試し出勤中に体調悪化→再休職の手続き3ステップ

試し出勤中に体調悪化→再休職の手続き3ステップ メンタルヘルス対応
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「試し出勤を始めて2週間、また体調が崩れてしまった——次はどうすればいいんだろう」。復職に向けて慎重に進めてきたのに、再び休職という状況は、従業員本人にとっても、対応する側にとっても動揺を伴うものです。しかも「また一から手続きをやり直すのか」「休職期間の残りはどうなるのか」「傷病手当金は続けて受け取れるのか」と、確認すべき事項が一気に押し寄せてきます。この記事では、試し出勤中の体調悪化から再休職までの手続きを3つのステップに整理し、中小企業の担当者でも迷わず動けるよう解説します。

試し出勤とは何か——法的な立ち位置を確認する

試し出勤(リハビリ出勤・慣らし出勤とも呼ばれます)は、法律上の「就労」には該当しないケースがほとんどです。まずここを押さえておくと、その後の判断がすべて明確になります。

法律上の定義がない制度

試し出勤は、厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下「復職支援手引き」)で推奨されている取り組みですが、労働基準法をはじめとする法律には定義も義務規定も存在しません。つまり、試し出勤中の賃金の有無・休職期間への算入・労災の適用範囲といった取り扱いは、すべて「会社の就業規則または個別の合意」によって決まります。

「復職が成立しているか」が再休職の判断に直結する

実務上、多くの会社は試し出勤を「休職期間中の訓練的活動」と位置づけています。この場合、試し出勤中に体調が悪化しても「復職(職場復帰)はまだ成立していない」という整理になり、休職期間は継続しているとみなされます。一方で、試し出勤に賃金を支払い「復職扱い」としていた場合は、再発時の休職期間の通算ルールが問題になります。

まず自社の就業規則を開き、「試し出勤(リハビリ出勤)」「復職」「休職期間の通算」に関する条文を確認することが出発点です。規定がない場合は、この機会に整備することを強くおすすめします。

体調悪化を把握したら——再休職判断の進め方

試し出勤中に従業員の体調悪化を確認したら、まず主治医の診断書を取得し、再休職の要否を確認します。この判断は医師・本人・会社の三者で進めることが基本です。

主治医・産業医・本人の役割分担

産業医が選任されている会社(従業員50人以上が義務)の場合、主治医の診断書を産業医に共有し、職場復帰が可能かどうかの意見書をもらうことが推奨されます。しかし、多くの中小企業では産業医がいないため、主治医の診断書が唯一の医学的根拠になります。その場合でも、診断書に「就労不可」「休養が必要」などの記載があれば、それを根拠に再休職の判断ができます。曖昧な記載の場合は、主治医に電話(または文書)で確認することも検討してください。

本人への連絡と合意形成

体調悪化の報告を受けたら、まず「無理に出勤しなくてよい」という安心感を伝えることが先決です。その後、再休職に向けた手続きの説明を行います。この段階で、休職期間の残日数・傷病手当金の継続可否・復帰の見通しについて、可能な範囲で情報提供しておくと、従業員の不安が軽減されます。本人が混乱している場合は、書面(メールでも可)でやり取りを残しておくことがトラブル防止につながります。

再休職の手続き——3つの確認ステップ

再休職の手続きは、「診断書の取得」「社内手続きの完了」「健康保険への申請」の3つに整理できます。それぞれ抜け漏れなく進めることが、後々の紛争リスクを防ぐことに直結します。

診断書の取得と確認

まず最初に、従業員に主治医の診断書を取得してもらいます。診断書には「傷病名」「就労不可の期間」「理由」が記載されていることを確認してください。傷病名が以前の休職時と同一または類似しているかどうかは、後述する休職期間の通算ルールに影響するため、記録として保管しておきます。

社内手続き(休職辞令・期間確認)の完了

次に、就業規則に基づいて休職辞令を発行します。この際に確認すべき事項は以下のとおりです。

確認事項 確認のポイント
休職期間の通算 同一傷病での再休職は通算型か、リセット型か(就業規則の条文を確認)
試し出勤期間の算入 試し出勤中が休職期間中の扱いなら、その期間分すでに消化している
休職満了日の再計算 残余期間を確認し、書面で本人に通知する
復職扱いの有無 試し出勤に賃金を支払っていた場合は「一度復職した」とみなされる可能性がある

