メンタル不調社員の業績評価を下げる前に確認すべきこと

メンタル不調社員の業績評価を下げる前に確認すべきこと メンタルヘルス対応
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「業績が落ちているのに評価を下げていいのか。でも、もしかしてメンタル不調が原因だったら……」。評価時期が近づくたびに、この判断を一人で抱えていませんか?

専任人事のいない職場では、メンタル不調が疑われる社員の業績評価についての判断を、根拠なく先延ばしにしたり、恐れながら進めたりするケースが珍しくありません。この記事では、メンタル不調が疑われる社員の業績評価を適正に行うために、経営者・兼務人事担当者が評価を下げる前に確認すべきことを、法的リスクと実務の両面から整理します。

「評価を下げてはいけない」は誤解である

メンタル不調の疑いがあっても、適正なプロセスを踏んだうえでの業績評価の引き下げは、法的に問題ありません。問われるのは「評価を下げた行為」ではなく、「評価の根拠が不明・不透明であること」や「不調への対応を一切せずに放置したこと」です。

「不調だから評価免除」という思い込みの危険

メンタル不調の疑いがあることは、評価適用を免除する法的根拠にはなりません。むしろ「不調かもしれないから評価を据え置いた」という判断を繰り返すと、他の社員との公平性が損なわれ、チーム全体の士気に影響します。

評価を下げることと、不調への配慮は「どちらか」ではなく「並行して行うもの」です。この認識の転換が、正しい対応の出発点になります。

評価引き下げと不利益取扱いの違い

障害者差別解消法や労働施策総合推進法のもとでは、精神疾患を理由とした不利益取扱いは禁じられています。ただし「業績事実にもとづいた評価」は、これとは別の話です。

問題になるのは「診断名があるから評価を下げた」という因果関係です。一方、「業績基準を満たさなかったから評価が下がった」という事実にもとづく評価は、適正に行えば違法にはなりません。両者を混同しないことが重要です。

メンタル不調の社員を評価する前に確認すべき3つの判断軸

業績評価の引き下げが後から問題になるケースの多くは、評価の「中身」ではなく「手続き」に不備があります。以下の3軸を事前に確認することで、評価の正当性を担保できます。

判断軸 確認すべき内容
業績事実の客観性 数値・行動・成果物で示せるか。主観的印象のみに頼っていないか
プロセスの適正さ 期初に目標・評価基準を伝えていたか。期中に改善のための面談・指導を行ったか
配慮措置の検討 評価を下げる前に、業務量・業務内容の調整を検討・提案したか

業績事実の客観性を確保する

「最近、元気がなくて成果が出ていない気がする」という印象だけで業績評価を下げることは避けなければなりません。遅刻・欠勤の回数、業務の期限遵守状況、達成率など、数値や記録で示せる事実を評価の根拠にしてください。

就業規則や評価制度に明示されている基準を他の社員と同じ形で適用することが、「不利益取扱い」との区別を明確にします。

プロセスが整っているかを振り返る

労働契約法第5条が定める安全配慮義務の観点からも、不調のサインを把握しながら何も対応しなかった場合は使用者責任を問われる可能性があります。

評価を下げること自体よりも、「期中に改善機会を与えたか」「面談で状況を確認したか」といったプロセスの記録が、後の紛争における判断材料になります。期初に目標と評価基準を伝え、期中に少なくとも一度は面談を行っていることが最低限の要件です。

配慮措置を検討・提案したかどうか

評価を下げる前に、業務量の一時的な軽減や担当業務の変更を検討・提案したかどうかも重要な判断軸です。この配慮措置の提案が記録に残っていれば、「会社は適切な支援を試みた」という事実が証明できます。

産業医が選任されている場合(常時50人以上の事業場では法律上必須)は意見を求めるステップが加わりますが、50人未満の職場でも地域産業保健センターの活用が可能です。

