副業禁止でも趣味・転売はOK?判断基準3つを解説

副業禁止でも趣味・転売はOK?判断基準3つを解説 コンプライアンス
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「うちの社員がフリマアプリで転売をしているらしいんですが、副業禁止規定に違反しますか?」——人事担当者の方から、こういった相談が増えています。就業規則に「副業・兼業を禁止する」と書いてあっても、趣味の売買や投資がそれに当たるのかどうか、自信を持って答えられないケースがほとんどです。この記事では、判断に使える3つの基準を中心に、実務での対処法をわかりやすく解説します。

副業禁止規定は何でも禁止できるわけではない

就業規則に副業禁止と書かれていても、会社がすべての社外活動を制限できるわけではありません。労働者は労働時間外の活動を原則として自由に行う権利を持っており、会社が規制できるのは「正当な理由がある範囲」に限られます。

法律の原則を押さえておく

労働契約法・労働基準法のいずれも、労働者の勤務時間外の行動を会社が一律に制限することを認めていません。就業規則に「副業禁止」と一行書いただけで趣味の売買を懲戒処分の対象にした場合、裁判で就業規則の適用が無効と判断されるリスクがあります。就業規則はあくまで「合理的な内容でなければ労働者を拘束しない」という原則(労働契約法第7条)が働くためです。

厚生労働省ガイドラインが示す制限できる4つの理由

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和2年改定・令和4年改定)では、会社が副業禁止を制限・禁止できる正当な理由として以下の4つを示しています。

  • 本業のパフォーマンス低下・長時間労働など、労務提供上の支障がある場合
  • 企業秘密が漏洩するおそれがある場合
  • 会社の名誉・信用を損なうおそれがある場合
  • 競合他社への利益供与など、競業にあたる場合

逆に言えば、これらに該当しない社外活動を会社が禁止することは、原則として認められません。「副業禁止」という文言だけを根拠に、趣味的な転売やフリマ出品を規制しようとすると、法的根拠が崩れる可能性があります。

禁止規定があることより理由の合理性が問われる

多くの中小企業では「就業規則に副業禁止と書いてあるから何でも禁止できる」と思い込んでいるケースがあります。しかし実務では、禁止規定があることよりも、「なぜ副業禁止が必要か」という理由の合理性が問われます。この視点を持つことが、社員への説明や社内ルール整備の出発点になります。

判断基準(1):継続性・反復性・収益性で副業かどうかを見極める

趣味の活動が「副業禁止」の対象になる副業かどうかを判断する最初の基準は、その活動が継続的・反復的に収益を生んでいるかどうかです。単発の不用品売却と、仕入れを繰り返す転売活動は、法的・実務的に別物として扱います。

副業の定義が曖昧だから問題が起きる

多くの就業規則には「副業・兼業を禁止する」とだけ書かれており、副業の定義が明記されていません。この状態だと、社員が「フリマで不用品を売るのは副業じゃない」と主張した場合に反論する根拠がなく、担当者がケースバイケースで対応を続けることになります。副業禁止を機能させるには、まず定義を明確にすることが最優先です。

活動類型ごとの判断の目安

以下の表は、活動の種類別に「副業とみなされうる場合」と「通常は問題にならない場合」を整理したものです。

活動の種類 副業とみなされうる場合 通常は問題にならない場合
フリマアプリ・コレクション売却 継続的・反復的に仕入れ・販売を行っている。利益が相当額に上る 不用品の単発売却。趣味の延長として稀に行う程度
転売(せどり等) 仕入れと販売を業として繰り返している。月次で安定した収入がある 購入したものを散発的に売る程度の行為
株式・投資信託・FX等 FX・信用取引を業務時間中に毎日行っている。情報収集に多くの時間を費やしている 長期保有型の資産運用(給与所得者に一般的な行為)
YouTube・ブログ等 広告収入があり、継続的に制作・収益化している 趣味での発信のみで収益化なし

税務の観点からも確認が必要

所得税法上、転売やコンテンツ販売による収益が「事業所得」または「雑所得」として年間20万円を超えると、給与所得以外の所得として確定申告が必要になります。この申告を通じて副業禁止の対象となる副業が発覚するケースがあるため、会社側としても税務上の区分を把握しておくことが実務上重要です。