健康保険への申請手続き

最後に、傷病手当金の申請です。傷病手当金は健康保険法第99条に基づく給付で、療養中・労務不能・4日以上の欠勤(最初の3日は待期期間)・報酬を受けていないことが要件です。申請書には「被保険者記載欄」「事業主記載欄」「医師記載欄」があり、事業主(会社)は「労務不能であったことの確認」を記載します。申請書の準備・提出は基本的に従業員本人が行いますが、会社側の証明欄への記入が必要なため、従業員が申請書を持参したら速やかに対応できるよう準備しておきましょう。

休職期間の通算——残日数はどう計算するか

休職期間の残日数の計算方法は、就業規則の「通算型」か「リセット型」かによって異なります。自社の規定を確認し、書面で本人に明示することが重要です。

通算型の考え方

「治癒後〇ヶ月以内に同一傷病で再発した場合は通算する」という規定が代表的です。たとえば就業規則で休職期間が最長6ヶ月と定められており、最初の休職で4ヶ月消化、試し出勤1ヶ月(休職期間中の扱い)で合計5ヶ月消化していれば、残りは1ヶ月ということになります。この場合、残期間内に回復できなければ休職満了となり、就業規則の定めによっては自動退職(雇用終了)になることがあります。本人へは早めに残日数を伝え、見通しを共有することが大切です。

リセット型の考え方と注意点

「復職から6ヶ月以上経過した後の再発は、新たな休職期間を付与する」という規定もあります。ただし、試し出勤中の体調悪化は「復職が成立していない状態での悪化」と整理されることが多く、リセット型の適用には慎重な判断が必要です。就業規則に明文規定がない場合は、解釈をめぐって後日紛争になるリスクがあるため、労働法に詳しい専門家(社労士・弁護士)に確認することをおすすめします。

就業規則に規定がない場合のリスク

休職期間の通算に関する規定がない会社は少なくありません。この状態では、再休職時に「期間をリセットすべき」という従業員側の主張と、「通算すべき」という会社側の判断が衝突しやすく、最悪の場合は解雇・退職をめぐるトラブルに発展します。今後のリスク管理の観点からも、就業規則の整備は早期に着手することが重要です。

傷病手当金の再申請——支給が止まっていた場合の対処法

試し出勤中に傷病手当金の支給が一時停止していた場合でも、同一傷病であれば、支給開始日から通算1年6ヶ月の限度内で再申請が可能です。

試し出勤中の傷病手当金の扱い

試し出勤期間中に会社から賃金(報酬)が支払われていた場合、その日数分の傷病手当金は支給されません(減額または不支給)。一方、試し出勤に賃金が支払われていなかった場合は、引き続き傷病手当金の支給対象となり得ます。ただし、「試し出勤をしながら労務不能状態にあるか」について、健康保険組合・協会けんぽが実態確認を行うことがあるため、申請内容と実態が整合していることが必要です。

令和4年改正による「通算化」の実務的影響

令和4年1月施行の健康保険法改正で、傷病手当金の支給期間が「通算1年6ヶ月」に見直されました。改正前は「支給開始から暦上1年6ヶ月」であったため、途中で就労した期間もカウントされていましたが、改正後は「実際に支給を受けた期間の通算が1年6ヶ月」となっています。つまり、試し出勤中など支給されなかった期間は通算に含まれないため、再休職後に残余期間がより多く残っている可能性があります。ただし、起算日の計算は複雑になるため、協会けんぽまたは健康保険組合に個別確認することを強くおすすめします。

会社側が対応すべき範囲

傷病手当金の申請は基本的に従業員本人が行いますが、申請書の「事業主記載欄」への記入が会社の対応として必要です。この欄では「出勤日数」「報酬の支払い状況」などを確認・証明します。従業員から申請書が届いたら、速やかに記入して返却することが会社側の責務です。対応が遅れると従業員の生活に影響するため、担当者を決めて速やかに対応できる体制を整えておきましょう。

