休職期間の延長、何度まで認めるべき?

休職期間の延長、何度まで認めるべき? 休職・復職対応
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「今月末で休職期間が終わるのに、まだ回復していない。延長を認めるべきか?」「復職したと思ったら3ヶ月でまた休職申請が来た。何度まで認めればいいのか…」。専任の人事担当がいない中小企業では、こうした判断を経営者や兼務担当者が一人で抱えこみ、毎回手探りで対応しているケースが少なくありません。この記事では、休職期間の延長回数や通算期間に関する考え方と、就業規則への落とし込み方を実務目線で解説します。

休職制度は法律ではなく「就業規則」が根拠になる

休職制度は法的義務ではない

まず前提として押さえておきたいのが、休職制度は労働基準法で義務付けられた制度ではないという点です。育児・介護休業のように法律で取得権が保障されているわけではなく、各社が就業規則で独自に設計する「任意制度」です。

つまり、就業規則に何も書かれていなければ、会社にはそもそも休職を付与する義務はありません。ただし現実には、いきなり解雇するよりも休職機会を与えるほうが法的に安全とされているため、多くの会社が規定を設けています。

就業規則が「すべて」になる理由

休職制度が任意である以上、「何ヶ月認めるか」「延長を何回まで認めるか」「期間満了後はどうなるか」といった重要な判断はすべて就業規則の記載内容に依拠します。規定が曖昧なままだと、会社が下した判断の根拠を問われたとき、「就業規則にそう書いてある」と示せず、トラブルに発展するリスクが生じます。

逆に言えば、就業規則を適切に整備しておけば、会社も従業員も「このルールに従って動いている」という共通認識が生まれ、感情的な対立を避けることができます。

曖昧な規定が生む「無期限休職」の落とし穴

特に多いのが、就業規則の雛形をそのまま使い続けているケースです。延長回数の上限や通算規定(後述)が書かれていないと、再休職のたびにフルの休職期間が付与され、実質的に無期限に近い休職が続く状態になります。「まさかそんなことに」と思うかもしれませんが、規定の抜け漏れを突かれるとこうした事態になりかねません。

休職期間延長の「相場感」と基準を知っておく

勤続年数に連動した設計が主流

中小企業で一般的に使われる設計は、勤続年数に応じて休職期間延長の上限を変える方式です。具体的には次のような組み立てが参考になります。

  • 勤続1年未満:1〜2ヶ月
  • 勤続1年以上3年未満:3ヶ月
  • 勤続3年以上:6ヶ月

大企業では勤続10年以上の社員に1〜2年を設定するケースもありますが、20〜50名規模の企業では「最長6ヶ月〜1年」を上限に据えるのが現実的です。会社の規模・業種・資金力に合わせて設計することが重要です。

延長回数は「1回限り」が基本

休職期間の延長回数の基準については、「1回に限り、最大で当初期間と同じ期間を上限に延長できる」という設計が多く採用されています。たとえば当初3ヶ月の休職が認められた場合、延長は1回・最長3ヶ月まで、合計最大6ヶ月という設計です。

「延長を2回、3回と認めていたら際限がなくなるのでは」と感じる方もいますが、その直感は正しいです。延長回数を就業規則に明示しておくことで、「規則に基づいた対応」として毅然と対応できます。

延長判断に必要な確認事項

延長を認めるかどうか判断する際に、担当者が確認すべき事項を整理しておくことも大切です。主治医の診断書に「復職見込みの時期」が記載されているか、本人から回復状況の報告を定期的に受けているか、産業医や外部のEAP(従業員支援プログラム)など第三者の意見を得られる環境があるか、といった点が判断材料になります。診断書の内容が「しばらく休養が必要」という抽象的な表現にとどまる場合は、人事担当者から主治医への照会(本人同意を得た上で)や、産業医への意見聴取を検討しましょう。