判断基準(2):本業への支障・競業・秘密漏洩のリスクを確認する

転売や趣味活動が副業禁止の対象となる副業の定義に当たるとしても、それだけで直ちに制限できるわけではありません。実際に会社が副業禁止の規制を根拠づけられるのは、本業への悪影響・競業・情報漏洩のいずれかが絡む場合です。

本業のパフォーマンスへの影響を確認する

業務時間中にフリマアプリを操作している、遅刻・欠勤が増えた、業務中に転売先の商品情報を検索しているといった事実がある場合、本業への支障という理由で副業禁止の規制根拠が生まれます。重要なのは「副業をしているから問題」ではなく、「副業が原因で本業に実害が出ているから問題」という因果関係を明確にすることです。

競業・情報漏洩のリスクがある場合は別扱い

社員が転売している商品が自社の扱う製品と競合する場合、または社内の仕入れルートや顧客情報を活用して転売している場合は、競業避止義務違反・秘密漏洩として厳格に対処できます。この場合は、就業規則上の競業禁止条項や秘密保持義務条項が根拠になります。就業規則にこれらの条項が整備されていない場合は、早急に追記することを検討してください。

会社名を使った活動は別途チェックが必要

社員が転売やSNS発信において会社名や肩書きを使用している場合、会社の名誉・信用を損なうリスクが生じます。この点は会社の規模や業界にかかわらず、発覚後のブランドへの影響が大きいため、SNSポリシーや社外活動に関するガイドラインとあわせて整備しておくことが望まれます。

判断基準(3):就業規則に定義と対処根拠があるか確認する

問題が起きたときに会社が副業禁止ルールを実行できるかどうかは、就業規則の整備状況にかかっています。定義も処分根拠もない状態で社員に注意しても、「どこにそんなルールがあるのか」と反論されれば会社は対処できません。

就業規則に最低限必要な4つの要素

副業禁止を含む副業・兼業に関して就業規則が機能するためには、次の4点が盛り込まれている必要があります。

  • 副業・兼業の定義を明記する(例:継続的に報酬を得ることを目的とした業務・活動)
  • 許可制または届出制のどちらを採用するか明確にする
  • 副業禁止・制限できる具体的な事由を列挙する(前述の4つの正当理由に対応させる形が望ましい)
  • 申告義務に違反した場合の懲戒処分の根拠を記載する

この4点が揃って初めて、就業規則が実務上の根拠として機能します。

完全禁止か管理・許可制かを会社方針として決める

厚生労働省が副業禁止ではなく副業・兼業を推進している現在、全面禁止の方針は採用困難なケースが増えています。実務的に多くの企業が採用しているのは「原則として禁止するが、会社が認めた場合はこの限りでない」という許可制、または「事前に届け出ることを義務付ける」届出制です。どちらの方針をとるかによって、就業規則の書き方・運用フローが変わるため、まず方針を決めることが先決です。

問題が起きてから整備しても遅い

人事担当者が兼務の中小企業では、就業規則の整備が後回しになりがちです。しかし、実際に転売が発覚したり、トラブルが起きたりしてから副業禁止ルールを含む規則を整備しても、「後から作ったルールを遡及適用する」ことは原則として認められません。問題発生前に最低限の整備を済ませておくことが、会社を守る最短ルートです。

社員から相談を受けたときの実務対応フロー

「フリマで売っているが問題ですか」と社員から相談されたとき、その場で即答せず、一定の事実確認を経て判断することが重要です。感情的に禁止するのでも、曖昧に黙認するのでも、どちらも後のリスクにつながります。

まず事実確認で3つのポイントを把握する

社員の活動が問題になるかどうかを判断するために、まず確認すべきことは次の3点です。

  • 活動の頻度・収益の有無(継続性・収益性の確認)
  • 業務時間内に行っているかどうか(本業への支障の確認)
  • 活動内容が自社業務と関連・競合していないか(競業・情報漏洩リスクの確認)

