偽装請負リスクを10項目でチェック|今すぐできる是正方法

偽装請負リスクを10項目でチェック|今すぐできる是正方法 コンプライアンス
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「業務委託契約を結んでいるから大丈夫」と思っていませんか。実は、契約書の名称よりも日常の業務運用の実態で「偽装請負」かどうかが判断されます。知らないうちにリスクを抱えているケースは、20〜50名規模の中小企業に特に多く見られます。この記事では、今すぐ使える10項目チェックリストと、発覚した場合の具体的な是正方法をわかりやすく解説します。

「偽装請負」とは何か——契約書より実態が問われる理由

偽装請負の定義

偽装請負とは、表向きは「請負契約」や「業務委託契約」を結んでいるにもかかわらず、実態として発注者が受託者(フリーランス・個人事業主など)に対して指揮命令を行っている状態を指します。労働基準法第9条では、「使用される者で賃金を支払われる者」を労働者と定義しており、この「使用される」という実態(使用従属性)があれば、契約書の形式に関係なく労働者とみなされる可能性があります。

たとえば、個人事業主と業務委託契約を結んでいても、「毎朝9時に出社するよう決めている」「業務の優先順位を細かく指示している」「他社の仕事を受けないよう求めている」といった実態があれば、それは偽装請負と判定されるリスクがあります。

なぜ中小企業で偽装請負リスクが高いのか

20〜50名規模の企業では、採用コストや社会保険料の負担を抑えるために業務委託を活用するケースが多く見られます。最初は適切な形で運用していても、業務が増えるにつれて「もう少し細かく指示したい」「毎日来てほしい」という運用上の都合が重なり、気づかないうちに偽装請負の構造が出来上がっていきます。専任の人事担当者がいない環境では、こうした変化を見逃しやすいのも大きな要因です。

「業務委託契約書があれば安心」は大きな誤解

よくある誤解が「契約書にサインしてもらっているから問題ない」というものです。しかし、労働基準監督署や裁判所は契約書の名称や形式ではなく、日々の業務の実態を重視します。書面上は業務委託であっても、運用実態が雇用と変わらなければ「労働者性あり」と認定されます。

今すぐ確認——偽装請負リスク10項目チェックリスト

指揮命令・時間拘束に関するチェック

以下の項目に一つでも当てはまる場合、偽装請負リスクが生じている可能性があります。まず、日常の指示の出し方と時間・場所の管理を確認してください。

  • 業務の手順・方法について細かく指示を出している
  • 始業・終業時間を指定している(例:「9時〜18時で来てほしい」)
  • 出社・在席を義務づけており、欠勤・遅刻に対してペナルティがある
  • 業務の優先順位をこちら側が決めている
  • Slackやチャットツールでリアルタイムのやりとりを常時求めている

専属性・経済的従属性に関するチェック

次に、相手の事業者としての独立性を阻害していないかを確認します。以下の項目も偽装請負の判断材料になります。

  • 他社・他の取引先の仕事を受けないよう求めている(または暗黙の了解がある)
  • 報酬が「成果物」ではなく「時間・日数」に連動している(時給・日給換算)
  • 業務に使う設備・ツールをすべてこちらが提供している
  • 業務上のミスや損害について、委託者が負担している(受託者にリスクがない)
  • 源泉徴収を行っている、または社会保険に加入させている

上記10項目のうち、3項目以上該当する場合は「労働者性あり」と判断されるリスクが高く、5項目以上であれば早急な対応が必要です。特に「時間拘束」「指揮命令」「専属性」の三つが揃うと、行政・司法ともに労働者認定される可能性が高まります。

偽装請負と認定された場合の法的リスク

未払い残業代と社会保険料の遡及請求

偽装請負が発覚した場合、最も直接的なダメージとなるのが金銭的な遡及請求です。2020年の民法改正により、未払い賃金の消滅時効は最大3年に延長されました。月20万円の委託費を支払っていたフリーランスが「実は労働者だった」と認定された場合、3年分の残業代・深夜割増賃金が一括請求される可能性があります。さらに、年金事務所から社会保険料の追徴(最大2年分)が行われるケースもあり、経営に直接的なダメージを与えます。

労働基準監督署の調査と是正勧告

フリーランスや元委託先から労働基準監督署に申告が入ると、事業所への調査が入ります。調査の結果、是正勧告書(書面による行政指導)が交付され、是正の期限と内容が指定されます。悪質性が高いと判断された場合は送検(刑事事件化)されることもあります。一度「問題企業」として記録されると、その後の採用活動や取引先との信頼関係にも影響が出ます。

労働契約申込みみなし制度と新法への対応

派遣法第40条の6に定められた労働契約申込みみなし制度は、違法派遣と認定された場合に直接雇用を申し込んだとみなす制度です。また、2024年に施行された「フリーランス保護新法(フリーランス・事業者間取引適正化等に関する法律)」により、業務委託時の取引条件明示や60日超の業務委託における報酬支払い期日の規制、ハラスメント防止体制の整備が義務化されました。中小企業も「発注者」として義務が発生するため、対応が必要です。

是正方法——「雇用への切り替え」か「委託実態の見直し」か

雇用契約への切り替えが適切なケース

チェックリストで多くの項目に該当し、指揮命令・時間拘束・専属性のすべてが実態として固定化している場合は、雇用契約への切り替えが最も安全な是正方法です。切り替えにあたっては、社会保険・労働保険への加入、就業規則の適用、労働時間管理の整備が必要になります。相手方との交渉では「コンプライアンス上の必要性」を丁寧に説明し、雇用条件(給与・休日等)を誠実に提示することが関係維持のポイントになります。