「再休職」を繰り返す社員への対応と通算規定

再休職問題の本質

現場で特に頭を悩ませるのが、一度復職した社員が短期間で再び休職を申請してくるケースです。「また来た」という疲弊感と、他の社員への公平感の問題、そして「今回も認めないといけないのか」という判断への迷いが重なります。

この問題の核心は、通算規定が就業規則に存在するかどうかです。通算規定とは、「復職後に一定期間(例:6ヶ月)以内に同一・類似の事由で再び休職した場合、前回の休職期間と合算して上限を計算する」というルールです。

通算規定がないと何が起きるか

通算規定がない場合、復職のたびにゼロからカウントが始まります。たとえば最長6ヶ月の休職規定がある会社で、社員が3ヶ月休職して復職、2ヶ月後に再び休職した場合、通算規定がなければ再度最長6ヶ月が付与されます。これを繰り返せば、実質的に何年も在籍し続けることが可能になります。

一方、通算規定を設けておけば、前回3ヶ月消化しているため残りは最長3ヶ月、という設計が可能です。これは社員に不利な制度を押し付けるためではなく、会社の対応可能な範囲を明確にし、双方が見通しを持てるようにするためのルールです。

リセット規定との組み合わせ

通算規定とセットで設けるのが「リセット規定」です。「復職後に12ヶ月(1年)以上勤務した場合は、前回の休職期間をリセットし、再度フルの休職期間を付与する」というルールです。長期間しっかり勤務した実績があれば再スタートを認める、という考え方で、従業員へのフェアな配慮にもなります。

通算規定とリセット規定を組み合わせることで、「繰り返し短期復職・再休職を繰り返す」ケースには通算で対応し、「しっかり回復して長期間勤務できた」ケースには再チャンスを与える、という均衡のとれた設計が実現します。

延長を断る・期間満了での退職扱いに伴うリスクと対処法

「自然退職」と「解雇」は法的に異なる

休職期間が満了しても復職できない状態が続いた場合、就業規則の規定に基づき「自然退職(自動退職)」として処理するのが一般的な設計です。これは会社が「辞めさせる」のではなく、「就業規則に定められた身分喪失事由に該当した」という扱いです。

ただし、就業規則の設計が不適切だったり、手続きを踏まずに退職扱いにしたりすると、実質的な「解雇」とみなされ、労働契約法第16条の解雇権濫用法理が適用されるリスクがあります。解雇が「客観的に合理的な理由」を欠く場合、無効と判断されるため注意が必要です。

延長を断る前に「配慮の検討」をした記録を残す

精神疾患による休職の場合、障害者差別解消法や障害者雇用促進法における「合理的配慮」の観点が絡んでくることがあります。合理的配慮とは、業務内容の調整、勤務時間の短縮、在宅勤務の導入など、会社が過度な負担にならない範囲で行う配慮のことです。

延長拒否や退職扱いを行う前に、「こういった配慮を検討・提案したが、それでも就労困難と判断した」というプロセスを記録しておくことが、法的リスクの回避につながります。対応の記録は「いつ、誰が、何を確認・提案したか」を残しましょう。

断ったら訴えられるリスクへの備え

「延長を認めないと損害賠償を請求されるのでは」という不安は多くの経営者が抱えます。実際には、就業規則に明確な規定があり、適切な手続き(本人への説明・記録・配慮の検討)を踏んでいれば、法的リスクは大幅に下がります。感情的な判断ではなく、就業規則というルールに基づいた対応であることを、文書で丁寧に伝えることが重要です。

就業規則の休職規定に盛り込むべき必須項目

最低限必要な6つの要素

就業規則の休職規定を整備する際に、必ず盛り込んでおきたい要素を整理します。まず「休職事由」として、どのような状態になったときに休職を命じるのかを明記します。次に「休職期間」として、勤続年数に応じた上限期間を定めます。そして「延長の可否と上限回数」として、何回まで・どれだけ延長できるかを具体的に書きます。

