会社のせい」と言われたらどう動けばいい?

会社のせい」と言われたらどう動けばいい? メンタルヘルス対応
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「これは会社のせいです」——ある日突然、社員からそう言われたら、あなたはどう動きますか。反論したい気持ちと、何か見落としていたかもしれないという不安が、同時に押し寄せてくる。専任の人事担当者がいない環境では、その場で最善の言葉を選ぶことが難しく、対応が止まってしまうことも少なくありません。この記事では、メンタル不調の背景で「会社のせい」と言われたときの初期対応を、法的な視点と実務の両面から整理します。

「会社のせい」発言が意味すること

この発言は、多くの場合、法的クレームの宣言ではなく、限界に近づいた社員の感情表現です。しかし「感情的な言葉だから放置していい」と判断してしまうと、その後の対応不足が本当の法的問題を引き起こします。

発言の背景にあるもの

「会社のせいだ」という言葉は、追い詰められた社員がSOSを発しているサインである場合がほとんどです。長時間労働の蓄積、上司との関係悪化、評価への不満、孤立感——こうした要因が複合的に積み重なった結果として、感情が言葉になって出てきます。発言そのものより、その背景にある状態を読み取ることが、最初の重要なステップです。

「感情的な発言」と「対応の必要性」は別の軸

発言の深刻さと、会社として動く必要性は、切り離して考えなければなりません。感情的に見えても、実態として職場環境の問題が潜んでいるケースは少なくありません。逆に、発言が強烈でも、事実確認の結果として職場側に重大な問題が見当たらないこともあります。まず「発言をどう受け取るか」ではなく「何を調べるか」に意識を向けることが重要です。

放置が生む最大のリスク

発言を受けた後、対応が止まってしまう会社は多くあります。「そのうち落ち着くだろう」という判断が、社員の状態悪化と休職につながり、のちに安全配慮義務違反を問われる事態を招きます。労働契約法第5条が定める安全配慮義務は、「思い当たるふしがない」という経営者の主観によって免除されるものではありません。発言があった時点で動き始めることが、会社を守ることにもなります。

安全配慮義務とは何か、中小企業にも適用されるのか

安全配慮義務は、従業員数に関わらずすべての使用者に課された法的義務です。違反が認定されれば、損害賠償責任を負う可能性があります。

労働契約法第5条が定める義務の範囲

労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。ここでいう「必要な配慮」には、長時間労働の防止、ハラスメントの防止措置、メンタルヘルスへの対応が含まれます。規模が小さいから適用外、ということはありません。

パワーハラスメント防止措置義務も中小企業に適用済み

2022年4月から、労働施策総合推進法第30条の2に基づくパワーハラスメント防止措置義務が中小企業にも適用されました。「会社のせい」という発言の背景にハラスメントが含まれている可能性がある場合、この義務の観点からも事実確認プロセスを踏む必要があります。社内相談窓口の設置が難しい規模であれば、外部機関の活用や、複数人が関与できる体制づくりが求められます。

労災認定リスクと記録保全の重要性

厚生労働省が2023年9月に改定した「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、業務上の強い心理的負荷(ハラスメント・長時間労働など)が労災認定の要因として列挙されています。社員が労災申請をした場合、会社として環境確認と記録保全を行っていたかどうかが、対応の証拠になります。初期段階から面談記録や業務状況のデータを残しておくことが、会社を守る実務的な盾になります。

感情的にならない「最初の一手」の型

「会社のせい」発言を受けたとき、即座の反論・謝罪・放置はすべてリスクがあります。安全な初期対応には、感情への共感と原因調査を切り分けることが不可欠です。

まず傾聴・受容から始める

発言を受けたとき、最初にすべきことは否定でも謝罪でもなく、「聞く」ことです。「今、どんな状況が一番つらいですか」「最近、業務の中で特に負担を感じていることはありますか」のように、状況を引き出す問いかけをします。この段階での受容は、発言内容の全面的な承認を意味しません。「あなたの話を聞く姿勢がある」というメッセージを伝えることが目的です。

