休職前面談をやりすぎる前に知っておきたいリスクと正しい進め方

休職前面談をやりすぎる前に知っておきたいリスクと正しい進め方 メンタルヘルス対応
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「本人はまだ働けると言っている。でも、どう見ても限界に近い——。」そう感じながら、何度も面談を重ねてしまった経験はないでしょうか。善意から始めた面談が、気づけば5回・6回と積み重なり、後から「会社に休職を妨害された」と言われてしまうケースが実際に起きています。休職前面談は「やらなさすぎ」も問題ですが、「やりすぎ」も法的リスクにつながります。この記事では、休職前面談のやりすぎが招くリスク、面談の適切な回数の目安・NGワード・記録の残し方を実務レベルで解説します。

「やりすぎ」が会社のリスクになる理由

休職前面談は、回数が増えるほど「丁寧な対応」ではなく「引き止め」と評価されるリスクがあります。特に医師の診断書が提出された後の面談は、その傾向が顕著です。

診断書提出後の面談が「妨害」と判断される理由

主治医から「休養が必要」と記載された診断書が会社に提出された時点で、会社はその医師の判断を原則として尊重する必要があります。これは労働契約法第5条が定める安全配慮義務の観点からも重要です。診断書がある状態で複数回の面談を重ね、「もう少し様子を見ませんか」「今辞めてもらうと業務が回らないんですが」といった発言をすれば、精神的苦痛を与える行為としてパワハラや不法行為に問われるリスクがあります。

「善意の面談」が記録上は「圧力」に見える理由

面談を重ねた側には引き止める意図がなくても、記録や証拠が残っていない状態では「何度も呼び出された」という本人の主張が一方的に通りやすくなります。実務上は、診断書が出るまでの段階で受診勧奨を含む面談は1〜3回程度、診断書提出後の手続き確認面談は原則1回を目安とすることが、リスク管理の観点から適切とされています。根拠なく5回・6回と重ねることは、記録上「引き止め」と判断される可能性が高まります。

対応の遅れも同じくリスクになる可能性

一方で、「面談しすぎを避けよう」と消極的になりすぎて対応が遅れた場合も、安全配慮義務違反が問われることがあります。不調のサインを把握しながら何も措置を取らなかった場合も同様です。「やりすぎ」と「やらなさすぎ」の両方のリスクを意識した上で、目的を明確にした面談設計が必要です。

面談を「3種類」に分けて目的を明確にする

休職前の面談を漠然と重ねてしまう根本原因は、面談の「目的」が整理されていないことにあります。目的ごとに面談を分けて設計することが、やりすぎを防ぐ第一歩です。

混同しやすい3つの面談の違い

以下の3種類を区別して設計することが重要です。目的の違う話題を1回の面談に詰め込むと、本人にとって「何のために呼ばれたのかわからない」という状況になり、「圧迫された」という認識につながりやすくなります。

面談の種類 目的 実施タイミング
現状確認面談 不調のサイン把握・業務調整の相談 不調のサインを察知した時点
受診勧奨面談 医療機関の受診を勧める・主治医の見解を確認する 症状が継続・悪化していると判断した時点
休職前手続き面談 休職開始日・手続き・連絡方法の確認 診断書提出後(原則1回)

面談担当者の選定が適切性を左右する

直属の上司だけで面談を完結させることは避けるべきです。上司は対象社員の業務上の利害関係者でもあるため、中立性を担保しにくい立場です。可能であれば、経営者・他部門の管理職・産業医・社労士・EAP(従業員支援プログラム)など、複数の関係者と連携しながら面談担当者を決めることが望ましいです。産業医が選任されていない規模(常時50名未満)の企業であれば、外部の相談窓口や社労士との連携が現実的な選択肢になります。

面談で言ってはいけないNGワード

善意で発した言葉が、後に「ハラスメントの証拠」として使われるケースがあります。面談での発言内容は、それ自体が記録や証拠になり得ることを前提に臨む必要があります。

特に注意が必要な発言パターン

次のような発言は、意図にかかわらず問題になりやすい表現です。「頑張れ」「もう少し様子を見よう」は、医療的判断を会社側が上書きしているように受け取られます。「今辞められると困る」「あなたが抜けると誰が代わりをするの」は、業務上の圧力と受け取られるリスクがあります。「気のせいじゃないか」「前はもっと元気だったのに」は、本人の症状を否定する言葉として記録に残れば問題になります。

代わりに使える表現と基本姿勢

面談の場では、判断を下すのではなく「聴く」ことを基本姿勢にします。「今の状態を教えてもらえますか」「医療機関には相談していますか」「会社として利用できる制度をお伝えします」といった、事実確認と情報提供に徹する表現が適切です。特に受診勧奨面談では「受診を強制する」のではなく「受診の選択肢を提示する」という姿勢を保つことが重要です。また、休職に関する制度(傷病手当金・休職期間の扱いなど)を客観的に説明することは、本人が適切な判断をするための支援になります。

記録の残し方——「言った・言わない」を防ぐために

面談記録は、会社を守るための重要な証拠です。残し方が属人的であったり、口頭やLINEだけで進めてしまうと、後のトラブルで会社側の主張を裏付けることができなくなります。