加えて「通算規定」として、復職後に再休職した場合の期間の計算方法を定めます。「復職判断基準」として、誰が・何をもって復職を判断するのかを明示します。最後に「休職期間満了時の取り扱い」として、期間満了後も復職できない場合は自然退職となる旨を記載します。

連絡義務・定期報告義務も忘れずに

見落とされがちなのが、休職中の連絡義務・定期報告義務の規定です。休職に入ると会社と従業員の接点が途切れがちですが、月1回の状況報告を義務付けることで、回復状況の把握や復職に向けた準備がスムーズになります。また、連絡が取れなくなった場合の対応(一定期間連絡不通の場合は退職扱いにするなど)も規定しておくと、いざというときに困りません。

規定は「雛形」ではなく自社仕様に

インターネットで入手できる就業規則の雛形をそのまま使うと、自社の実態に合わない規定になっているケースが多々あります。特に休職・復職に関する規定は、会社の規模・業種・平均勤続年数・過去のトラブル事例などを踏まえて設計することが重要です。「それっぽい条文があるから大丈夫」という状態は、いざトラブルになったときに最も危険です。

まとめ

休職期間の延長回数や通算期間の取り扱いは、「感覚」や「その場の判断」ではなく、就業規則に明文化されたルールで対応することが会社と従業員の双方を守ります。中小企業では総休職期間の上限を最長6ヶ月〜1年、延長は1回限りを基本とし、通算規定・リセット規定・自然退職条項をセットで整備することが現実的な対応策です。延長を断る場合も、配慮の検討プロセスを記録に残すことでリスクを大きく低減できます。

「うちの就業規則、このあたりがちゃんと書けているか不安…」という方は、ウェルセンス株式会社にお気軽にご相談ください。現状の就業規則の確認から、自社に合った規定の整備サポート、休職・復職対応フローの構築まで、専門家が一緒に考えます。一人で抱え込まず、まず現状を話してみるところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 就業規則に休職規定がない場合、延長を断っても問題ありませんか?

A. 規定がない場合、会社の判断がそのまま法的判断の対象になります。延長を断って退職扱いにしたとき、「実質的な解雇だ」と主張されるリスクがあります。規定がない状態での対応は非常に慎重を要するため、まず就業規則を整備することを優先してください。

Q. 復職後すぐに再休職した場合、通算規定がなければ再度フル期間を与えないといけないのですか?

A. 通算規定がなければ、原則として再度フルの休職期間を付与する必要が生じます。これを避けるためにも、就業規則に「復職後6ヶ月以内の再休職は前回の期間と通算する」という規定を設けておくことが重要です。

Q. 医師の診断書が「しばらく療養が必要」としか書いていません。延長の判断をどうすればよいですか?

A. 抽象的な診断書だけでは人事判断の材料として不十分です。本人の同意を得た上で主治医に照会状を送り、「復職見込みの時期」「就労上の制限事項」などについて具体的な情報提供を求めることができます。産業医や外部EAPを活用できる環境があれば、そこからの意見聴取も有効です。

Q. 休職期間満了で退職扱いにする前に、会社がしておくべきことはありますか?

A. 少なくとも、業務内容の軽減・時間短縮・在宅勤務など「合理的配慮」として検討できる選択肢を提示し、それでも就労困難と判断した、というプロセスを記録に残しておくことが重要です。また、満了前に本人へ期間満了の事実を書面で通知し、十分な時間的余裕をもって説明することも欠かせません。

Q. 中小企業でも産業医を選任しないと休職対応はできませんか?

A. 産業医の選任義務は常時50人以上の事業場に課されています。50人未満の企業では義務はありませんが、外部のEAP(従業員支援プログラム)や産業保健総合支援センターの「産業保健相談員」の無料相談を活用することができます。第三者の専門的意見を得る仕組みを外部に求めることは十分に可能です。

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