感情への共感と、事実確認を分ける

「つらかったんですね」という共感と、「それが会社の問題かどうかは確認が必要です」という事実確認は、別のステップとして扱います。発言を受けた場では感情に向き合い、原因の調査は別の機会・別の場で行うと伝えることで、その場の対話を安全に終わらせることができます。「今日話してくれたことを受けて、会社として状況を確認します」という言葉が、一つの着地点になります。

その場で結論を出そうとしない

専任人事のいない環境では、経営者や担当者が個人的に受け取り、感情的に反応してしまうケースが多くあります。「その場で解決しなければ」という焦りが、発言の否定や軽率な約束につながります。「すぐには答えられないが、きちんと対応する」という姿勢を示すことが、トラブルを防ぐ実務的な正解です。

事実確認の進め方:何を、どう調べるか

事実確認は、感情的なやりとりではなく、業務記録と複数の視点から客観的に行うことが重要です。調査の証跡を残すことが、会社の対応姿勢を示す証拠にもなります。

就労状況と業務負荷の客観的把握

時間外労働の記録(タイムカード・勤怠システムのログ)、担当業務の量と難易度、直近の業務変化(異動・役割変更・人員減少)を確認します。「思い当たるふしがない」という感覚は経営者側の主観であり、現場では異なる実態が積み重なっていることがあります。まず数字と記録から出発することで、感情論を避けた議論が可能になります。

他のメンバーへのヒアリング

当該社員だけでなく、周囲のメンバーに対しても個別・非公式にヒアリングを行います。ポイントは、匿名性への配慮と、特定の結論に誘導しない問いかけです。「最近、チームの雰囲気はどうですか」「業務量について感じることはありますか」といった形で、広く情報を集めます。20〜50名規模では情報が漏れやすいため、ヒアリングの趣旨と結果の扱い方を事前に明確にしておくことが重要です。

記録の保全と対応履歴の管理

面談を行った日時、参加者、話した内容の要点、決定したアクションを記録として残します。この記録は、のちに安全配慮義務の履行を示す証拠になります。フォーマットに決まりはありませんが、「誰が・いつ・何を確認し・どう対応したか」が追えるものであれば十分です。

事実確認の過程で医学的な判断が必要になる場面では、地域産業保健センターなど外部の専門家に早めに相談することで、対応の質と透明性を両立させることができます。

規模別・状況別の対応分岐

従業員数や産業医・就業規則の有無によって、使える手段と取るべき対応が変わります。自社の状況に当てはめて確認してください。

状況 対応のポイント
従業員50名未満・産業医なし 地域産業保健センター(無料)の活用が現実的。産業医の選任義務はないが、専門的判断が必要な場面では外部専門家への相談を検討する
就業規則・メンタルヘルス方針がない 対応の根拠が曖昧になりやすい。今回の対応と並行して、最低限の方針整備を検討する
社内ハラスメント相談窓口がない 経営者や総務が直接対応せざるを得ないが、利害関係のない第三者(社労士・EAP等)を介入させることで、公平性を担保しやすくなる
配置転換・部署異動が難しい規模 環境調整の選択肢が乏しいため、業務分担の見直しや勤務形態の変更など、小さな調整を積み重ねることが現実的な対応になる
ストレスチェック未実施(努力義務) 社員のメンタル状態が「見えない化」しやすい。簡易的なアンケートや面談の仕組みを持つだけでも、早期把握に効果がある

専門家と連携すべきタイミング

会社だけで抱え込まず、適切なタイミングで専門家をつなぎ込むことが、問題の長期化と法的リスクの双方を防ぎます。

産業医・地域産業保健センターへの相談

社員のメンタル不調が疑われる段階で、医療的・専門的な判断が必要になります。従業員50名未満で産業医の選任義務がない会社でも、地域産業保健センター(全国の労働基準監督署管轄区域に設置・無料)を通じて産業医への相談が可能です。「受診を勧めるべきか」「就業上の配慮が必要か」といった判断に、専門的な視点を加えることができます。