面談記録に最低限含めるべき項目

面談記録には、次の項目を必ず含めるようにします。まず、日時・場所・出席者(役職名を含む)を明記します。次に、本人から聴取した主な内容(症状の状況・本人の希望・主治医の有無など)を記録します。そして、会社側が伝えた内容(制度説明・次のステップなど)と、本人の意思確認結果(休職の意向の有無)を明記します。最後に、次回のアクションと期日を記載します。記録は面談当日または翌日中に作成し、担当者と経営者の双方が確認した上で保管することが望ましいです。

記録の保管と情報管理のルール

面談で得た情報(病名・症状・家族事情など)は、個人情報保護法第2条第3項が定める「要配慮個人情報」に該当しうる内容を含みます。記録の閲覧範囲は必要最小限の担当者に限定し、LINEや個人のメールでやり取りした内容を記録として扱うことは避けてください。専用のフォルダや管理台帳を用意し、誰がいつ何を確認したかが後から追えるようにしておくことが重要です。

就業規則・産業医の有無による対応の違い

常時50名以上の企業では産業医の選任が義務づけられており、面談に産業医を関与させることでより適切な対応が可能です。一方、50名未満の企業では産業医がいないケースが多く、社労士や外部のEAPサービスを活用することが現実的な対応となります。また、就業規則に休職の申請要件・手続き・期間が明記されているかどうかで、面談でのやり取りの法的な位置づけも変わります。就業規則に休職規定がない場合は、面談対応の前に整備を検討することをおすすめします。

休職前面談の「適切な進め方」チェックポイント

面談の設計・実施・記録を適切に行うためには、対応の流れ全体を俯瞰した確認が必要です。以下のポイントを参考に、自社の対応を見直してみてください。

面談前に確認しておくこと

面談を始める前に、まず就業規則の休職規定を確認します。次に、面談の目的(現状確認・受診勧奨・手続き確認のどれか)を担当者間で合わせておきます。担当者が直属の上司だけになっていないかを確認し、必要であれば経営者や外部の窓口を加えます。本人がすでに医療機関にかかっているか、診断書の有無も事前に把握しておけると面談の方針が立てやすくなります。

面談後に行うこと

面談が終わったら、その日か翌日中に記録を作成します。記録は担当者だけでなく、経営者または人事担当者も確認し、双方がその内容を共有した状態にします。次のアクション(受診の確認・診断書の提出期限・次回面談の要否など)を本人にも書面や文書で伝えておくと、後から「そんな話は聞いていない」というトラブルを防ぎやすくなります。診断書が提出された後は、原則として追加の説得面談は行わず、手続き確認に徹することを担当者全員で共有してください。

まとめ

休職前面談は、回数・内容・記録の3点がそろって初めて「会社を守る対応」になります。診断書提出前は1〜3回、提出後の手続き確認は原則1回を目安に、目的を明確にした面談を設計することが重要です。NGワードを避け、聴くことを基本姿勢にした上で、面談記録は当日中に作成・保管する習慣をつけてください。「何となく対応している」という状態が最もリスクを高めます。

ウェルセンス株式会社では、専任人事がいない中小企業の経営者・兼務担当者向けに、休職前面談の設計・記録フォームの整備・社員対応の相談を承っています。「うちの会社でどう対応すればいいか」という具体的なご相談も歓迎しています。お気軽にご連絡ください。

よくある質問

Q. 休職前面談は何回まで行うのが適切ですか?

A. 法令上の規定はありませんが、実務上の目安として、診断書が出るまでの段階では受診勧奨を含む面談を1〜3回程度、診断書提出後の手続き確認面談は原則1回とすることが推奨されます。明確な理由なく5回・6回と重ねると、記録上「引き止め」と評価されるリスクが高まります。

Q. 「頑張れ」という言葉は面談で言ってはいけないのですか?

A. 絶対に禁止されているわけではありませんが、メンタル不調が疑われる社員への面談では避けることが望ましいです。「頑張れ」は、医師が必要と判断した休養を会社側が否定しているように受け取られる可能性があります。代わりに「今の状況を聞かせてください」「利用できる制度をお伝えします」など、事実確認と情報提供に徹する表現を使うことをお勧めします。

Q. 面談記録はどのような形式で残せばよいですか?

A. 特定のフォーマットが法令で定められているわけではありませんが、日時・場所・出席者(役職名を含む)、本人から聴取した内容、会社側が伝えた内容、本人の意思確認結果、次回アクションと期日を最低限含めることが重要です。LINEや口頭のやり取りは記録として機能しにくいため、専用の書式で文書化し、担当者と経営者が双方確認・署名する形をお勧めします。

Q. 産業医がいない会社では、面談をどう進めればよいですか?

A. 常時50名未満の企業では産業医の選任義務がないため、外部の社労士やEAP(従業員支援プログラム)サービス、メンタルヘルス支援の専門会社に相談することが現実的な選択肢です。また、面談担当者が直属の上司だけにならないよう、経営者や他部門の管理職も関与できる体制をつくることが重要です。

Q. 本人が「休まなくていい」と言っている場合でも、休職を勧めてよいですか?

A. はい、安全配慮義務の観点から、会社は本人の申告だけを根拠に判断するべきではありません。不調のサインが明らかであれば、医療機関への受診を勧めることは会社として適切な対応です。ただし、受診を「強制」するのではなく「選択肢として提示する」姿勢を保つことが重要です。受診勧奨の内容と本人の反応は記録に残しておくことで、後のトラブル防止にもつながります。

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【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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