休職満了リスクと自動退職への備え

休職期間の満了後も回復が見込まれない場合、就業規則の定めによっては自動退職(雇用終了)となります。このリスクを早期に認識し、適切なタイミングで本人と話し合うことが、会社と従業員双方にとって重要です。

自動退職規定の確認と通知義務

多くの就業規則には「休職期間満了時に治癒しない場合は自然退職とする」という規定があります。この規定自体は合理的とされていますが、本人への事前通知なく突然適用することは、後日トラブルになるリスクがあります。満了日の少なくとも1ヶ月前には、本人に残日数と満了後の扱いを書面で伝えることが実務上の基本です。

満了前に検討できる選択肢

休職期間の延長(就業規則または個別合意による)、退職勧奨、休職期間中の障害年金申請のサポートなど、満了後に向けた選択肢を本人と早めに話し合っておくことが大切です。いずれも強制ではなく、本人の状況と意向を尊重した上で進めることが前提です。この段階での対応を誤ると、不当解雇の主張につながることもあるため、慎重さが求められます。

まとめ

試し出勤中の体調悪化から再休職への対応は、「診断書の取得」「社内手続き(休職期間の確認・辞令)」「健康保険への申請」という3つのステップで進めることができます。ただし、その背景には「試し出勤の法的位置づけ」「就業規則の通算規定の有無」「傷病手当金の支給期間の計算」という複雑な論点が絡み合っています。特に就業規則に休職期間の通算規定がない会社では、再休職のたびに判断が曖昧になり、従業員との信頼関係を損なうリスクがあります。

ウェルセンス株式会社では、専任人事のいない中小企業向けに、休職・復職・再休職対応の実務サポートを行っています。「うちの就業規則でどう判断すればいいのかわからない」「傷病手当金の手続きに漏れがないか確認したい」といった個別のご相談も歓迎しています。一人で抱え込まず、まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. 試し出勤中に体調が悪化した場合、再休職の手続きは一からやり直しになりますか?

A. 多くの場合、一からやり直しにはなりません。試し出勤を「休職期間中の活動」と位置づけている会社では、休職期間は継続していると整理されます。そのため、休職辞令の更新・診断書の再取得・傷病手当金の継続申請という対応が中心になります。ただし、試し出勤を「復職扱い」として賃金を支払っていた場合は、通算ルールの確認が必要です。

Q. 傷病手当金は再休職になっても引き続き受け取れますか?

A. 同一傷病であれば、支給開始日から通算1年6ヶ月の範囲内で継続申請が可能です(健康保険法第99条)。令和4年1月の改正で支給期間が「通算化」されたため、試し出勤中に支給されなかった期間は通算に含まれず、受け取れる期間が延びる可能性があります。詳細は協会けんぽまたは加入している健康保険組合にご確認ください。

Q. 就業規則に休職期間の通算規定がない場合、どう判断すればいいですか?

A. 規定がない場合は、会社と従業員の間で解釈が食い違いやすく、紛争リスクが高まります。対処としては、個別の覚書・合意書で「今回の再休職の期間・満了日・通算の考え方」を明記する方法があります。同時に、今後のために就業規則を整備することを強くおすすめします。判断に迷う場合は社労士や専門家へのご相談が確実です。

Q. 産業医がいない会社でも、再休職の判断はできますか?

A. はい、できます。産業医が選任されていない会社(従業員50人未満が多い)では、主治医の診断書が判断の根拠になります。診断書に「就労不可」「休養が必要」などの記載があれば、それを根拠に再休職を命じることができます。診断書の内容が曖昧な場合は、会社から主治医へ問い合わせる形で確認を取ることも有効です。

Q. 試し出勤中に従業員が体調急変した場合、会社は労災の責任を負いますか?

A. 試し出勤が「就労」に該当するかどうかによって異なります。就業規則や合意書で賃金を支払い業務を指揮命令している場合は労災が適用される可能性があります。一方、訓練的・自主的な活動として位置づけている場合は適用が難しいケースもあります。試し出勤の開始前に、取り扱いを書面で明確にしておくことが最大のリスク管理になります。

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【監修】ウェルセンス株式会社
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