社労士への相談:法的リスクの整理と記録確認

安全配慮義務の範囲、就業規則上の対応手順、休職・復職の手続きなど、法的な論点の整理には社会保険労務士(社労士)が適しています。「自社の対応が適切かどうか」を客観的に確認してもらう場として活用できます。特に、労災申請や紛争に発展しかねない兆候がある場合は、早い段階での相談が有効です。

EAP(従業員支援プログラム)の活用

EAP(Employee Assistance Program)は、社員が匿名で相談できる外部の専門相談サービスです。社員が会社に直接言いにくいことを第三者に話せる場として機能し、早期に問題を把握・介入できる仕組みになります。中小企業向けの低コストプランを提供している事業者も増えており、体制整備の一手段として検討する価値があります。

このような外部サービスの活用は「会社が対応を丸投げする」のではなく、「多角的な視点で問題を把握し、適切に対応する」ための投資です。人事を一人で抱えずに済む環境づくりが、長期的には経営リスクの軽減につながります。

まとめ

「会社のせい」という発言は、即座の法的紛争ではなく、社員の限界サインである場合がほとんどです。しかし、放置することで本当のリスクが生まれます。まず感情に向き合い、次に事実を客観的に確認し、記録を残しながら専門家と連携する——この流れが、安全配慮義務を果たしながら会社を守る基本的な構造です。

専任人事がいない環境では、一人で正解を出そうとせず、外部の専門家を早めに巻き込む判断が重要になります。メンタル不調への対応、休職・復職支援、法的リスク整理など、場面に応じて必要なサポートは多岐にわたります。ウェルセンス株式会社では、20〜50名規模の企業が直面するこうした場面での初期対応・休職・復職支援に関する相談を受け付けています。「何から手をつければいいかわからない」という段階でも、まずお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 「会社のせい」と言われましたが、思い当たることが何もありません。それでも対応が必要ですか?

A. はい、対応は必要です。「思い当たるふしがない」は経営者側の主観であり、安全配慮義務(労働契約法第5条)の免除理由にはなりません。管理者には見えにくい職場のストレス構造(評価の不透明さ・孤立感・業務量の偏りなど)が存在することがあります。まず客観的な事実確認を行い、その結果を記録として残すことが重要です。

Q. 発言を受けたとき、その場でどう答えればいいですか?

A. 即座の反論・謝罪・放置はいずれもリスクがあります。「話してくれてありがとうございます。今日のことを受けて、会社として状況を確認します」という形で受け取り、その場では結論を出さないことが安全な対応です。感情への共感と、原因の調査は別のステップとして切り分けてください。

Q. 従業員が50名未満で産業医もいません。どこに相談すればいいですか?

A. 地域産業保健センターを活用できます。全国の労働基準監督署管轄区域に設置されており、産業医への相談を無料で受けられます。法的な対応手順の整理には社会保険労務士、社員の個別相談にはEAP(従業員支援プログラム)の活用も選択肢になります。外部専門家を早めにつなぎ込む判断が、問題の長期化を防ぎます。

Q. 対応を記録として残す必要がありますか?どんな形式でいいですか?

A. 記録の保全は非常に重要です。労災申請や法的紛争が生じた場合、会社として安全配慮義務を履行していた証拠になります。形式に厳密な決まりはなく、「誰が・いつ・何を確認し・どう対応したか」が追える形であれば十分です。メモ・メール・Excelなど、継続して保管できるものを使ってください。

Q. 発言した社員への対応と、職場全体への影響を同時に気にしなければなりませんか?

A. 20〜50名規模では社員同士の距離が近く、情報が広がりやすいため、両方への目配りが必要です。個別対応は当該社員とのやりとりを非公開で進め、職場全体に対しては「働きやすい環境づくりの一環として意見を聞いている」という形で、特定の個人を連想させないヒアリングや対話の機会を設けることが有効です。

【監修】ウェルセンス株式会社
ウェルセンスは、メンタル不調者対応・休職復職支援に強い職場メンタルケアサービスです。産業医・保健師・心理士・社労士などの専門家ネットワークが、人事・管理職だけでは判断しづらいケースの初動対応、専門家連携、再発防止まで支援します。

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