この3点のいずれかに該当する場合は副業禁止の規制根拠があります。いずれも該当しない場合は、現時点では個人の自由な活動として扱う余地があります。

就業規則の整備状況によって対応が変わる

就業規則に副業禁止の定義・届出義務・禁止事由が整備されている場合は、その規則に基づいて社員に届出を求め、内容を審査する流れで対応できます。一方、就業規則が未整備または曖昧な場合は、まずは問題のある行為(業務時間中の操作など)を個別に注意しながら、並行して就業規則の整備を進めることが現実的な対処です。いずれにせよ、その場限りの口頭注意だけで終わらせず、記録を残すことが重要です。

これまで黙認してきた場合の対処

これまで転売活動を黙認してきた場合、突然に厳しく対処すると社員とのトラブルになりかねません。まず就業規則を整備し、社員全体に対して「今後はこのルール で運用する」と周知したうえで、届出制を導入するのが穏当なステップです。過去の行為を遡及して副業禁止ルールを適用して処罰しようとするのは法的にも困難であり、現時点からのルール整備に集中することを優先してください。

まとめ

副業禁止規定があっても、趣味の延長や単発の不用品売却を一律に規制することはできません。会社が副業禁止を実行できるのは、本業への支障・競業・秘密漏洩・名誉毀損のいずれかに該当する場合に限られます。判断の核心は「継続性・反復性・収益性・業務との競合性」という3つの基準です。そして、その判断と対処を支えるのが就業規則の整備です。定義・届出義務・禁止事由・処分根拠の4点が揃って初めて、実務上の根拠として機能します。

「どこから副業になるのか社内で判断できない」「就業規則の見直しをどう進めればいいかわからない」という場合、ウェルセンス株式会社では、中小企業の実態に合わせた就業規則の整備支援や、社員からの副業相談への対応フロー設計をお手伝いしています。専任の人事担当者がいない環境でも、実務に落とし込める形でサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. フリマアプリで不用品を売る程度なら、副業禁止規定に違反しませんか?

A. 単発の不用品売却であれば、一般的には副業禁止規定の対象にはなりません。副業かどうかの判断基準は「継続性・反復性・収益性」であり、趣味の延長として稀に行う程度の活動は、厚生労働省のガイドラインに照らしても規制の対象外と考えるのが妥当です。ただし、就業規則で副業の定義が明確でない場合はグレーゾーンになりやすいため、定義を明記しておくことが望ましいです。

Q. 株式投資やFXをしている社員も副業禁止の対象になりますか?

A. 長期保有型の株式投資や投資信託は、給与所得者が広く行う資産運用であり、通常は副業禁止規定の対象にはなりません。一方、FXや信用取引を業務時間中に毎日行い、本業に支障が出ている場合は、「労務提供上の支障」という正当理由から規制できる可能性があります。投資という行為そのものではなく、本業への影響の有無で判断することが重要です。

Q. 就業規則に副業禁止と書いてあれば、懲戒処分はできますか?

A. 就業規則に副業禁止の文言があっても、それだけでは懲戒処分の根拠として不十分な場合があります。懲戒処分が有効とされるためには、禁止の対象(副業の定義)、禁止の事由(本業への支障・競業等)、処分の根拠条項が就業規則に明記されており、かつその内容が合理的である必要があります。定義や事由のない就業規則を根拠にした処分は、裁判で無効とされるリスクがあります。

Q. これまで黙認してきた転売活動を、今から規制することはできますか?

A. 過去の行為を遡って処分することは原則として困難です。まず就業規則を整備・改定し、全社員に対して新ルールを周知したうえで、届出制の導入など今後の運用ルールを設けるのが現実的な対処です。過去の黙認について社員を責めるより、「今後はこのルールで運用する」という方向で整備を進めることが、トラブルを避けるうえでも有効です。

Q. 副業を完全禁止にすることは今の時代でも可能ですか?

A. 法的に「完全禁止」が無効というわけではありませんが、厚生労働省が副業・兼業を推進している現状では、合理的な理由のない全面禁止は採用困難なケースが増えています。現実的には「原則として制限するが、会社が承認した場合はこの限りでない」という許可制、または事前届出制を採用する企業が多くなっています。自社の業種・リスク特性に合わせた方針を定め、就業規則に落とし込むことをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
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