復職後に成績不振が続く社員を解雇できる3つの判断基準

復職後に成績不振が続く社員を解雇できる3つの判断基準 メンタルヘルス対応
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「復職してもらったけれど、また業務が回らなくなってきた。このまま様子を見続けるのか、それとも会社として動いてもいいのか——」そう感じながらも、次の一手を踏み出せずにいる経営者・人事担当者の方は少なくありません。メンタル不調からの復職後に勤務成績の不振が続くケースは、「配慮」と「会社の限界」の間で判断を迷わせる、非常に難しい問題です。この記事では、復職後の勤務成績不振を理由とした解雇が法的に認められるための判断基準・観察期間の設計・記録の残し方を、実務に直結する形で整理します。

復職後の解雇はなぜ難しいのか

復職後に成績不振を理由として解雇(普通解雇)を行う場合、通常の能力不足解雇よりも法的なハードルが高くなります。その理由を正確に理解することが、適切な対応の出発点です。

解雇権濫用法理という大前提

労働契約法第16条は、解雇は「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」と認められなければ無効と定めています。これを解雇権濫用法理といい、勤務成績不振を理由とした解雇にも厳格に適用されます。「成績が悪い」「仕事が遅い」という事実だけでは足りず、会社が適切な配慮・指導・改善機会を尽くしたうえで、なお改善されなかったという事実の積み重ねが必要です。

メンタル不調が絡む場合の追加リスク

成績不振の背景に業務上のストレスやハラスメントが原因のメンタル不調がある場合、その解雇は労働基準法第19条が定める「業務上の疾病を理由とした解雇の禁止」に抵触するリスクがあります。復職後であっても、不調が業務に起因している可能性が否定できない場合は特に慎重な判断が求められます。主治医や外部の産業保健専門家への確認が不可欠なのはこのためです。

「復職させたのだから」は法律上通用しない

復職を許可した事実は、会社に即座に解雇権を与えるものではありません。復職後も合理的配慮義務は継続しており、「配慮したうえでなお改善しなかった」という事実がなければ、解雇は認められません。「復職させてあげたのに成果が出ない」という感覚は人として理解できますが、法的な文脈では通用しない論理です。

解雇が認められるための判断基準

復職後の成績不振を理由とした解雇が法的に有効と判断されるためには、主に次の3つの基準をすべて満たしていることが必要です。

判断基準 確認すべき内容
就業規則上の根拠がある 「能力不足・勤務成績不振」が解雇事由として明記されているか
合理的配慮を実施した 業務量・内容・配置等の調整を行い、記録に残しているか
改善機会を具体的に付与した 改善目標・期間を設定し、書面で本人に伝えているか

就業規則に解雇事由が書かれているか

まず確認すべきは、就業規則に「能力不足または勤務成績不振を理由とした解雇」が規定されているかどうかです。規定がない場合、解雇の法的根拠が著しく弱くなります。10人未満の事業所は就業規則の作成義務がありませんが、それでも解雇を検討するならば、就業規則の整備または個別の合意書の作成を先行させることを強く推奨します。

合理的配慮を実施・記録しているか

復職後に会社が行った配慮(業務量の軽減、短時間勤務、配置転換など)を記録として残していることが重要です。「口頭で相談に乗った」「特別に仕事を軽くしていた」だけでは証明が困難です。配慮の内容・期間・担当者名・本人の反応を面談記録や業務調整シートに残しておきましょう。

改善目標と期間を書面で伝えているか

改善指導は、「何を・いつまでに・どの水準まで」という具体的な目標と期限を書面で示したうえで行う必要があります。たとえば「週の遅刻を月2回以内に抑える」「担当案件の処理件数を月10件以上に戻す」のように数値化できると、達成・未達成の判断が明確になります。書面を手渡した日付・受領確認のサインがあることも証拠力を高めます。

観察期間はどう設計するか

復職後の観察期間は法律上の制度ではありませんが、実務的に非常に重要な意味を持ちます。「なんとなく3ヶ月様子を見た」ではなく、目的・評価基準・再休職時の取り扱いをあらかじめ設計することが求められます。

厚生労働省の指針が推奨する設計

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、復職後のフォローアップとして観察・評価の仕組みを組み込むことを推奨しています。同手引きでは、復職直後は業務負荷を段階的に高め、定期的な面談で状態を確認するプロセスが示されています。この手引きに沿った設計をしているかどうかは、後の労務紛争においても重要な評価ポイントになります。

観察期間に決めておくべき3つの事項

観察期間を設ける場合、あらかじめ次の3点を書面で明確にしておきましょう。まず、観察期間の長さと開始・終了の日付を定めます。次に、観察期間中に評価する指標(出勤率・業務処理件数・遅刻・ミス件数など)を具体的に列挙します。そして、観察期間中に再び休職が必要な状態になった場合の取り扱い(休職期間の通算など)を明示します。これらを本人に説明し、確認の署名を取ることが理想です。

産業医がいない場合の代替策

従業員50名未満の事業所は産業医の選任義務がなく、主治医の意見書だけを頼りにしているケースが多くあります。しかし主治医は日常の診療が主な役割であり、職場環境への適合可能性を評価する立場にはありません。この場合、地域産業保健センター(無料で利用可能)や外部の産業保健専門家・EAPサービスを活用して、就労可能性に関する第三者の見解を得ることを検討してください。専門家の見解が記録に残ることで、会社の対応の合理性を示す証拠になります。

記録の残し方——何を・どう・いつ記録するか

指導・面談・配慮を行っていても、それが記録に残っていなければ法的には「何もしていない」と判断されるリスクがあります。記録の目的は「証拠づくり」ではなく、「会社が誠実に対応した事実の可視化」です。