業務委託の実態を本来の形に戻すケース

一方、指揮命令や時間拘束が限定的で、成果物ベースの取引に戻せる余地がある場合は、業務委託の実態を正しい形に見直すことで是正できます。具体的には、次の対応が必要です。まず、業務の指示の出し方を「成果物・品質基準の提示」に限定します。次に、時間や場所の指定をなくし、稼働時間ではなく納品物で報酬を算定する形に変更します。そして、他社案件を受注できる自由を明確に保障し、それを契約書にも明記します。

ただし、契約書だけ書き直しても不十分です。日常の業務メール・チャット・口頭指示の実態が変わらなければ、再び偽装請負と判断されるリスクが残ります。書面と運用の両面を一致させることが是正の本質です。

是正を先送りするリスクは年々拡大する

「今さら変えるとトラブルになりそう」「コストが心配」という理由で是正を先送りにしている企業は少なくありません。しかし、放置している間にも未払い賃金の時効期間は積み上がり続けます。また、2024年のフリーランス保護新法施行により、行政の監視体制も強化されています。早期に対応するほど、リスクの規模を小さく抑えることができます。

フリーランス保護新法(2024年施行)で変わった実務対応

取引条件の書面明示が義務化された

フリーランス保護新法では、業務委託を行う発注者(企業側)に対して、取引条件を書面または電磁的方法で明示することが義務づけられました。明示が必要な主な項目は、業務内容・報酬額・支払期日・業務の実施場所などです。口頭での依頼や曖昧な合意が常態化していた中小企業では、この対応だけでも実務的な手間が生じます。

ハラスメント対策と報酬支払いのルール

同法では、フリーランスへのハラスメント防止体制の整備も発注者の義務とされています。また、継続的な業務委託(期間が60日を超えるもの)については、報酬の支払期日を明確に定める必要があります。これらは従来の雇用関係における義務と類似しており、「業務委託だから管理が楽」という前提が崩れつつあります。

中小企業が今すぐ行うべき実務的な対応

フリーランス保護新法への対応として、まず現在の業務委託契約書を見直し、取引条件の明示が漏れていないか確認します。次に、継続的に発注している委託先について、支払いサイト(支払いまでの期間)が適切かを確認します。そして、業務の進め方について指揮命令にあたる行為がないかを実態レベルで点検します。これらは「法対応」であると同時に、偽装請負リスクの低減にも直結する作業です。

まとめ

偽装請負は「悪意を持って行う」ものではなく、業務の都合に合わせて対応していくうちに気づかないうちに発生するケースがほとんどです。しかし、「知らなかった」では免責されないのが法律の現実です。今回の10項目チェックリストで自社の現状を確認し、該当が多かった場合は早めに動くことが経営リスクの最小化につながります。

「どこから手をつければいいかわからない」「自社の実態がグレーゾーンなのか判断できない」という場合は、専門家への相談が最も確実な一歩です。ウェルセンス株式会社では、現在の業務委託契約・運用実態をヒアリングし、偽装請負リスクを整理・可視化するご支援を行っています。まずは気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 業務委託契約書を交わしていれば、偽装請負にはならないですか?

A. なりません。偽装請負かどうかは、契約書の名称や形式ではなく、日常の業務運用の実態で判断されます。書面上は業務委託でも、指揮命令・時間拘束・専属性などの実態があれば労働者性ありと認定されるリスクがあります。契約書の見直しと並行して、業務の進め方そのものを点検することが不可欠です。

Q. 週3日・時給換算でフリーランスに依頼しているのですが、問題になりますか?

A. 「週3日」「時給換算」という条件だけで即アウトにはなりませんが、リスク要因の一つとして機能します。特に時間・日数連動の報酬体系は「労務対償性」の根拠とされやすく、他の要素(指揮命令・時間拘束・専属性)と組み合わさると労働者性が高いと判断される可能性があります。報酬を成果物ベースに変更できないか検討することをお勧めします。

Q. フリーランスから「労働者として扱え」と言われた場合、どう対応すればいいですか?

A. まず感情的に対応せず、現状の実態を客観的に確認することが最優先です。実際に労働者性が認められる実態があれば、早期に雇用切り替えを検討する方が、裁判・労働審判に発展するよりもコスト・時間ともに有利です。一方、実態として独立性が保たれていた場合は、その証拠(業務指示の記録、他社取引の実績など)を整理したうえで対応します。いずれも専門家への早期相談をお勧めします。

Q. 偽装請負を是正すると、委託費より雇用コストが高くなります。どう考えればいいですか?

A. 短期的にはコストが増えることは事実です。ただし、放置した場合の未払い残業代(最大3年分)・社会保険料追徴(最大2年分)・訴訟費用・労務トラブルによる業務停滞のリスクと比較すると、早期に是正した方が総コストは低く抑えられるケースがほとんどです。また、是正の方法として雇用切り替えだけでなく、業務委託の実態を正しい形に戻すという選択肢もあります。状況に応じた最適な方法を検討することが重要です。

Q. フリーランス保護新法(2024年施行)は小さな会社にも関係しますか?

A. はい、規模に関係なく発注者として義務が発生します。フリーランスへの業務委託を行っている企業は、従業員数に関わらず、取引条件の書面明示・報酬支払い期日の明確化・ハラスメント防止体制の整備が求められます。特に「継続的な業務委託(60日超)」については支払いサイトの規制もあるため、現在の取引実態を新法に照らして確認しておくことをお勧めします。

【監修】ウェルセンス株式会社
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