本人が認めない・話してくれないときのメンタル不調に関する面談の進め方

不調の疑いがある社員への面談で最も大切なのは、「診断を確認しようとしない」ことです。会社には本人の医療情報を本人の同意なく取得・利用する権限はなく、それを試みると信頼関係を損ないます。

面談の目的は「不調の認定」ではなく「業務上の事実の共有と支援策の提示」です。

行動ベースの事実確認から始める

面談の切り口として有効なのは、「診断名や体調」ではなく「業務上の具体的な事実」から入ることです。

例えば、「先月、報告書の提出が3回遅れていますね。何か困っていることがあれば聞かせてください」というように、観察した事実を穏やかに共有するところから始めます。「最近、大丈夫ですか?」という曖昧な問いかけは、「大丈夫です」という反射的な返答を引き出しやすいため、具体的な事実を起点にする方が会話が続きやすいのです。

開かれた問いかけで本人の言葉を引き出す

「仕事でしんどいと感じることはありますか?」「最近、業務の中で難しいと感じている部分があれば教えてください」といった開かれた質問(Yes/Noで終わらない問い)を使うと、本人が状況を言語化しやすくなります。

この段階では、会社として「不調かどうかを判定する」姿勢ではなく、「何が起きているかを一緒に把握したい」という姿勢を示すことが重要です。詰問にならないよう、沈黙を怖がらず、相手のペースに合わせてください。

支援策を選択肢として提示して終える

面談の最後には、「もし何か相談したいことがあれば、社外の相談窓口(EAPなど)もあります」と情報提供して終えることをお勧めします。強制ではなく「選択肢がある」ことを伝えるだけで、本人の心理的安全性が高まります。

EAP(従業員支援プログラム)を導入していない場合でも、厚生労働省が運営する「こころの健康相談統一ダイヤル」や、各都道府県の精神保健福祉センターを案内することができます。

面談記録と評価の根拠:あとで自分を守るための5項目

面談や評価対応における記録は、後から「何も言われなかった」「不当に評価を下げられた」と言われたときに、会社の対応の適正さを証明する唯一の手段です。完璧な記録でなくても、メモレベルで構いません。残すこと自体に意味があります。

記録として残すべき5つの項目

  • 面談の日時と参加者(記録者名も含む)
  • 確認した業績事実(数値・具体的な行動・成果物)
  • 本人の発言内容(要約でも可)
  • 会社として伝えた内容・指示・提案した支援策
  • 次回面談の予定または今後の対応方針

記録がないと何が起きるか

記録がない状態で評価引き下げや降格を行った場合、後から不当評価・降格の訴えが起きた際に「評価の根拠となる事実」も「改善機会を与えた事実」も証明できなくなります。

特に、業績低下の原因がメンタル不調である可能性が後から明らかになった場合、「会社は不調に気づいていたはずだ」という主張への反証が難しくなります。記録は手間ではなく、会社と本人双方を守るための実務習慣です。

就業規則・評価制度の整備状況による対応の違い

就業規則に評価基準や降格の要件が明記されている場合は、その基準に従って淡々と記録を積み上げることが対応の基本です。一方、評価制度が整備されていない場合や、就業規則が形骸化している場合は、評価を下げる前に制度の整備を優先することを検討してください。

制度がないまま業績評価を引き下げると、「恣意的な判断」とみなされるリスクが高まります。

評価と並行して行うべき安全配慮の実務

評価対応と安全配慮義務への対応は、どちらかを先に行うものではなく同時並行で進めるものです。不調のサインを把握しながら就労継続のアセスメントを行わなかった場合、労働契約法第5条の安全配慮義務違反として使用者責任を問われる可能性があります。

就労継続が適切かどうかのアセスメント

業績低下とあわせて、遅刻・欠勤の増加、コミュニケーションの変化、ミスの急増といったサインが複数重なっている場合は、「就労継続が適切かどうか」の判断を評価とは別に行う必要があります。

