無断欠勤・連絡不通の対応に迷ったら確認したい就業規則と解雇の判断基準

無断欠勤・連絡不通の対応に迷ったら確認したい就業規則と解雇の判断基準 休職・復職対応
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月曜日の朝、出勤予定の社員が来ない。電話をかけても出ない。メッセージを送っても既読すらつかない。そのまま火曜日、水曜日と過ぎていく——。こうした事態に直面した経営者・人事担当者から「いつ・どう動けばいいか判断できない」という声をよく聞きます。動かなければ給与を払い続けるリスクがあり、強引に動けば不当解雇を問われるかもしれない。その板挟みが、対応を遅らせます。この記事では、無断欠勤・連絡不通が続いたときの判断基準を、就業規則の整備状況別に実務的な視点から解説します。

「何日で動いていいか」の目安を知る

無断欠勤を理由とした退職扱い・解雇が有効かどうかは、欠勤日数だけでなく「就業規則に規定があるか」「連絡を試みた記録があるか」が同時に問われます。日数はあくまで判断の一要素です。

日数ごとの対応フェーズ

目安として、欠勤初日から数日は安否確認と連絡試行のフェーズです。この段階では解雇や退職扱いの判断は時期尚早で、まず「本人が意図的に欠勤しているのか、緊急事態に巻き込まれているのか」を確認することが先決です。緊急連絡先への連絡もここで行います。

欠勤が7日前後になってくると、会社側の対応を書面化するフェーズに移ります。「出勤するよう求める書面(内容証明郵便)」を送ることで、後の手続きの根拠が整い始めます。そして2週間(14日)以上の連続無断欠勤が続き、かつ就業規則に「○日以上の無断欠勤は退職とみなす」旨の規定があれば、自然退職(みなし退職)の条項を発動できる段階になります。

「14日」「30日」という数字の意味

実務上よく使われる「14日」という日数は、厚生労働省のモデル就業規則でも採用されている目安です。「30日」を設定している企業もありますが、日数が長いほど会社側の給与負担や在籍扱いのリスクが続きます。一方で短すぎる日数(例:3日)は、裁判所が「合理性を欠く」と判断するリスクがあります。就業規則に規定する際は、14日前後を目安に設定することが現実的です。

自然退職と懲戒解雇、どちらを選ぶか

無断欠勤への対応手段は「自然退職(みなし退職)」と「懲戒解雇」の二つが中心です。実務上は、まず自然退職条項の活用を検討し、それが使えない場合に懲戒解雇を検討するアプローチが多く採られています。

二つの制度の違い

項目 自然退職(みなし退職) 懲戒解雇
根拠 就業規則の自動退職規定 就業規則の懲戒規定+解雇の意思表示
手続きの重さ 比較的軽い(規定発動を通知) 重い(弁明の機会付与が原則)
退職金 規定次第 不支給規定があれば不支給可
争われやすさ 比較的少ない 「不当解雇」として争われるリスクあり
就業規則の規定がない場合 使えない 要件・手続きが整えば使える

懲戒解雇が有効となる条件

懲戒解雇は、労働契約法第16条の「解雇権濫用法理」により、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当と認められなければ無効となります。無断欠勤を理由とする懲戒解雇が有効と認められるには、欠勤日数が相当程度に長く(概ね14日〜30日以上が目安)、会社側が複数回の連絡を試みた記録があり、弁明の機会を提供しようとした事実がある、という要件を備えている必要があります。連絡が取れなかった場合でも、「弁明の機会を付与しようとしたが本人が応じなかった」という記録を残すことが手続上の正当性につながります。

解雇予告手当の扱い

懲戒解雇の場合でも、労働基準法第20条により原則として30日前の解雇予告、または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。「労働者の責に帰すべき事由」として労働基準監督署長の除外認定を受ければ不要になりますが、この認定取得には時間と手間がかかるため、実務上は予告手当を支払って対応するケースが多くなっています。

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就業規則に何を書いておくべきか

就業規則に無断欠勤に関する規定がなければ、自然退職条項は使えません。また、「懲戒事由に無断欠勤と書いてある」だけでは不十分で、具体的な日数と処理方法を明記しておく必要があります。

自然退職条項の文例

以下は規定の一例です。自社の状況に合わせて、社会保険労務士等の専門家に確認のうえ使用してください。

  • 「正当な理由なく連続して14日以上欠勤し、出勤の督促に応じない場合は、その14日目をもって退職とみなす。」
  • 「前項の場合、会社は本人および緊急連絡先に対して通知を行うものとする。」

ポイントは「日数(14日前後)」「正当な理由なく」「督促への不応答」という三要件を明示することです。「正当な理由なく」という文言があることで、病気や事故など正当な事情がある場合との区別が明確になります。

懲戒規定との整合性を確認する

自然退職条項を設ける場合、既存の懲戒解雇規定と矛盾が生じないように整合させる必要があります。たとえば「懲戒解雇事由:無断欠勤が14日以上」と「自然退職:無断欠勤が14日以上」が並立していると、どちらの規定を使うのかが曖昧になります。両者の役割を整理したうえで、「まず自然退職条項が適用され、それとは別に悪質なケースは懲戒解雇の対象とする」という構造にしておくと運用しやすくなります。

無断欠勤への対応に「誰に相談したらいいのか分からない」という経営者・人事担当者は多いものです。就業規則の整備状況や法的リスク判断は、その後の対応を大きく左右するポイントです。

就業規則がない・整備されていない会社の対応

常時10名未満の事業所は就業規則の作成義務がありませんが(労働基準法第89条)、就業規則がない状態では自然退職条項を援用できません。この場合は懲戒解雇の手続きをとることになりますが、要件・記録の整備が特に重要になります。今後のリスク軽減のためにも、就業規則の整備は早めに着手することを推奨します。