面談記録の基本フォーマット

面談記録には最低限、日時・場所・参加者・話し合った内容・会社からの指示や提案・本人の反応・次回確認予定日を記載します。記録は面談後できるだけ早く作成し、本人に内容を確認してもらうことが理想です。メールで「先日の面談での確認事項」として送付し、既読・返信の記録を残す方法も有効です。

改善指導書の位置づけ

口頭での注意を繰り返したあとに、改善が見られない場合には書面による改善指導書を発行します。改善指導書には、問題となっている具体的な事実(日付・内容)、求める改善内容と期限、改善されなかった場合の処遇(配置転換・降格・解雇の可能性)を明記します。「脅し」ではなく「会社としての方針の明示」として、冷静かつ丁寧な文体で作成することがポイントです。

記録を残す際の注意点

記録は作成した時点の日付が明確であることが重要です。後からまとめて作成したものは、裁判・労働審判の場では信頼性が低く評価されます。面談のたびにその日のうちに記録する習慣をつけましょう。また、記録はクラウドストレージなど改ざんが困難な環境で保存し、担当者が退職しても参照できる体制を整えておくことが求められます。

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「配慮」と「指導」を両立させるために

メンタル不調のある社員への配慮と、業務上の指導は矛盾しません。「プレッシャーをかけると悪化する」という恐れから何も言えなくなることは、むしろ本人にとっても会社にとっても不健全な状態です。

「合理的配慮」の範囲を理解する

合理的配慮とは、障害や疾病のある社員が業務を遂行できるよう、過度な負担にならない範囲で職場環境を調整することです。具体的には、業務量の一時的な軽減、短時間勤務、通院時間の確保などが該当します。一方で、他の社員が担う業務の大半を肉体的・精神的に引き受けさせたり、成果の基準をゼロにするような対応は「過剰な配慮」であり、会社の義務ではありません。

指導の方法と伝え方

指導を行う際は、感情的な言葉や個人の人格への言及を避け、「業務上の事実」に絞って伝えることが基本です。「遅刻が今月5回あった。体調管理のサポートとして何かできることはあるか。一方で出勤できない場合の対応について、今後のルールを確認させてほしい」のように、配慮と事実確認を組み合わせた対話が有効です。指導がハラスメントと受け取られないよう、複数人で面談に臨むことも一つの選択肢です。

改善が見られない場合の対応順序

配慮・口頭指導・書面指導という順序を踏んでなお改善が見られない場合、次の検討事項は配置転換・降格・退職勧奨です。解雇はあくまで最終手段であり、他に取りうる選択肢を尽くしたかどうかが法的に問われます。このステップを踏む際は、社会保険労務士や弁護士など専門家への相談を並行して進めることを強く推奨します。

まとめ

復職後の勤務成績不振を理由とした解雇は、「配慮義務の履行」「改善機会の付与」「記録の積み重ね」という3つの基準をすべて満たしていることが法的な有効性の前提となります。メンタル不調が絡む場合は業務起因性の確認も欠かせず、産業医がいない環境では外部専門家の活用が現実的な選択肢です。「動いてよいのかわからない」という状態のまま時間だけが過ぎていくことは、会社にとっても当該社員にとっても望ましくありません。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業向けに、復職支援の設計・観察期間の運用・改善指導の記録方法・専門家との連携まで、実務に即した形でサポートしています。復職後の勤務成績不振について「うちのケースはどう対応すればいいのか」という段階から、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 復職後、どのくらいの期間様子を見てから解雇の判断をすべきですか?

A. 法律上「何ヶ月以上」という明確な規定はありません。ただし、観察期間・改善指導期間・書面による警告といったプロセスを踏んでいることが重要です。一般的には配慮と指導を重ねたうえで数ヶ月以上の実績が求められることが多く、期間の長さよりも「どれだけのプロセスを踏んだか」が法的判断の軸になります。

Q. メンタル不調が原因の成績不振は、通常の能力不足と扱いが違いますか?

A. 違います。メンタル不調の背景に業務上のストレスやハラスメントがある場合、労働基準法第19条の解雇制限(業務上の疾病を理由とした解雇の禁止)が適用されるリスクがあります。また、配慮義務の範囲も通常の能力不足より広く解釈されます。必ず主治医や専門家の見解を確認したうえで対応を進めてください。

Q. 口頭で何度も注意したのに記録がありません。今から記録を作っても意味がありますか?

A. 遡って記録を作ることは改ざんのリスクがあるため推奨しません。しかし今この時点から正確に記録をつけ始めることは十分に意味があります。今後の面談・指導・配慮の内容を日付とともに残し、書面での改善指導に切り替えることで、今後のプロセスの証拠力を確保できます。過去分については、メールのやりとりや社内連絡の履歴を整理することで補完できる場合もあります。

Q. 産業医がいない場合、復職後の勤務成績不振の判断を誰に相談すればよいですか?

A. 各都道府県の地域産業保健センターでは、50名未満の事業所向けに無料で産業保健相談を提供しています。また、外部のEAPサービスや産業保健専門家・社会保険労務士との顧問契約を活用する方法もあります。主治医は治療が主な役割であり、就労可能性と復職後の勤務成績への影響を総合的に評価するには限界があるため、第三者専門家の活用を検討してください。

Q. 解雇ではなく退職勧奨を選んだほうがよいケースはありますか?

A. 解雇と比べて退職勧奨は労使双方の合意に基づくため、後の紛争リスクが低くなります。ただし、退職勧奨も強要や執拗な繰り返しはハラスメントと判断されることがあります。本人の意思を尊重しながら、条件(退職日・退職金の上乗せなど)について丁寧に交渉するプロセスが必要です。どちらが適切かはケースによって異なるため、専門家への相談をお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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