになります。

通算規定の一般的な書き方は「復職後、一定期間(例:6か月)以内に同一または類似の事由で再度休職した場合は、前回の休職期間と通算する」というものです。この一文があるかどうかで、繰り返す休職への対応力が大きく変わります。雛形を使っている場合は、この条項が含まれているか必ず確認してください。

復職判断の基準と手続きを明文化する

「主治医が復職可と言っているのに、会社が拒否できるのか」という疑問は、復職対応で最も多く寄せられる問いです。結論として、会社は主治医の診断書だけに拘束されません。ただし、その根拠を規程に明記する必要があります。

主治医と産業医の役割の違いを理解する

主治医は患者(社員)の治療を目的とした医師であり、職場環境の実態を必ずしも把握していません。「日常生活に支障がない」という判断が「職場で業務をこなせる」と同義ではないことが多く、早期の復職可能診断書が出るケースも少なくありません。

一方、産業医は会社と労働者の双方の立場から、就労可能性を職場目線で評価します。労働契約法第5条に基づく使用者の安全配慮義務の観点から、「職場環境として安全に就労できない場合は復職させる義務はない」とした判例も存在します。規程に「会社は主治医の診断書のほか、産業医または産業保健スタッフの意見を踏まえて復職の可否を判断する」と明記することで、会社が適切な判断主体であることを担保できます。

20〜50名規模では産業医がいないケースが多い

産業医の選任義務は常時50名以上の事業場に生じます(労働安全衛生法第13条)。20〜40名規模では選任義務がないため、復職判断を経営者や兼務担当者が単独で行うケースが多くなります。この「ワンオペ判断」が最もリスクの高い状態です。

選任義務がなくても、地域の産業保健総合支援センター(産保センター)が提供する無料の産業保健相談を活用したり、外部の社労士・産業医を顧問として契約したりすることで、専門家の意見を得ることができます。判断の裏付けがあれば、後のトラブルリスクを大きく軽減できます。規程には「会社が必要と認める場合、外部の産業保健スタッフ等の意見を聴取することができる」と書いておくと、こうした連携を規程上も担保できます。

試し出勤(リハビリ出勤)の取り扱い

復職前の「試し出勤」を設けるかどうかも、規程に明記しておくべき事項です。試し出勤は、段階的な職場復帰を支援する有効な手段ですが、「試し出勤中は労働者か否か」「賃金は発生するか」という論点が生じます。一般的には「会社が認めた場合に限り、試し出勤を実施できる。試し出勤中は無給とし、労災保険の対象となる業務は行わない」といった条件を規定します。あいまいなまま運用すると、賃金請求や労災をめぐるトラブルの原因になります。

管理職が迷わないための運用ポイント

規程を整備しても、現場の管理職がその内容を知らなければ機能しません。休職対応は「規程の設計」と「運用の周知」がセットです。

管理職が担う初動対応の範囲を明確にする

休職対応において管理職が最初に直面するのは、「部下が長期欠勤しているが、どう声をかければよいか」という場面です。この初動が遅れると、社員の不調が深刻化し、休職期間も長引くことになります。規程とは別に、管理職向けの「休職対応フロー」を1枚のシートにまとめておくことを推奨します。「欠勤〇日続いたら上長が状況確認する」「〇日超えたら人事(経営者)に報告する」といった数字と行動を具体的に示すことがポイントです。

規程を社員に周知する義務

就業規則は作成・届出だけでなく、社員への周知が義務付けられています(労働基準法第106条)。休職規程を改訂した場合は、全社員への説明または書面配布・社内イントラへの掲載などの周知措置を取ることが必要です。周知されていない就業規則は、労働者に対して効力を生じないと解釈されることがあります。

まとめ

中小企業の休職規程整備で押さえるべきポイントは、大きく五つです。まず、休職事由・命令主体を明確にして「入口」を設計すること。次に、勤続年数別の休職期間と通算規定で「繰り返し休職」に歯止めをかけること。そして、復職判断の主体を「会社」とし、産業保健の専門家の意見を反映できる仕組みを規程に落とし込むこと。さらに、試し出勤の条件と期間満了時の処理(自然退職)を適切な形式で明記すること。最後に、管理職への周知と運用フローの整備まで含めて、初めて規程が「機能する」状態になります。

自社の規程に穴がないか診断してほしい、産業医がいない状態での復職判断が不安、管理職への周知をどう進めるか相談したい——こうした課題を一人で抱え込む必要はありません。ウェルセンス株式会社は、20〜50名規模の成長企業に特化した視点で、貴社の実情に合った休職規程の整備・運用をサポートしています。

よくある質問

Q. 従業員が10名未満でも休職規程は必要ですか?

A. 常時10名未満の場合、就業規則の作成・届出義務はありません。ただし、休職対応を明文化せずに長期欠勤者が出ると、解雇や雇用継続をめぐるトラブルに発展するリスクがあります。従業員数にかかわらず、基本的なルールを書面で整備しておくことを推奨します。10名に近づいている段階で事前に準備しておくと安心です。

Q. 主治医が「復職可」と診断書を出しているのに、会社が復職を断ることはできますか?

A. 可能です。主治医は患者の日常生活回復を判断基準としており、職場での業務遂行能力とは異なる観点で診断します。使用者は労働契約法第5条に基づく安全配慮義務を負っており、職場環境として安全に就労できないと判断した場合は復職を待機させることができます。ただし、その判断を規程に明記し、合理的な根拠(産業保健スタッフの意見等)に基づいて行うことが重要です。不当な復職拒否と受け取られないよう、手続きの透明性を確保してください。

Q. 休職期間中の社会保険料はどう処理すればよいですか?

A. 休職中も雇用関係が継続しているため、健康保険・厚生年金保険の社会保険料は発生し続けます。会社負担分は会社が支払い、本人負担分は給与がないため、毎月振込で徴収するか、復職後の給与から精算する方法が一般的です。どちらの方法を取るかを就業規則または休職開始時の合意書に明記しておくと、後のトラブルを防げます。雇用保険料は、無給期間中は発生しません。

Q. 産業医がいない30名規模の会社です。復職判断はどうすればよいですか?

A. 産業医の選任義務がない規模でも、専門家の意見を得ることは可能です。都道府県の産業保健総合支援センター(産保センター)では、無料で産業医や保健師に相談できるサービスを提供しています。また、外部の社労士や産業医を顧問として単発または月次で依頼する方法もあります。規程には「必要と認める場合、外部の産業保健スタッフの意見を聴取できる」と記載しておくことで、こうした連携を根拠付けることができます。

Q. 休職期間満了で「自然退職」とする条項は必ず有効ですか?

A. 一定の条件を満たせば有効と認められますが、無条件に有効ではありません。判例上、有効性が認められるためには、就業規則への明確な記載・社員への事前告知(休職命令時および満了が近づいた時点での通知)・手続きの適正性が必要とされています。これらを欠いた状態で自然退職を処理すると、解雇と同等に扱われ、解雇権濫用(労働契約法第16条)として無効と判断されるリスクがあります。規程の文言と運用の両面を整えることが重要です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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