産業医が選任されている場合は産業医への相談が最初のステップです。産業医がいない50人未満の職場では、主治医への受診を促す(ただし強制はできません)か、地域の産業保健総合支援センターに相談する方法があります。

休職・復職制度の確認と整備

不調が疑われる段階で、自社の休職・復職に関する規定を確認しておくことも重要です。就業規則に休職制度がない場合や、復職の判断基準が曖昧な場合は、後から問題が複雑になりやすい傾向があります。

評価時期と重なることが多いため、「評価対応」と「休職・復職制度の整備」を同時に見直す機会として捉えてください。

まとめ

メンタル不調が疑われる社員の業績評価を下げる前に確認すべきことは、大きく3点です。

  • 業績事実が客観的な記録として残っているか
  • 期中に改善機会を与えるプロセスを踏んでいるか
  • 配慮措置を検討・提案したかどうか

この3軸が揃っていれば、業績評価の引き下げは法的にも実務的にも正当な行為として成立します。評価対応と安全配慮義務への対応は「どちらか」ではなく「並行して行うもの」であり、記録を残すことがその両方を支えます。

「自社のケースでどう判断すればいいかわからない」「面談をどう進めるか不安がある」という場合は、ウェルセンス株式会社にご相談ください。

20〜50名規模の企業を対象に、メンタルヘルス対応・休職復職支援・人事労務の実務を一緒に整理するサポートを行っています。「今すぐ何かをしなければ」という状況でなくても、現状を整理したいという段階からお気軽にご連絡いただけます。

よくある質問

Q. メンタル不調かどうかがわからないまま業績評価を下げた場合、後から問題になりますか?

A. 「不調かどうかわからなかった」こと自体は、評価の適法性に直接影響しません。問題になるのは、評価基準が明確でなかった・期中に改善機会を与えていなかった・記録が残っていないという「プロセスの不備」です。評価の根拠となる業績事実が客観的に示せるか、面談の記録が残っているかを確認することが先決です。

Q. 本人が「大丈夫です」と言い続ける場合、会社としてできることはありますか?

A. 会社は本人に不調を認めさせる権限はありませんが、業務上の事実をもとに面談を継続することはできます。「大丈夫です」という返答があっても、「業務の状況として○○が気になっています」と行動ベースの事実を共有し、相談窓口の情報を提供することを繰り返してください。この対応を記録に残すことが、安全配慮義務を果たしていた証拠になります。

Q. 産業医がいない場合、誰に相談すればよいですか?

A. 常時50人未満の事業場では産業医の選任義務はありませんが、各都道府県の産業保健総合支援センターが無料で相談に応じています。また、EAP(従業員支援プログラム)を外部委託する形で、医療の専門家につなぐ仕組みを整備することも一つの選択肢です。ウェルセンス株式会社でも、産業医がいない中小企業向けの相談対応を行っています。

Q. 不調が疑われる社員のフォローを他のメンバーが担っています。チームへの影響はどう考えればよいですか?

A. 周囲の負担が増えているにもかかわらず評価上の差がない状態が続くと、チームの不満が蓄積します。不調が疑われる社員への対応を「放置」ではなく「対処中」として進め、可能な範囲でチームメンバーに「状況を把握して動いている」という姿勢を示すことが重要です。個人情報には配慮しつつも、業務体制の調整は透明に行うことが、チーム全体への安全配慮にもつながります。

Q. 業績評価を下げた後に本人から「不当評価だ」と言われた場合、どう対処しますか?

A. まず、評価の根拠となった業績事実・面談記録・評価基準を本人に丁寧に説明することが第一歩です。記録が残っていれば「何を・いつ・どう伝えたか」を示せます。それでも解決しない場合は、社内の苦情処理窓口や、都道府県の労働局が設置する「総合労働相談コーナー」への相談を案内することが適切です。初動の対応記録が整っているかどうかが、その後の対応の安定性を大きく左右します。

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【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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