連絡不通状態での記録の残し方と通知手順

無断欠勤への対応で最もよく後悔されるのが「動いた事実を記録していなかった」という点です。後から「連絡を受けていない」「解雇理由を知らされていなかった」と主張されたときに反論できる記録を、対応と並行して積み上げることが不可欠です。

記録すべき情報と手段

電話・メール・チャットツールのいずれで連絡を試みた場合も、「誰が・いつ・どの手段で・何を伝えようとしたか(または伝えたか)」を記録に残します。電話であれば発信履歴のスクリーンショット+メモ(日時・内容)、メールであれば送信済みフォルダの保存、チャットであれば画面キャプチャが有効です。担当者個人のスマートフォンではなく、会社の連絡手段・アカウントからの送信が望ましいです。

内容証明郵便を使うタイミングと書き方

欠勤が7日前後になった段階で、出勤を促す書面を内容証明郵便で送ることを検討してください。内容証明郵便は「いつ・どんな内容の書面を送ったか」を郵便局が証明する郵送手段で、後の紛争時に重要な証拠になります。送付先は本人の住所(雇用時に登録された住所)とし、内容は「○月○日から無断欠勤が続いていること」「○日までに連絡または出勤がない場合は退職扱いとなること」を明記します。感情的な表現は避け、事実と会社の対応方針のみを記載してください。

緊急連絡先への連絡と注意点

安否確認の観点から、入社時に届け出のある緊急連絡先(家族など)に連絡することは許容されますが、個人情報の観点から取り扱いには注意が必要です。連絡の目的は「本人の安否確認」であることを明確にし、懲戒や退職処理などの業務上の事情を家族に詳しく伝えることは避けてください。また、緊急連絡先への連絡も「日時・手段・内容・応答有無」を記録します。

就業規則の整備状況別・判断チェックリスト

対応の方向性は「就業規則に自然退職条項があるか」「欠勤日数が何日か」「連絡記録があるか」によって異なります。自社の状況を確認しながら判断の軸を整理してください。

就業規則に自然退職条項がある場合

規定の日数(例:14日)を超えた時点で、自然退職の発動を検討できます。ただし発動前に、複数回の連絡試行記録と、内容証明郵便による督促の実施が揃っているかを確認してください。記録が不十分なままで退職処理を行うと、後から「一方的に退職扱いにされた」と争われるリスクが残ります。

就業規則に具体的な規定がない場合

「懲戒事由に無断欠勤と書いてあるが日数の定めがない」という状態では、自然退職条項は使えません。この場合は懲戒解雇の手続きを検討しますが、弁明の機会付与の記録、解雇理由の明示、解雇予告手当の支払いなど、手続きの要件を一つずつ確認しながら進める必要があります。並行して就業規則の改定にも着手することを推奨します。

就業規則が存在しない場合

就業規則がない状態では、自然退職条項を使う根拠がありません。懲戒解雇の手続きをとる場合も、規定の根拠が薄いため法的リスクが高まります。この段階で社会保険労務士や弁護士に相談しながら対応を進めることが現実的な選択肢です。将来的なリスク軽減のためにも、就業規則の整備を優先して進めてください。

まとめ

無断欠勤・連絡不通への対応は、「就業規則に自然退職条項があるか」「何日欠勤が続いているか」「連絡を試みた記録があるか」の三点を軸に判断します。就業規則に規定があれば、概ね14日以上の無断欠勤を目安に自然退職条項の発動を検討できます。規定がない場合は懲戒解雇の手続きとなりますが、要件・記録整備の負担が重くなります。いずれの場合も、対応の記録を丁寧に残すことが後の紛争リスクを下げる最大の対策です。

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よくある質問

Q. 無断欠勤が3日続いています。今すぐ解雇できますか?

A. 3日間の無断欠勤だけを理由に即時解雇するのは、法的リスクが高い判断です。この段階では安否確認と連絡試行を続け、記録を残すことが優先です。就業規則に「14日以上の無断欠勤で退職とみなす」などの規定がある場合は、その日数到達を待ってから手続きに移るのが安全です。

Q. 就業規則がない状態で自然退職扱いにできますか?

A. できません。自然退職(みなし退職)は就業規則に定めがあって初めて発動できる仕組みです。就業規則がない、または具体的な日数規定がない場合は、懲戒解雇の手続きを検討することになります。ただしこの場合も手続き要件の整備が必要なため、専門家への相談を早めに行うことをお勧めします。

Q. 懲戒解雇にすると退職金を払わなくて済みますか?

A. 就業規則に「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない(または減額する)」旨の規定がある場合に限り、不支給や減額が可能です。規定がない状態で一方的に退職金を不支給にすると、後から請求されるリスクがあります。退職金の扱いも就業規則に明記しておくことが重要です。

Q. 連絡が取れない社員の家族に状況を話してもいいですか?

A. 安否確認を目的とした緊急連絡先への連絡は許容されます。ただし連絡の目的は「本人の安否確認」に限定し、懲戒処分や退職処理の詳細を家族に伝えることは個人情報の観点から避けてください。連絡した日時・手段・内容・応答の有無は必ず記録しておきます。

Q. 内容証明郵便はどこで出せますか?費用はかかりますか?

A. 内容証明郵便は全国の郵便局(一部を除く)で取り扱っています。費用は通常の郵便料金に加え、内容証明の加算料金と一般書留料金がかかります。合計で数百円〜千数百円程度が目安です。書き方に不安がある場合は、社会保険労務士や弁護士に文面の作成を依頼することもできます。

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